178,918円

2014-12-25 執筆者:小倉 基弘

178,918円。この数字は、私が28歳で独立し建築資材の商社を立ち上げて半年後に初めてあがった売上です。90年8月末に当時の日興證券を退社、9月1日よりガムシャラに営業して、翌年の91年1月にやっと大手ゼネコンに対して売上が立ったのです。

日興證券時代はバブルの影響もあり、月々3,000万円程度、年間で4億円弱の手数料をあげていたので、半年間懸命にやって18万円弱の数字を見たときには少し悲しくなったのを覚えています。当たり前ではありますが、日興時代にあげていた数字は大企業の信用と既に確立されたビジネスモデルの中で生まれたものであることが痛いほど理解できた瞬間でした。しかも半年間収入がゼロで、元々少ない貯金も徐々に底をついてくる中で「この程度の金額では家賃、光熱費、健康保険、年金を支払っていたらマイナスになり生活そのものが成り立たない。そもそも独立するなんてことが自分には無理なのだ、もう一度会社員に戻ろう」とも真剣に考えていました。

でも当初起業しようと考えた気持ちを思い出し、人生一度しか無いのだからそんな簡単に諦めるのではなく、もう少しやるだけやってみようとなんとか踏ん張ることができました。

結果的には18万円弱の請求書が30万円、50万円、100万円、300万円、500万円と徐々に増えていき、2年ほどで個人としての収入も日興證券時代の10倍以上になったので、当初の苦労が少しは報われました。

新しい仕事を始める時は、スタート時点に大きな困難があることが多いのかもしれません。転職にしても起業にしても、今まで知らなかった企業や事業を体験することになるので想定していない事が起こるのは当たり前なのですが、多くの人がこの時点で諦めて方向転換をしてしまい、本来得られたであろうものを手にすることがないまま次の選択をしてしまうようです。

上記のような経験をした後に人材業界で再度起業したためか、私は転職されたばかりで成果が未だ出ていない状況で相談に来られる方には、極力現職を続けてパフォーマンスを出し、自信を得てから転職した方が良いとアドバイスをしています。もちろん状況によっては見切りをつけることが大事な時もあるのですべてに対してそうしている訳ではありませんが、逃げの転職姿勢だなと感じるときは「もう少し頑張ってみてはいかがですか」と提案しています。

継続した先にどのような答えが待っているかは知り得ませんが、私自身も苦しくなった時には“178,918円”の請求書を眺めて、一度強い思いを持って始めたことなのだから、長期間気持ちを込めて続けることで大きな成果が得られるのでは、と自分に言い聞かせています。転職を斡旋する会社の社長が言うセリフではないかもしれませんが、良い成果を出すためには「継続は力なり」という考えも重要です。

いろいろな事があった2014年も終わろうとしています。本年も弊社をご利用いただいた方々、採用企業の方々に心より感謝いたします。来る2015年、アンテロープは創業から13年が経ち14年目を迎えることになります。今まで組織として積み上げた経験を活かして更に良いサービスを提供できるよう、地道な努力を継続していきます。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。