英語は必要か?

2015-10-14 執筆者:小倉 基弘

英語がビジネス上で必要かの議論がいまだに行われていますが、今更という感じはしますが私の考えを以下に記載します。

もし日本国内のみで日本語を話す日本人相手のみのビジネスを一生するのであれば必要ないでしょう。でもそうでないのであれば必ず「英語が話せない」ということはビジネス上、障害になってきます。

現状の日本では国内マーケット向けのビジネスだけを手掛けている企業で仕入れも販売先も国内で完結しているようなビジネス、もしくは海外との何らかの繋がりのあるビジネスをしていても、業務自体がバックオフィスでフロントのように対外交渉する機会が一切ないような職種ではない限り英語が必要ない、と言い切れるポジションは基本的にはないものと思われます。

日本のビジネス界では、80年代のバブル期までは海外赴任者もしくは外資系企業のマネジメント陣程度に英語力が求められていたのかもしれませんが、90年代以降、大きな不況、デフレのサイクルの中で大企業だけではなく中堅中小企業も含めた海外進出、また外資系企業の日本進出に伴い、多くの分野で英語力がなければビジネスに支障がでるという状態が徐々に大きくなってきています。また、今後2020年にオリンピック/パラリンピックが東京で開催されるのも一つの契機かもしれませんが、ビジネスも文化も他国の人々との交流、競争の中で行われるようになり、英語でコミュニケーションが取れないことは場合によっては日本語が話せないのと同じようなハンディキャップになる可能性もあるのです。

例えば弊社で現在、いただいている求人の70%がなんらかの形で英語に対するリクエストを載せています(TOEIC何点以上、海外勤務経験等)が、弊社のクライアントのほとんどがプロフェッショナルファームであるため、職務上、話せて当然のポジションのため(例えばクロスボーダーM&A)記載自体がないものも考慮するとおそらく80%以上のポジションでは既に英語力が求められており、この傾向は増加することはあっても減少することはないと思われます。

求職者側もそれは感じており、少なくともTOEICである一定レベルの点数を取っておこうという流れはあります。TOEICの受験者推移をみても毎年増加しており、特に不況期の2011年位からの増加傾向は明らかです。これは不況であればあるほど就業可能性を高めるために自身の武器を持ちたいという現れの一つで、明らかに英語力はその武器の一つと見做されている証左であるのでしょう。

ではどの程度の英語力を身に付けていれば良いのか、というと実務で使用していた(ビジネス交渉も含めて使用できる)というのがベストですが、実務で使用していないのであれば客観的な指標で示せる資格が必要になります。例えば海外有名大学院でMBAを取得している、もしくはTOEICで900点以上のスコアがある等あれば、プロフェッショナルファームでは転職に有利になるでしょう。TOEICについては勉強をした人、また実際にビジネスで使用できる人から見ればリスニングとリーディングスキルしか計っていない試験である、との認識ですが、900点以上のスコアについてはある程度の英語の基礎知識、スキルはあると見られておりビジネスで使用できるレベルにキャッチアップ可能とは認識されています。逆に800点台、特に前半レベルではそれも難しいと考えられてしまいます。

例えば、35歳 5年程度のM&A経験(通常アソシエイト2年目、3年目相当)で英語がビジネス上使用できるか、上記の通りある一定レベルで英語のスキルを客観的に示せる人材とそうでない人材の場合、その人が同業に転職しようとした場合、前者は外資系投資銀行、日系大手証券会社の投資銀行部門のクロスボーダー案件を扱うチームにてベース1000万~1500万円+賞与(合計で1500~3000万円)程度になります。後者は日系の証券会社、場合によっては準大手以下の証券会社の投資銀行部門で国内案件のみに対応するチームで600万~900万円+賞与(合計で800~1200万円)程度になるのです。

仕方なくスキルアップするという気持ちで対応するのではなく、英語でのコミュニケーションスキルがつけば、今後幅広く職務上で対応できるようになり、更にステップアップも当然考えられるようになります。また、日常生活でも入ってくる情報量、また付き合い人の幅も広がり、人生そのものも豊かになると考え、積極的に取り組むことをお奨めします。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。