学歴では測れないもの

2017-02-22 執筆者:小倉 基弘

以前「学歴の裏側にあるポテンシャル」というショートレポートを書きましたが、一方で、この仕事をしていく中で学歴では測れない人の偉大さを時々感じています。

私たちの対応している金融(特に投資銀行、投資ファンド、アセットマネジメント)業界やコンサルティングファームは、日本の中でも高学歴の方々が集まっている業界です。東大、京大はもとより、旧帝大、一橋大、東工大、慶應、早稲田、更には最近では米国、欧州の最高学府のMBA修了者が就業者の多くを占めています。確かに高学歴者は理解力、問題解決能力、粘り強さ、目標達成意欲が高く、こういった業界で活躍する素地を持っているのかもしれません。

ただ時折、学歴自体はそれほど高くないのですが、これらの競争の激しい業界でハイパフォーマンスをあげている人を見かけるのです。この仕事を始めた当初は、確率は低いかもしれないがそういった人もいるんだな、程度に考えていましたが、20年近く経ってみて、そういったいわゆる高学歴ではない方々が持っているひとつの共通点に気づきました。

その共通点とは、10代の前半位から後半(高校卒業もしくはその後数年)まで何かに没頭して打ち込んでいた時期があったということです。ある人はスポーツ(野球、サッカー、バレーボール等)で高校野球、インターハイ、インカレレベルで成果をあげていたり、ある人は音楽(ピアノ、バイオリン、バンド等)でプロを目指すほどの努力をしていたり、ある人は例えば宝塚に入るために1日8時間から10時間もダンスや声楽の練習に打ち込んでいた時期があったのです。

努力と情熱を持って長期間(18歳前後の若者にとっては5年から10年という期間は短いものではないと思います)、何かをやり抜いた経験は厳しい受験勉強を勝ち抜いてきた能力と同等、もしくはそれ以上の何かをその人物に植え付けたのではないかと想像しています。その人たちにとっては、スポーツや音楽が「仕事」に変わっただけ、つまり居場所が変わっただけで本質的にやることは一緒なのかもしれません。

アンジェラ・ダックワースの著書『GRIT やり抜く力』(ダイヤモンド社)では、偉大な人と普通の人の決定的な違いは「動機の持続性」であると述べていて以下の説明をしています。

動機の持続性は4つの指標に当てはまっています。
・遠くの目標を視野に入れて努力している
・いったん取り組んだことはきまぐれにやめない
・意志力の強さ、粘り強さ
・障害にぶつかっても、あきらめずに取り組む

知能レベルは最高でなくとも、最大限の粘り強さを発揮して努力する人は、知能レベルが最高に高くてもあまり粘り強く努力しない人より、はるかに偉大な功績を収めるのです。

私たちの仕事では、絵にかいたような高学歴かつ有名企業で働いている方々にも多くお会いしますが、時々、上記のように波乱万丈でドラマチックな経験を若い時にしている方々にお会いする機会もあるのです。彼らが年端のいかぬ小学校時代、また中学、高校時代に必死な目をして一つのことに打ち込んでいた姿を想像すると胸が熱くなるのを感じます。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。