キャリアの時間軸の捉え方

2017-05-31 執筆者:佐藤 史子

先日、Big4系コンサルティングファームの一角であるEYアドバイザリー・アンド・コンサルティング(EYACC)のパートナー、鵜澤慎一郎様にお話を伺う機会がありました。EYACCは今年1月にEYグループのコンサルティングビジネス再編により誕生した新生コンサルティング会社。4月に同社にパートナーとして参画後、精力的に活動されているご様子はとてもエネルギッシュでコンサルティングへの情熱に溢れており、惹きつけられるものでした。

中でも印象に残ったのが、鵜澤さんご自身のキャリアに対する考え方です。もともと総合系ビッグファームであるデロイトトーマツコンサルティング(DTC)の人事コンサルティングユニットで、アジアパシフィックリージョンのサービス推進責任者まで登りつめて、成功していた鵜澤様。2005年から参画したデロイトでのキャリアも10年以上となり、次のキャリアのフィールドとしてコンサルティング業界では新興のEYを選ぶ時、残りの仕事人生をどう過ごすか考えたそうです。

そして、この考え方のスケールが大きい。今後、私達の働き方も大きく変わり、リタイアするのも下手をしたら70歳か、場合によってはそれ以上働き続けることになる。となると、今は自分の仕事人生でもまだまだ折り返し地点にも満たない。守りに入るような年齢ではないし、リスクも取れる。いや、今の時点で新しいことを始めることも、安定した立場を捨てることもリスクとは感じないと、おおらかに述べられていました。

今は新規事業の立ち上げに取り組む起業家のような感覚で、新生EYACCのコンサルティングビジネスの再構築とリブランディングに、精力的に取り組んでいらっしゃいます。完成されたデロイトの組織やプラットフォームももちろん素晴らしいが、ポテンシャルのあるEYにおいて自分たちでルールを作ること、変えること、それによりコンサルティング業界の勢力図を自分たちの手で塗り替えていくというチャレンジに、やりがいと面白さを感じると情熱的に語られていました。

私は、鵜澤さんの視点の高さに率直に感服しましたし、これだけ長期スパンで物事を考えられると、ライフキャリアの中で出来ることも変わってくると感じました。もちろん、それまでの実績と積み重ねがあってこその発言であることは言うまでもないのですが、自分のことを振り返っても、20年という仕事生活をまだまだ半分以下と考えて、ここから新しいことを始めること、そのような時間軸で自分のキャリアを捉えることなど、久しくしてこなかったと、このような仕事をしながら率直に反省してしまいました。

一定の実績を積んだり、ある年齢に差し掛かると、どうしてもそこまで走ってきたことの再生産で残りのキャリアをどう走りきるか、という発想に陥りがちです。特に新卒でスタートダッシュで就職偏差値の高い会社に入ることを推奨され、そこから先のキャリアの流動性が決して高いとはいえない日本の社会においては尚更です。が、視点や時間軸を一段高くして捉え直すことで、まだまだ自分を「若造」と感じることができると、気持ちを新たにした機会でありました。

なお、鵜澤さんのインタビューは近日中にアンテロープHPで公開予定です。ぜひお楽しみに。

佐藤 史子 / Fumiko Sato
【経歴】
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒。新卒で大手新聞社に入社し、取材記者として勤務。その後大手総合人材サービス会社を経て2008年より現職。人材業界でのキャリアは通算15年以上にわたる。

【担当領域/実績】
コンサルティング業界担当。毎年年間200名以上の候補者の転職やキャリア形成をサポート。外資系戦略コンサルティングファーム、総合系ファーム、会計系財務アドバイザリーファームを中心に業界でのネットワークを広く持ち、現役コンサルタントの方々との日々のコンタクトを通じて業界の生の情報に触れ、コンサルティング業界の最新動向やキャリア形成に関する知見を磨く。これらをソースにした的確な転職アドバイスに強み。大手ファームへの転職支援はもちろん、ポストコンサルの方々のファンドや事業会社のコアポジションへの転職支援実績も多数。