己が身を達せんと欲せば、まず他人を達せしめよ

2021-08-16 執筆者:小倉 基弘

表題は、実語教(平安時代に成立し、鎌倉時代に普及した書物。特に江戸時代には寺子屋の教科書として使われていました。作者は弘法大師ともいわれていますが確証はないようです)の一節です。
福沢諭吉の『学問のすゝめ』の中にも「実語教に、人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なりとあり。されば賢人と愚人との別は、学ぶと学ばざるとに由て出来るものなり」と引用されていますが、ここからも当時(江戸末期から明治時代初期)は庶民の間でも実語教が常識となっていたことがわかります。

「己(おのれ)が身を達せんと欲せば、まず他人を達せしめよ」の意味はそのままではありますが、
「自分の目的を達成しようと思うなら、他人の目的を達成するように手伝いなさい(そうすれば、自然と自分の目的も達成されるだろう)」ということになると思います。

私たちエージェントの業務は、まさに「他者の目的達成」をサポートする仕事になります。
20年ほど前にこの仕事を始めようと思ったきっかけのひとつに、個人の長期的なキャリアデザインを置き去りにした対応がエージェント業務に垣間見られ、それに違和感を覚えたことがあります。当時のエージェント業界はフィーを支払ってくれる企業寄りのスタンス、企業の採用支援という企業側のニーズありきで候補者を紹介し、内定が出れば提示内容は度外視しても入社に向けて説得する、というような場面がよくありました。

ビジネスの構造上、フィー自体は企業からいただきますが、スタンスとしては個人の人生を重視して長期的な視点で仕事の機会提供を行うこと。それが最終的に優秀な個人から評価、支持されることになり、そして優秀な個人の登録が多くなれば翻って紹介先である企業にとっても有益になる。そうした循環のほうが正しいのではないかと考え、このサービスを確立するために2002年にアンテロープを創業しました。

そのため、当社で働くコンサルタントも対応する候補者の方々へ魅力的な機会提供ができるように、業界内のメジャーな企業、また規模は大きくなくてもクオリティの高いサービスを提供しているエッジの効いた企業を探し出し、開拓、関係強化をすることによって詳細な情報を得て、募集背景、組織構成、その後のキャリアパス等の情報及び信頼関係を提供して、さらに長期的な視点で個人と向き合うことによって目先の成約にこだわることなく候補者の方々の目的達成をサポートできるよう努力しています。

人生を充実したものにしてくれるのは人の役に立ち、社会に貢献し、遣り甲斐のある仕事に就くことです。エージェントである私たち自身が成長するためにも、

「己が身を達せんと欲せば、まず他人を達せしめよ」

という意味を理解して多くの人に人生を充実させる機会提供を行っていきたいと思います。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。