リモートワークの進化とその影響

2024-10-01 執筆者:小倉 基弘

新型コロナウイルスのパンデミックや、ZoomやTeamsといったオンライン会議ツールの進化に伴い、リモートワークが一般的な働き方になりました。
それまでのように朝9時から出勤し、夕方までオフィスで働くという固定された時間の拘束から解放され、柔軟な働き方ができるようになったことは大きな変化です。
特に、子育てや親の介護と両立して働くことが難しかった人々にとっては、リモートワークがフレキシビリティを提供し、仕事とプライベートのバランスが取りやすくなりました。

また、通勤に多くの時間を費やしていた人にとっては、往復の移動時間を大幅に節約できたこともリモートワークの大きなメリットです。
その結果、浮いた時間を家族との時間や自己研鑽に充てたり、健康促進のための運動に使うことが可能になりました。
こうした利点により、多くの人が生活全般に余裕を持つことができ、仕事の効率も向上したと感じています。

一方で、リモートワークには課題もあります。特に、職場での人間関係が希薄化している点が懸念されています。
フルリモートを採用している企業も増え、社員同士のコミュニケーションがほとんどオンライン上で行われる組織も少なくありません。
新卒や転職直後の社員がリモートで研修を受け、プロジェクトに入ったものの、対面で同僚と会ったことがないという事例もよく聞かれるようになりました。

従来の職場では、雑談や何気ない会話の中から新しいビジネスのヒントが生まれたり、先輩の電話対応を傍らで聞くことで学ぶ機会が自然に得られていました。
しかし、リモート環境ではこれらの機会が減少し、重要な学習や関係構築の機会が失われつつあります。

人間が幸福を感じるのは、家族や職場の同僚、友人との温かな人間関係があるときです。
リモート環境で、こうした信頼関係や感情的なつながりをどの程度築けるのかは依然として課題です。
Zoomやその他のオンラインツールを使って職場の同僚とコミュニケーションを取ることはできますが、それが対面での交流に代わるかどうかは明確ではありません。
また、極端な事例ですが、一人住まいの場合、リモートワークで仕事をして、日用品の購入はAmazon、食事はUberといった生活になれば人と直接会う機会が極端に減ることで、メンタルヘルスにどのような影響があるのかも考慮すべき問題です。

アンテロープでは、メンバーに週3日以上の出社を求めています。
出社した場合にもフレックスタイムを導入し、柔軟な働き方を可能にしていますが、フルリモートに比べると一定の制限があるかもしれません。
しかし、職場での信頼関係、人間関係を築くことが、メンバーの精神的な幸福度を高めるだけでなく、仕事のパフォーマンス向上にもつながると考えています。
リモートワークの利点を活かしつつ、対面での交流を大切にすることで、より良い職場環境を実現していくことがこれからの組織には求められるのではないでしょうか。
世の中の変化に合わせつつ、アンテロープの就業環境も改善していきたいと考えています。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。