2026年2月16日、ベインキャピタルによる上場企業インフォリッチ(9338)へのTOBが発表されました。TOB価格は2月13日の終値2,105円の約2.2倍にあたる4,560円。発表後の16日・17日はストップ高となり、18日も株価は上昇し、終値は4,550円となっています。
近年、日本では上場企業の非公開化(TOBによる上場廃止)が加速しています。その背景には、複数の構造的要因があると考えられます。
第一に、東京証券取引所の市場改革やコーポレートガバナンス強化により、PBR改善や資本効率向上が強く求められるようになり、低成長・低収益企業にとって上場維持の負担が増大していることです。
第二に、日本企業の株価が依然として割安(欧米に比してPER・PBRが低く、ROEも相対的に低い)と評価されるケースが多く、PEファンドにとって買収妙味が高いことが挙げられます。
第三に、事業再編や構造改革には短期的な利益悪化や大規模投資を伴うことが多く、四半期業績に左右される上場環境よりも、非公開化の下で中長期的な経営判断を行う方が合理的であるという経営側の判断です。
第四に、事業承継問題や親子上場の解消ニーズも非公開化を後押ししています。
さらに、海外PEによる巨額資金の流入や、日本企業側におけるMBOに対する心理的抵抗の低下も重要な要因となっています。
直近の主な事例は以下の通りです。
1. インフォリッチ(9338)
買収者:ベインキャピタル
発表:2026年2月
手法:MBO+TOB
概要:モバイルバッテリーシェア「ChargeSPOT」
2. トプコン(7732)
買収者:KKR/JIC(産業革新投資機構)
発表:2025年3月/成立:2025年9月
手法:MBO+TOB
事業:精密機器(測量・眼科機器など)
3. ケアネット(2150)
買収者:EQT(スウェーデンPE)
発表:2025年8月/成立:2025年9月
手法:TOB
事業:医療情報プラットフォーム
4. 中野冷機(6411)
買収者:丸の内キャピタル
発表:2025年6月/成立:2025年7月
手法:TOB
事業:冷凍・冷蔵ショーケース
5. DDグループ(3073)
買収者:ポラリス・キャピタル
発表:2025年7月/成立:2025年8月
手法:MBO+TOB
事業:飲食・エンターテインメント
6. カオナビ(4435)
買収者:カーライル
成立:2025年2月~3月
手法:TOB
事業:人事SaaS
また、こうしたTOBの局面では、エンゲージメントファンドやアクティビストファンドも重要なプレイヤーとして登場しています。
日本の資本市場は、企業に対して株主価値向上を強く求める方向へと大きく転換しており、欧米が1980~90年代に経験したLBO・MBOブーム期に近い状況に入りつつあるとも言えるでしょう。
さらに東京証券取引所は、グロース市場上場企業に対して、現行制度では「上場10年経過時点で時価総額40億円以上」を維持基準としており、未達の場合は改善期間を経て上場廃止となります。加えて2030年以降は基準が厳格化され、「上場5年経過時点で時価総額100億円以上」が求められる予定です。
こうした環境変化は、PE、エンゲージメントファンド、アクティビストファンドに関心を持つ若手人材にとっても、キャリアの選択肢として非常に魅力的な機会を生み出していると言えるでしょう。

- 【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。
【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。













