“成長できる企業に転職したい”はバツ?

2017-06-28 執筆者:鈴木 勝則

弊社にご登録いただく転職志望者の方から「自分がもっと成長できる組織で働きたい」とのご相談を受ける事はしばしばあります。特に若い方にその傾向があります。ただし、転職活動において“成長”と言う言葉は、使い方によってネガティブな評価に繋がってしまう可能性もあるため、注意する必要があります。

企業が中途採用者に求めるのは何か強みを持った人材、言い換えると、他人よりも秀でている能力があり今後もそれが伸びるであろう人材です。伸びるかどうかも分からず漠然と“成長したい”という人材を採用して、芽が出るまで待ってくれる企業は稀です。

逆に、成長可能な自身の強みを具体的に示すことが可能であれば、その強みを求める企業にとっては欲しい人材となります。転職における成長は、自分の能力や強みをより完成形に近づける事の意味合いで考えてみてください。更には、その組織だけではなく、人材市場全体で自分の価値を高めていく事も目的にしていただきたいと思います。

自分が高めたい能力や強みは何か、そしてそれが客観的にも自分の強みと言えるのか、十分に検討する必要があります。仮に、自分が優れていると思っている点が周囲から認められていないとすれば、初対面である面接官にはなおさら認められない可能性があります。この場合、何故自分が周囲から認められないのかを冷静に分析してみてください。その分析を基に、周囲の評価を変える努力も必要だと思います。転職はそれからでも遅くありません。

ミドルクラス以上の転職の場合、“成長”と言う言葉には更に違和感を覚える場合があります。しかし、人間は何歳になっても成長出来るはずです。生物学的な成長はなくても、人間的な成長は一生の課題です。これまで培ってきたスキルを存分に活かし、組織や社会の経済活動を最大化させることを自身の成長と捉え、そのことを転職の目的とすれば違和感はありません。

転職活動での“成長”は具体性と定義付けが必要です。自分が思い描く成長とは具体的に何を完成形に近づけるのか、またどのような状態を意味するのかを明確にしてみてください。そうすれば、“成長できる企業に転職したい”という漠然とした目標ではなく、明確な意思として企業にも伝わるはずです。

具体的な自身の強みと自分が意図する成長の方向性は、もちろん職務経歴書にも盛り込まれるべきです。職務経歴書から読み取れる候補者の強みに企業側が興味を持ち、かつその方向性が自社の求めるものであれば、書類通過の確度は上がります。

成長とは何かを具体化し、それがどのように活かされていくのかを十分に検討しないまま漠然と「成長できる企業に転職したい」と言うのでは、成長できる企業への転職は難しいと言わざるを得ません。是非具体性を持った成長を考えていただきたいと思います。

鈴木 勝則 / Katsunori Suzuki
【経歴】
中央大学理工学部卒。シティバンク、エヌ・エイにて外国為替カスタマーディーラーとしてトップティアの事業法人や金融法人を担当。後に同行プライベートバンキング部門に異動し、投資カウンセラーとして個人富裕層顧客にも対応。その後カナダ・ロイヤル銀行にて再び大手法人顧客への外国為替のセールスに従事。20年以上に亘り、金融業界で多様な顧客と国際金融市場との架け橋役を担ってきたが、テーマを社会で最も重要な「人」に変え、向上心を持つプロフェッショナルと人材を求める企業との架け橋となるべくアンテロープに参画。

【担当領域/実績】
資産運用会社(アセットマネジメント)、プライベートバンク、フィンテック、銀行・証券のセカンダリーを中心としたフロントおよびセールスポジション等、マーケット分野を中心に担当。金融業界での長年のキャリアをベースとした情報やネットワークで、幅広い年齢層の転職をサポートしている。