アセットマネジメント業界の人材動向

2018-12-26 執筆者:鈴木 勝則

(2019年8月現在の内容を追記いたします)

2019年の前半は2018年に続き資産運用業界の人材ニーズは旺盛で、運用や営業のフロントラインをはじめ、プロダクトマネージャー、商品企画、RFPさらにパフォーマンス・アナリスト等の専門性が求められる求人も見られます。

運用フロントでは株式のアナリストやファンドマネージャーの採用は継続しており、新戦略ファンドの立ち上げに伴うリードポートフォリオマネージャーの募集なども見られました。ただし、昨年後半に運用のパフォーマンスを下げたファンドでは、採用をいったんペンディングにするポジションも散見されました。

昨年増加した債券運用ポジションは横ばいながらもニーズは継続しており、今年は昨年のようなオルタナティブやアクティブ運用よりも、インデックス運用などパッシブ運用の募集が目立っています。

プロダクトマネージャーは、シングルプロダクトよりもマルチアセットのプロダクトマネージャーのニーズが高まっているようです。

昨年同様、不動産やインフラなどリアルアセット関連のポジションはニーズが強く、これらのアセットクラスに投資する外部委託運用ポートフォリオマネージャーやゲートキーパーの求人は継続しております。

営業部門ではリテール、年金・機関投資家ともにジュニアの採用意欲は強く、外資日系ともに複数名の採用を行うところも散見されました。ジュニア採用であるため一部では未経験者も対象となっており、セルサイドのリテール営業経験者の採用も行われておりました。

2019年後半も、積極的な採用が継続すると予想されますが、引き続きリスク要因は市場の動きです。政治情勢をはじめ不確定要素は多く、伝統的資産が主力商品の運用会社は、市場動向の影響をダイレクトに受ける可能性があり、それが人材採用にも直結してきます。

セルサイドで撤退や縮小の動きが見られるなか、優秀な人材の受け皿となっている資産運用業界ではありますが、更に注意深く市場をウォッチする必要がありそうです。


(以下、初出時の内容です)

2018年は2017年に続き資産運用業界の人材ニーズは旺盛で、運用や営業のフロントラインをはじめ、プロダクトマネージャーやRFP等の専門性が求められる求人も数多く見られました。

運用フロントでは株式のアナリストやファンドマネージャーの採用は昨年同様に活発で、外資、日系、大手、独立系ともに、広範な募集が行われました。また日系運用会社では、クオンツやESG投資、またオルタナティブを中心としたマルチアセット投資などでも経験者の採用ニーズが高まりました。

昨年以来増加傾向にある債券運用では、クレジット・ストラクチャード投資やファンズオブファンドの採用が拡大し、年金資金等のダイバーシフィケーションを背景とした動きが引き続き見受けられました。

また、不動産やインフラなどリアルアセットに対する投資の拡大を反映して、これらのアセットクラスに投資する外部委託運用ポートフォリオマネージャーやゲートキーパーの求人が目立ったのも特徴と言えます。

こうしたオルタナティブ領域への投資が活発化することで、営業やプロダクトマネージャーにも、それらの知見がある経験者の採用ニーズが強まっており、バイサイドからだけではなく、セルサイドからの人材流入も見られました。

資産運用会社の営業部門ではリテール、年金・機関投資家ともに採用意欲は強く、特に外資大手の日本拠点の拡大や立ち上げに伴う採用が目立ったのも特徴です。こうした多様化の動きを背景に、営業系のポジションは採用人材に求めるスキルセットにも多様化が進んできているように見受けられます。

2019年も、こうした流れが継続すると予想されますが、リスク要因は市場の動きです。各国の政治情勢をはじめとしてリスク要因は多く、足元では株式市場の調整も見られます。金融市場の冷え込みは、資産運用業界の求人需要にダイレクトに反映してきます。我々も市場動向を見据えながら、来年も良いポジションをご紹介出来ますよう情報提供させていただきたいと思います。

鈴木 勝則 / Katsunori Suzuki
【経歴】
中央大学理工学部卒。シティバンク、エヌ・エイにて外国為替カスタマーディーラーとしてトップティアの事業法人や金融法人を担当。後に同行プライベートバンキング部門に異動し、投資カウンセラーとして個人富裕層顧客にも対応。その後カナダ・ロイヤル銀行にて再び大手法人顧客への外国為替のセールスに従事。20年以上に亘り、金融業界で多様な顧客と国際金融市場との架け橋役を担ってきたが、テーマを社会で最も重要な「人」に変え、向上心を持つプロフェッショナルと人材を求める企業との架け橋となるべくアンテロープに参画。

【担当領域/実績】
資産運用会社(アセットマネジメント)、プライベートバンク、フィンテック、銀行・証券のセカンダリーを中心としたフロントおよびセールスポジション等、マーケット分野を中心に担当。金融業界での長年のキャリアをベースとした情報やネットワークで、幅広い年齢層の転職をサポートしている。