不動産金融市場に関わるプレイヤーを目指すには

2018-06-27 text by 渡邉 一也

初めてショートレポートを担当させていただきます、アンテロープの渡邉です。今回は、私が担当している不動産金融業界についてざっくり概観を示したうえで、同業界への転職を目指すためのポイントをご紹介してみたいと思います。

日本の不動産証券化市場は、1990年代の後半から急速な成長を遂げています。現在の運用資産額はJ-REITで16.2兆円、私募ファンドで15.8兆円規模にまで成長しており、節目と言われている2020年を超えてもなお、新たな成長ステージを迎えるという見方もあります。そのステージにおいては投資対象や投資家の多様化、グローバル化が進むことは必至であり、この市場でのプレイヤーを目指すために求められるスキルも、より多様化が進むと思われます。

例えば、人気の高い不動産金融市場のフロント業務での転職においては、経験者が評価される一方で、金融バックグラウンドまたは不動産バックグラウンドのみの方々でも一定の経験、スキル、素養をお持ちであれば十分に可能性があると言えるでしょう。そこで、不動産金融市場に求められる経験とはどのようなものかを以下の3つに分類して解説したいと思います。

1.金融業界から不動産金融市場に転職したい方に求められる経験、スキル
2.不動産業界(仲介も含む)から不動産金融市場に転職したい方に求められる経験、スキル
3.異業種から不動産金融市場に転職したい方に求められる経験、スキル


1.金融業界から転職したい方に求められる経験

金融業界から不動産金融市場に転職をされた方々にみられるケースとして、法人向けの融資を担当された経験を活かし、ファイナンス(資金調達)の担当者として転職されるケースが挙げられます。特に、ストラクチャードファイナンス、メザニンローンをアレンジした経験のある方はボロワーとの業務接点があるため、転職後の業務イメージがしやすく、早期に戦力となりえます。また、銀行や証券会社の投資銀行部門(IBD)の不動産業界向け、REIT向けバンカーも不動産業界のビジネス構造をよく理解しており、業界・職種を転換するとしても早期に戦力となりうると言えます。その他、信託銀行や証券会社における不動産仲介業務の担当者も、物件取得の経験を活かす転職としてアクイジションのポジションに転職する際に有利な経験となりえます。また銀行等で担保不動産のデューデリジェンスの経験がある方もアクイジション(鑑定業務などを中心に行うバックポジション)として転職できる可能性を有しています。また、20代の方で人物が良ければ、ポテンシャルで総合職採用をする企業も稀にあります。その場合は他の候補者と比較して何か秀でているもの(不動産金融に対する志望度や対人能力、語学力、数字に強いといった強み)が必要になるのは言うまでもありません。

2.不動産業界から転職したい方に求められる経験

たとえ不動産金融市場を経験されていなくても、不動産業界経験者がジュニアとして採用される例は多く、大型物件の開発経験者や開発用地の仕入れ経験、法人向けのオフィスビル・商業施設等の売買の経験者、テナントリーシングの経験者、一棟ものレジ物件やオフィス棟の投資用不動産の売買の経験者等は、業務の類似性を評価されています。特に大型不動産売買・大型開発のための用地仕入経験が豊富な方は、ある程度の年齢であってもソーシングやアクイジション担当として即戦力化を期待され採用に至るケースもあります。また、鑑定士資格を持ち、鑑定事務所にて物件評価経験のみという方でもアクイジションとして採用の機会もありますし、20代~30代前半の方であればジュニアとしてポテンシャルも見ながらアクイジション、アセットマネージャーとして採用されている事例もあります。最近ではリノベーションの経験がある売買経験者を、アクイジション担当として採用する企業も散見されます。

3.異業種から転職したい方に求められる経験

異業種からの挑戦でも、稀にフロント業務に従事できることがあります。例えばExcelやVBAといったスキルを持ち合わせている場合、アセットマネージャーのアシスタントとして収益分析の補助から入って経験を積み、将来のアセットマネージャーを目指すこともあり得ます。また、英語の能力が高く、Office系ソフトの高度なスキルがあり、プレゼンなどの経験があればIRアシスタントとして採用される可能性もあります。フロントではありませんが、税理士資格を有し経理の経験がある方であればファンドアカウンティング業務につくこともできるでしょう。会計事務所等でSPC会計の経験があれば不動産金融の市場においては非常に貴重な人材と言えます。事業会社で人事総務の経験があれば、バックのポジションにつくこともできますし、社内システム周りやITの知識があれば引く手の多い貴重な人材と言えるでしょう。また、事業会社や資産運用会社で法務コンプライアンスの経験を有していれば、不動産金融業界においてもその経験を買われて、コンプライアンスオフィサーとしての活躍ができるでしょう。

●すべてに共通して求められるスキル、素養

不動産金融市場は資産運用業務でもあるため、多くのプレイヤーと関わることが求められます。例えば対外的には不動産のオリジネーター、投資家(機関投資家、個人投資家)、レンダー、プロパティマネージャー、監査法人、弁護士との調整が必要になりますし、社内的には各部署との調整もあることから、コミュニケーション能力やチームワークを重視するソフトスキルも要求されています。外資系に挑戦をされるのであれば、英語力は言うまでもなく、中国の投資マネーの流入が増えていることから、今後は中国語の能力があると、なおのこと貴重な人材となり得えます。資格要件で言うのであれば、宅建士の資格は当たり前に求められます。最近では不動産証券化マスター、不動産コンサルティングマスター、ビル経営管理士等の資格を求める企業も多くなっているため、転職を思い立つ前から準備をされておくと良いでしょう。


ここ数年は日本の不動産マーケットは高値にきているという意見もある一方、新規に海外から参入してくるファンドも散見されます。米国の州立年金ファンド、リテール物件に特化している世界最大級の米国ファンド等はその代表的なものです。ご興味のある方は、こういったユニークなファンドも含めて不動産金融全般でのキャリアデザインのサポートを行っているアンテロープの扉を、是非叩いてみてください。

渡邉 一也 / Kazuya Watanabe
【経歴】
成蹊大学法学部卒。地域金融機関にて法人や個人顧客を担当。与信業務・受信業務を通じて10年にわたり地域の発展に寄与。その後、大手邦銀にて10年間、住宅ローンコンサルタントとして個人顧客ならびに業者向けセールスを行う。20年以上に渡り顧客に金融商品を提供しながら信頼関係の構築に注力してきた経験を、人財というもっとも重要なリソースをクライアントに提供することに注ぐべくアンテロープに参加。

【担当領域/実績】
銀行の金融市場部門、資産運用会社(アセットマネジメント)、不動産金融、ベンチャーキャピタル、フィンテックを中心に担当。金融業界でのキャリアをベースとしたネットワークで、幅広い年齢層の転職をサポートしている。