不動産金融を目指す方への職務経歴書作成のアドバイス

2021-11-01 執筆者:渡邉 一也

不動産金融業界は近年非常に人気があり、異業種からの転職先として応募する方も多いです。一方で採用方針は少数精鋭が基本であり、選考を通過する難易度は高くなる傾向にあります。

その選考の第一関門ともいえる書類選考で躓いてしまってなかなか選考が進まないといった方へ、ちょっとしたアドバイスをさせていただきたいと思います。このアドバイスの内容が、皆さんの職務経歴書を改めて見直していただく際の気づきにつながると幸いです。

まず、職務経歴書全体のボリュームは、A4サイズで2枚以内にすっきりとまとめるのが基本です。社会人経験が豊富で5社以上在籍している経験の長い方でも極力3枚以内とし、端的かつ簡潔を意識して作成すると良いでしょう。なかなかうまくまとめられない場合は、これまでの経験を見直して、応募を検討しようとしているポジションとあまり関係がない経歴の部分は、大幅にカットし箇条書きで記載するくらいでも結構です。

職務経歴書の構成としては、

1)職歴要約
2)職歴
3)学歴
4)資格、その他

の順番で各項目がまとまっていればOKですが、1社経験のみでボリュームが出ない場合や、社会人経験2~3年目でこれまで担当してきた業務の内容が少ない場合などは、5)の項目としてご自身の強みや自己PRなどを加えて体裁を整えるのも良いと思います。

今回のアドバイスでもっとも強調したいのは1)の「職歴要約」の書き方です。この部分が完璧に近ければ、極端に言えば他の部分に多少足りない部分があっても書類選考を通過する確率はグッと上がります。本当か? と思いますよね。

冒頭で申し上げたように、不動産金融業界において大量採用はまず行われません。わずかひとつの座席のオープンポジションを目指して数名の、場合によっては数十名の候補者が応募してきます。

当然、採用担当者の方も一度に大量の職務経歴書に目を通す必要がありますので、皆さんがどれだけ精緻にボリュームのある完璧な形の職務経歴書を提出したとしても、冒頭部分にある職務要約を見て『この人は違うな』『今回求める人物像とは相違している』と思われてしまえば、そこで書類選考は終了です。その後の項目にまでじっくりと目を通し、復活当選させてもらえる可能性はほぼないと言って過言ではありません。

ここからは職務要約部分にフォーカスして、具体的なアドバイスをさせていただきます。

職歴要約部分は見栄えからして、5~7行くらいのボリュームが最適です(採用担当者の方が集中して最後まで目を通してくれ、かつ経歴をアピールするにも十分な量だからです)。

多くの候補者の方のお手伝いをしていると、次の事例Aのような形式で職務要約を纏めている方を見かけることがあります。

(事例A)
■職務要約
2018年4月~在籍中 株式会社▲▲
2005年9月~2018年3月 ▲▲ハウズイング株式会社
2001年4月~2005年8月 ▲▲リハウス株式会社
1997年4月~2001年3月 ▲▲工事株式会社

確かに職務の要約には相違ないです。しかし皆さんが採用担当者だとしたら、ここから何かを汲み取ることはできますか?

職歴の要約はご自身の強みを端的に伝える、大変重要なポイントです。このようにご経験のすべてを時系列で列挙せず、あくまでもサマリーであることを意識して記載するようにしてください(構成としてこの後に2)で記載される職歴部分でも同じ内容がより詳細に記載されることになりますので、同じことの羅列にしかなりません)。

次の例を見てみましょう。

(事例B)
■職務要約
大学卒業後、事業会社の不動産部門に所属し、不動産開発案件に係る事業スキームの構築や投資分析、プロジェクト全体の工程管理等の開発企画業務に約9年間従事して参りました。また、グループ会社への出向時には不動産鑑定士資格を取得し、不動産売買に係る仲介及び鑑定評価業務、デベロッパー業務(テナント交渉や投資分析、各種契約締結、運営管理方針の策定等)、市中収益物件の取得業務等に従事して参りました。

事例のAとBは両方ともボリュームとして適切な範囲ですが、内容の伝わり方がまるで違います。Bのケースでは採用担当者の方はその後に記載されている職歴にもしっかりと目を通し、結果的に1次面接に進む可能性が高まるでしょう。

Aの書き方が必ずしもNGとは限りませんが、採用担当者の方が職歴に細かく目を通して経歴がマッチしていると判断するか、好意的な目でレジュメの最後まで読んでくれない限り、Bと比較して書類選考の通過確率は低くなるでしょう。

このように、ご自身が経験した業務の中から特にアピールしたい部分に絞って、分かりやすく記載することが大切です。どのような強みをお持ちなのか、この数行の記載の中から採用担当者にしっかりとイメージを伝えることを心掛けてください。

ここで、もうひとつ意識しておくべき注意点があります。

事例のAとBを見比べていただき、Bの方が良いと申し上げてきましたが、肝心なのは「その募集ポジションに求められる経験を有している」ということをアピールする必要があるということです。

どんなにご自身の経歴を簡潔にまとめることができても、それが募集ポジションの必要経験やスキルと乖離していては当然選考は通過しません(ポテンシャル採用の場合は別です)。そのためにも、今回応募されるポジションの募集要項、応募資格、必要能力、必要経験は、事前にしっかりと確認してください。そしてご自身の経験を照らし合わせて、それらの要件とマッチしていることが相手に伝わるように表現することを意識してください。

例えばアクイジションのポジションに応募するのであれば、募集要項を読み込んで、特にソーシング能力を求められているのか、それともアンダーライティングの経験を求められているのか、クロージングの経験値を求められているのか等を把握し、自分はその分野でどれだけの経験をしてきて、得意としているかということをアピールしましょう。一方、期中運用のポジションに応募をするのであれば、テナントや外部とのネットワーク構築能力、予算管理や物件運用及び管理全般の経験があり、ExcelスキルもPowerpointを使った資料作成能力もあるといったことが伝わるよう意識しましょう。

ここまで長々と述べさせていただきましたが、職務要約部分の完成度で書類選考の合否が決まるというのは間違いありません。転職活動全体の中では些細なことに思えるかもしれませんが、なかなか書類選考から先に進まないという方は、改めてご自身の職務経歴書の中身から見直してみてはいかがでしょうか。出来る限り選考通過の可能性を高めてライバルに打ち勝ち、皆さんが希望するキャリアパスを描いてください。

私たちアンテロープでは所属するすべてのコンサルタントが、候補者の皆さんに対して少しでも選考を通過する確率が高まるようにオーダーメイドでサポートを行っています。そんな私たちと一緒にキャリアデザインを試みたいと思う方は、アンテロープへぜひご相談ください。

渡邉 一也 / Kazuya Watanabe
【経歴】
成蹊大学法学部卒。地域金融機関にて法人や個人顧客を担当。与信業務・受信業務を通じて10年にわたり地域の発展に寄与。その後、大手邦銀にて10年間、住宅ローンコンサルタントとして個人顧客ならびに業者向けセールスを行う。20年以上に渡り顧客に金融商品を提供しながら信頼関係の構築に注力してきた経験を、人財というもっとも重要なリソースをクライアントに提供することに注ぐべくアンテロープに参画。

【担当領域/実績】
銀行の金融市場部門、資産運用会社(アセットマネジメント)、不動産金融領域を中心に担当。金融業界でのキャリアをベースとしたネットワークで、幅広い年齢層の転職をサポートしている。
NIKKEI HR AGENT AWARDS 2019金融部門 受賞