スタートアップ入社後のミスマッチについて

2019-11-06 text by 山本 哲史

さまざまな領域で既存産業にテクノロジーを用いた大きな変革がもたらされる中で、有望なスタートアップが次々と設立され急拡大しています。同時に、ポスト金融・ポストコンサルの転職先として、スタートアップについてご相談いただくケースも急増しています。

一方で、そうしたスタートアップに大きな期待を持ちながら転職したものの、早期に退職してしまうケースがあるのも現実です。それはどのような背景からくるのか、ここでは2つのケース事例を挙げてみたいと思います。

・想定していた仕事内容と入社後の役割が違う

弊社は金融機関やコンサルファームご出身のご登録者様が多いため、ご紹介するポジションもCxOや経営企画系がメインとなっています。スタートアップの選考はとても慎重で、特にフェーズがシードに近いほど念入りに行われますので、面接はもちろん複数回行い、時には主要メンバーとの会食まで行いながら企業と候補者の志向を何度もすり合わせます。しかし、そこまでして双方同意のもとで転職されても、残念ながら入社後にミスマッチが発生するということがあります。

その理由のひとつに、候補者が想定していた仕事内容と実際の役割が異なっていたというものがあります。スタートアップは様々な面でリソースが限られており、またビジネスにスピード感が大切になるため、経営企画で入社したといえどもフロント的な業務に忙殺されることがあります。

例えば、SaaSビジネスを展開するスタートアップでは、まず大企業へ営業を行ってそこでの課題点をストックし、プロダクトに反映させたうえで、それを進化させて中小企業向けにパッケージ化していく、というのはよくある流れです。この最初の段階の「大企業とのリレーションを築き深めていく」という業務は、例えばコンサルティングファームのマネージャー以上の方が得意とする仕事だと思います。そうしたバックグラウンドを持った候補者が入社したとしましょう。本人は経営戦略を立てる役割を担うつもりでいたのに、いざ大企業との交渉折衝が目の前に迫った時、「できる人がやる」というスタートアップならではの柔軟さ、あるいは緩さのせいでその仕事を任されてしまう。こうした際に、入社後のミスマッチが発生します。

上記は一例ですが、コーポレート統括、人事、マーケティングなどでも同じように「できる人がやる、やるべきだと考える人が進める」というのがスタートアップの基本姿勢です。優秀であればあるほど、スタートアップ側から期待される役割が幅広くなる、という認識は強く持ったうえで意思決定されることをお勧めいたします。

・大企業と異なるカルチャー

スタートアップはフラットな組織であることが多く、またそれが望ましいと考えられています。事前情報としてそういう環境であることはインプットされていても、入社してみたら想像以上だった、という感想を持つ方がいらっしゃいます。

成長フェーズがシリーズA~Cになると、プロダクトやサービスが急拡大するとともに採用も一気に加速します。昨年100名だった社員が今年は250名を超える、というスピードで増えることも多々あります。一方で、メンバーの流出が激しいのも事実です。良くも悪くも会社に頼る考えの人は少なく、働き方改革や副業などの時流もあり、スタートアップ業界では転職が当たり前と考えている方が多い印象があります(あるスタートアップでは人事担当者が1年間で3回変わりました、いずれも退職によるものです)。人材の出入りが激しい中で、誰かが指示を出してくれることもないため、新入りのメンバーといえども自分の役割・仕事内容は自分で決め、周りを巻き込んで仕事を進めていく能力が必須となります。

その一方で、入社された方に対し企業側から「自分で考えて主体的に動くことが出来ていない」という評価が下されることもあります。レガシーな大企業では何か新しいことをするにも上席の決済が必要であることがほとんどだと思いますが、スタートアップの場合はスピードを重視する傾向が強く自分で責任をもってプロジェクトをどんどん進めることが求められます。それを裁量権が大きいと捉える人もいれば、カオス状態と感じる方もいると思います。そうしたギャップを埋められない場合、自分では主体的に動いているつもりでも企業からは指示待ちに見える、ということがあるようです。


アンテロープでは、スタートアップ入社後のミスマッチを可能な限り排除することに最大限注力しております。そのひとつの発露として、弊社でご紹介するスタートアップのほとんどがファンドの投資先になっていることが挙げられます。もちろんVCやPEが投資したからといって会社のグロースが約束されるわけではないのですが、ビジネス目利きのプロであるファンドがLP資金を投資するという判断を下したということそのものに一定のスクリーニング機能があることに加え、ファンドによる投資先へのさまざま支援がスタートアップの経営を安定させ、入社したプロフェッショナル人材の活躍の後ろ盾になるのではないかと考えています。

ここまで述べた以外にも、スタートアップへの転職の良い点や留意すべき点はたくさんあります。スタートアップで仕事をしたいという強い気持ちを持った方は、ぜひ弊社までご相談ください。心よりお待ちしております。

山本 哲史 / Tetsushi Yamamoto
【経歴】
成蹊大学文学部卒。日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)にて中小企業オーナー、個人富裕層に対し、金融ソリューション提案、相続対策、事業承継等コンサルティングに従事。在籍中、その高い実績から社長賞を含め多数の表彰を受ける。退社後、向上心あふれるプロフェッショナルの長期的なキャリアデザインと企業の課題解決をサポートする目的を持ち、アンテロープに参加。

【担当領域/実績】
証券のセカンダリー、M&Aアドバイザリー、ベンチャーキャピタル、AI、IoT、フィンテックを中心に担当。