スタートアップへのハンズオン支援

2020-02-26 text by 山本 哲史

先日の「メルカリ、Origamiを買収」との報道は、皆さんも記憶に新しいかと思います。Origamiは2012年に設立されたFintechベンチャーでした。代表の康井義貴氏は、早稲田大学を卒業後リーマン・ブラザーズでM&Aアドバイザリー業務に従事。その後、シリコンバレーの大手ベンチャーキャピタルDCM Venturesへ転職し、米国日本中国のスタートアップへ投資を手掛けました。Origamiはそうした自らキャピタリスト経験もある方が立ち上げたスタートアップでしたが、結果的により資本力の大きい後発組に押され、売却へ至りました。

様々な業界がテクノロジーの力で大きく変化していく中、有望なスタートアップが多く立ち上がってきたここ数年間ですが、既に各企業同士の競争が激化しており、今後はユーザーからの厳しい選別に生き残っていかなければならない状況に入っているのかもしれません。

スタートアップにとって競合他社が増えている以上、これまでよりさらに厳しい環境で事業を立ち上げ、ユーザー/クライアントからの支持を得て、会社をグロースさせなくてはなりません。そんな中で、スタートアップに対する支援の動きも拡大してきています。

スタートアップへのハンズオン支援

優れた技術やプロダクト、サービスを持っているスタートアップでも社内のリソース、特に管理部門は決定的に不足していることが多く、その解消がグロースの大きなポイントになっています。そうしたスタートアップへのサポートは、これまではベンチャーキャピタルが主な担い手でしたが、直近ではコンサルティングファームでもそうした支援を行っているところが増えました。大きく分けると2つあります。

1)ファイナンス系

一定の規模をもつ企業では、CFOのもとに経理・財務部門などが組織として紐づき、会社が運営されていきます。対してスタートアップで人的リソースが揃う前の段階では、1人がいくつもの業務を兼務していることが多くなります。極端な例では、CFOが決算の実務で手を動かしていたり、切れた電球を変えたりしているケースもありました。経営に時間と労力を集中させる必要があるマネジメントポジションが、本来あるべき姿から離れてしまっているのです。

そこで、自らもスタートアップCFOを経験したメンバーが数年前に立ち上げたのが、CFOとして感じたペインを解決すべくハンズオン支援を行うことを目指したファームです。ここには将来的にCFOキャリアをイメージしているコンサルタントが多数参画しており、CFOに紐づく仕事を実地でサポートしています。例えば、資金調達に際しバリュエーション~契約実務まで的確にアドバイスしたり、経理であれば決算業務をサポートしたりと、各社の状況に合わせて対応していきます。

ある素晴らしいキャピタリストの方が「キャピタリストの大切な役割のひとつは、スタートアップ経営者の可処分時間を増やしてあげることだ」とおっしゃっていました。その意味で、このファームはCFOが経営に集中できる時間を増やしており、スタートアップとしては非常にありがたいサービスだと思われます。また、このファームで働くコンサルタントにとっても、様々な実例を見てスタートアップで働くことへの理解を深めると同時に、業界内での人的なネットワークも得ることが出来るというメリットがあります。

2)ビジネス系

スタートアップでは、CEOが技術者、開発者出身ということが多々あります。こうした方々は卓越したエンジニアである一方、「自社の技術をどういう領域に広げていくべきか?」というような経営戦略、営業戦略立案の経験がない場合がほとんどです。もちろん、どちらの能力も併せ持った方はいらっしゃいますが、ロールは分けた方が効率的だと考えるCEOの方が多数です。また、プロダクトマーケットフィット(PMF)はグロースに必須であり、クライアントのニーズを的確に社内にフィードバックしてPMFを上げていく役割も重要です。その先にはマーケティング戦略、ブランディング戦略が必要になります。

これらのビジネス面で不足している機能を、ハンズオンで提供していくコンサルティングファームがあります。こうしたファームには、デジタルトランスフォーメーションや新規事業開発、マーケティング経験があり、将来の独立起業をイメージしているコンサルタントが多く参画しています。こちらもファイナンス系と同じく、スタートアップへの支援を数多く行うことで、起業に必要な能力やスキルを獲得することが期待できます。

「何を」よりも「誰と」

スタートアップ、コンサルティングファーム、ベンチャーキャピタルでは必要とされる経験・スキルに一定の共通項があるので、今後はこれらの間で人材の流動性がもっと高まっていくでしょう。その中で、小規模組織に参画する際に注意しておきたい点をあげるとするなら「何をやるかより、誰とやるか?」ということです。

例えば、会社のビジョン、ミッションに強く惹かれCFOとしてスタートアップに入社した方が自走してどんどん動いていく、するとそれを見ていたCEOが「どちらが社長かわからない…」と考えるようになり、フリクションを起こすというケースがあります。そうなっては、組織自体が崩壊に向かってしまいます。このように単純にCFOだからという職種的な判断軸で転職してしまうと、思わぬ事態に陥る可能性があります。こうしたミスマッチを避けるためには、職種や年収条件だけでなく、ともに働くメンバーのパーソナリティまで含めたFit感をしっかりと確認する必要があると思います。

これ以外にも、スタートアップへのご転職の際の注意点は多くあります。一方で、勢いのある若い会社への転職に成功して生き生きと働いてらっしゃる方の事例も、我々はたくさん見てきています。テクノロジーが世の中を大きく変える時代、そのど真ん中で大きなやりがいのある仕事をしたいという気概を持った方々のご登録を、心よりお待ちしています。

山本 哲史 / Tetsushi Yamamoto
【経歴】
成蹊大学文学部卒。日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)にて中小企業オーナー、個人富裕層に対し、金融ソリューション提案、相続対策、事業承継等コンサルティングに従事。在籍中、その高い実績から社長賞を含め多数の表彰を受ける。退社後、向上心あふれるプロフェッショナルの長期的なキャリアデザインと企業の課題解決をサポートする目的を持ち、アンテロープに参加。

【担当領域/実績】
証券のセカンダリー、M&Aアドバイザリー、ベンチャーキャピタル、AI、IoT、フィンテックを中心に担当。