投資ファンド(PE、VC、PIPES等)での人材募集の傾向

2021-05-03 執筆者:山本 恵亮

早くも2021年の2ndクォーターに入りましたが、弊社が扱う投資ファンドや投資銀行、コンサルティングファームといった業界での人材募集は活発です。未曽有のお金余りの恩恵でしょう。投資ファンドでのファンドレイジングは好調で、年収水準も上昇傾向にあると実感しています。以下、主なファンド業界での募集状況を述べたいと思います。

■バイアウトファンド(PE):

募集は随分と活発です。まずグローバル大手の外資PEファンドでの募集が例年に増して活発になっています。既に組織を確立して国内で定着しているPEファンドでの募集は昨年秋以降に再び活発化していましたが、年が明けて国内では少人数であったグローバルファンドがチームビルディングに力を入れ始めており新規募集が続いています。これらは年収水準も高くジュニアは2000万円~3000万円、中堅は3000万円~中には1億円近くまであります。企業投資経験があって英語も堪能な方にはチャンスです。

国内系も総じて募集は活発です。従来よりも規模の大きなファンドをレイズしている会社が目立ちます。インテグラル(4号ファンド、1238億円)やユニゾンキャピタル(5号ファンド、800億円規模)などの老舗から、日本成長投資アライアンスが1号ファンドの倍以上の金額で2号ファンド(380億円)を立ち上げるなど順調な会社が目立ちます。

以上の通り外資、国内系ともにバイアウトファンドでのビジネスは好調で、人材募集も活発です。PE投資経験者、M&A経験者、戦略コンサルティング経験者などの方々に対する採用ニーズは特に強い状況です。

■ベンチャーキャピタル(VC):

もともと国内のベンチャーキャピタルはファンド規模数十億円と小さく、それ故に採用人数は少なく、キャピタリストの年収水準も他のプロフェッショナルファームと比較して随分と低かったのですが、最近はファンド規模が拡大しており、人材募集も活発になり給与水準も上昇傾向にあります。
例えば、グロービスキャピタル(6号ファンド、400億円)、WiL(2号ファンド、約500億円)、グローバルブレイン(7号ファンド、約400億円)など従来よりも規模が大きいファンドをレイズしています。
また、コロナ禍で一旦ストップしていたCVCも、今年に入ってから募集が増加しています。

VCはバイアウトファンドと異なって採用する人材像が明確化されていません。
VC経験者やスタートUPをEXITさせた人材は国内では限られていますので、ポテンシャル採用が中心です。AIやIoT、デジタル系の技術やビジネスに詳しい人材だけでなく、コンサルティングファーム、投資銀行など金融機関、総合商社などの優秀な人材の応募が増えています。また、学歴についてはバイアウトファンドでは高学歴が前提となっていますが、VCでは大学名よりも「理系」であることなど勉強や研究の内容が求められることが目立つのも特徴です。
弊社では20社以上のVCから募集依頼が入っています。

■エンゲージメントファンド:

社数は少ないですが、上場株にまとまった金額を投資して株主として投資先とコミュニケーションをしていくエンゲージメント投資が活発になっており、この分野での採用ニーズも増えています。独立系のファンドのみならず、既存のアセットマネジメント会社が同ファンドの立ち上げを行って人材を募集するのも増えてきました。弊社では、外資系大手アセットマネジメントと国内系運用会社での募集、そして独立系のPIPESファンドでの募集など合計で10社以上から求人が発生しています。

以上、バイアウトファンド、ベンチャーキャピタル、エンゲージメントファンドでの人材募集の傾向について概略を述べました。

これらの業界は本来であれば人材の募集は限られた数しかない業界ですが、未曽有のお金余りの状況によってファンドレイズが好調な会社が多いこともあって、人材の募集がかつてないほど拡大しています。

募集が増えていることは紛れもないチャンスですが、かと言って採用されやすい訳ではありません。気軽に応募してあっさりと1次面接で不合格になる人は非常に多いのも現実です。その理由で最も多いのは「仕事への理解が不十分で、志望動機が不明確」というものです。その他、面接担当者が投資案件について議論をしようとしても、応募者が新聞に掲載されているレベルの投資案件すら知らなかった、という話もお聞きします。

個人が転職を成功させる為に必要なことは大きくは2つです。

1つは自己理解です。そもそも自分は仕事を通じて何を成し遂げたいのか。どんな価値観を持っているのか、ということです。
もう1つは仕事への理解です。その仕事の内容、ビジネスモデル、業界の理解です。

この2つがしっかりとしていれば、自分が大切にしたい価値観を満たす要素がその仕事にあるのかどうか分かりますよね。故に、志望動機も明確であるはずです。

投資ファンドへの転職では、漠然と希望するのではなく十分な準備が必要です。
自分自身が大切にしている価値観が何か、そもそも何をやりたいのか、自己理解を明確にしましょう。そして、その仕事への理解を深めます。この2つがそろって初めて面接での質問に答えることが出来て、充実した議論が出来るのです。

投資ファンドへの転職に興味があるならば、自己理解と仕事への理解を十分に深めた上で、応募しましょう。その為の具体的な準備の相談や募集案件の情報収集については、いつでもご相談下さい。



山本恵亮


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

<お役立ち情報(グループ会社Webサイト等)>

・週一でコラムを配信しています。

山本恵亮のコラム

ツイッター


・参考図書:

PEファンド(バイアウトファンド)の仕事を理解する為の参考図書一覧

投資銀行の仕事を理解する為の参考図書一覧

・自己分析用オンライン・キャリアデザイン・ツール:

働きがいある仕事を見つける「八つの原則」(自己分析編)



取締役山本 恵亮 / Keisuke Yamamoto
【経歴】
同志社大学商学部卒。大手人材サービス会社にて金融とIT業界を担当後、渡米。在米のコンサルティング会社で、人材採用支援、人事コンサルティング、そして新規事業の立ち上げを事業開発マネージャーとして推進し、北米での事業拡大に貢献。2004年4月アンテロープ参画、翌年同社取締役。PEファンド(バイアウト)を中心に、VC、M&A、コンサル、投資先企業の経営人材、また組織立ち上げ期におけるコアメンバー採用の支援も強み。1級キャリアコンサルティング技能士。

【担当領域/実績】
専門はPEファンド(バイアウト)、VC、エンゲージメントなど投資ファンド、投資先の経営人材など。20年のエージェント経験で培われた層の厚いネットワークを有し、業界トップから新鋭企業まで数百名に及ぶ転職を支援してきた。水面下で流通する求人案件の提案から、選考対策、希望職種の明確化も含め丁寧な支援を行っている。