投資の世界に長く関わるという選択肢

2026-02-18 執筆者:阿部 加奈子

転職相談を受けていると、「投資に近い場所でキャリアを築きたい」というご相談を多くいただきます。一方で、必ずしも全員が投資担当者やキャピタリストを目指す必要はありません。近年、長期的なキャリアという観点で注目されているのが、ファンドコントローラーという職種です。

ファンドコントローラーは、投資の意思決定を行うポジションではありません。しかし、ファンドという仕組みそのものを成立させ、投資が継続的に行われる土台を支える役割を担います。資金の流れ、投資家への説明責任、会計・税務・契約・ガバナンスなど、複数の専門領域にまたがりながら、ファンド運営が滞りなく進む状態をつくる存在です。

実際の転職市場を見ると、この職種に就いている方のバックグラウンドには一定の傾向があります。最も多いのは監査法人出身の方や公認会計士の方々で、ファンド会計や監査対応への親和性の高さから自然なキャリアの延長線上として選択されるケースが多く見られます。また近年は、金融機関や事業会社での財務・管理業務をベースに、入社後に実務をキャッチアップしながら未経験から挑戦されている方も多くいらっしゃいます。

この仕事の特徴は、「投資」と「経営管理」の中間に立つ点にあります。投資担当者が前に進めようとする意思と、投資家や制度が求める規律。その両方を理解し、現実的に成立する形へ落とし込む役割です。結果として、ファンドの運営構造、資金管理、意思決定プロセスに関与することになり、自然と経営管理の視点が磨かれていきます。

「組織としてお金がどう流れ、どの意思決定がどのリスクを生むか」を構造的に理解する力が養われます。ファンドコントローラーは、投資案件、投資家、経営陣という複数の利害関係者の間に立ちながら業務を進めるため、結果として経営に近い視点が求められる場面も多くなります。

実際のファンドコントローラーの方からも、キャピタリスト以上に多くのステークホルダーと関わることができる点や、投資成果が見えるまでに時間を要する投資職と比較して、運営面では1年単位で成果が見えやすい点にやりがいを感じているという声を伺うことがあります。

もちろん、華やかな仕事ではありません。成果が外から見えにくく、評価も短期的には分かりづらい側面があります。しかし、VC・PE業界が拡大し、LP投資家からの透明性や管理体制への要求が高まる中で、この領域の専門性は確実に重要性を増しています。
投資の世界において、「誰が意思決定をするか」と同じくらい、「どう運営されているか」が問われる時代になっているからです。

また、ファンドによって差はあるものの、投資案件の進行状況に業務が大きく左右される投資職と比較すると、業務の見通しが立てやすい側面もあります。そのため、実際には子育て世代を含め長期的に働き続けている方も多く、ワークライフバランスの観点からも評価されるケースが見られます。

なお、報酬体系についてはファンドやポジションによって大きく異なります。ベース給与中心のケースもあれば、ファンド全体の成果に連動したインセンティブ設計がなされている場合もあり、ミドル部門であってもキャリー(成功報酬)を受け取れる仕組みを採用しているファンドも存在します。

年収水準も一律ではなく、経験年数や担当範囲、ファンド規模によって異なります。シニアポジションでは1000万円台後半で募集がかかることもあります。いずれにしても短期的な成果よりも、長期的な専門性や信頼の積み重ねが評価に反映されやすい点が特徴です。

キャリアは必ずしもフロントに立つことだけが正解ではありません。投資の裏側から全体を理解し、将来的に経営管理やCFOとして価値を発揮する道もあります。

もし、短期的な案件の積み重ねではなく、長期的に価値が残る仕事をしたいと考えているのであれば、ファンドコントローラーという選択肢も、一度考えてみる価値があるのではないでしょうか。

◆実際の転職市場の動きについて

ここ最近、VCやPEファンドにおいてファンド管理・ファンドコントローラー領域の採用相談は着実に増えています。既存ファンドにおける投資の長期化による増員や運用の高度化、新規ファンドの立ち上げに伴い、専任でファンド運営を担える人材へのニーズが高まっているためです。

特に近年は、投資パフォーマンスだけでなく、ファンド運営体制そのものがLPから評価対象となるケースも増えており、管理機能の専門性がファンドの競争力に直結する場面も見られるようになっています。

実際にアンテロープでも、監査法人や金融機関での財務・融資・管理業務経験を持つ方が、VCやPEファンドのファンドコントローラーとして転職される事例が増えています。また、ファンド業務自体は未経験ながらも、関連する財務・管理領域での経験を評価され、入社後に実務を習得しながら活躍されているケースも見られます。

現在も、独立系VC、CVCを中心に、ファンドコントローラー関連のポジションは常時15~20件程度動いています。表に出にくいポジションでもあるため、もしご関心があれば個別に市場動向も含めてお話しできればと思います。

阿部 加奈子 / Kanako Abe
【経歴】
立命館大学政策科学部卒。地域活性化団体での経験を通じて人々の挑戦を応援できる仕事に就きたいと思うようになり、新卒で東京海上日動に入社。代理店経営支援担当として最適な保険プログラムの提案、経営課題の解決を行う。その後、モビリティ部門にて、ディーラーの経営層や現場の社員と共に自動車ユーザーに保険を提供するビジネスモデルを構築。仕事を通して一人ひとりと真剣に向き合い成長を支援していくことに楽しさを感じ、人材業界に転身することを決意。真に候補者の想いに向き合うことができるエージェントがアンテロープであると確信し参画。

【担当領域】
金融領域担当。PEファンド、VC、資産運用会社(アセットマネジメント)、プライベートバンク、不動産金融、グローバルマーケッツ、投資銀行等。金融業界への転職だけでなく、スタートアップ企業や事業会社への転職も支援。アンテロープのネットワークと高い専門性を武器に、候補者のご志向にあったポジションをご提案。