なぜ今、コンサルファームは事業会社出身者を採用するのか

2025-04-30 執筆者:池端 優美

コンサルティングファームといえば、戦略系ファームや総合ファームを中心に、ハイレベルな課題解決を行うプロフェッショナル集団として知られていますが、実は、近年は事業会社出身者、特に経営企画・事業企画経験者の採用が急増しています。
なぜ、今このタイミングで事業会社出身者へのニーズが高まっているのでしょうか。背景を整理しつつ、どのような人材が特に求められているのかを考察します。


▼コンサルティングニーズの変化

市場環境の大きな変化に伴い、クライアント企業が求める支援内容にも大きな変化が生まれています。特に、以下のような要素がクライアントニーズを押し上げています。

・産業構造の変革と競争環境の激化
・デジタル基盤を活用したビジネスモデルの再構築
・AI技術(生成AI含む)の急速な進展と実装ニーズの拡大
・サステナビリティ経営・ESG対応の加速
・新規事業創出および既存事業のリインベンション(再構築)

こうした状況下で求められるのは、戦略を描くだけでなく、実行フェーズまで伴走できるパートナーです。この変化が、事業会社出身者へのニーズ拡大に直結しています。


▼なぜ事業会社出身者が評価されるのか?

このようなニーズの変化を受け、コンサルファームが求める人材像にもシフトが生まれています。事業会社出身者、特に経営企画・事業企画領域で経験を積んだ人材が好まれる理由は、大きく3点あります。

1. 経営視点と現場感覚のバランス
経営企画・事業企画部門に在籍する方は、「事業全体を俯瞰する視点」と「具体的な実行プランを描く力」の両方を実務の中で磨いてきています。
単なる理論ではなく、事業のリアリティを理解しているため、実行可能な戦略提案ができる点が大きな強みです。

2. データドリブンな意思決定支援スキル
経営企画業務では、定量データ(売上、利益率、ROICなど)を分析し、経営判断に資する資料作成やシナリオ提案を行うことが求められます。
この「データをもとに仮説を立て、ストーリーを組み立てる力」は、コンサルティング業務と非常に親和性が高く、即戦力として期待される要素となっています。

3. プロジェクト推進力と巻き込み力
経営企画・事業企画では、複数部門をまたぐプロジェクトをリードする場面も多く、社内外のステークホルダーを巻き込んで動かす経験を積んでいます。
クライアントワークが中心となるコンサルティング業務では、「提案するだけでなく、関係者を動かして成果に導く力」が極めて重要視されており、この点でも事業会社出身者への評価が高まっています。


▼実際の採用動向

実際に、複数の大手コンサルファームでは、中途採用者の3~4割程度が事業会社出身者となっており、特に経営企画・事業開発・事業管理系職種からの採用事例が目立っています。
また、ポジションも以前のようなアナリスト層だけでなく、シニアコンサルタント~マネージャークラスまで幅広く門戸が開かれています。


▼まとめ

経営企画・事業企画領域で培ったビジネススキルは、コンサルティングファームにおいても確実に通用します。未経験であっても、十分に競争力のある存在となり得ます。
むしろ、現在の市場ニーズに照らせば、「事業運営のリアルを理解している人材」は、これからのコンサルティング業界で求められているとも言えます。キャリアの選択肢を広げる一環として、コンサルティングファームへの挑戦を視野に入れてみるのも、理にかなった戦略と言えるでしょう。

事業会社からのキャリアチェンジを検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。ご自身に最適なキャリアパスを一緒に考えるお手伝いをいたします。

池端 優美 / Yumi Ikehata
【自己紹介】
早稲田大学商学部卒。大手人材エージェントにて、主に国内大手企業を中心に消費財メーカー、不動産、IT等、幅広く担当しキャリア採用に関するコンサルティングを実施。
事業企画や経営企画等のバック・ミドルオフィスのポジションにて大手事業会社へのご支援実績も多数。IT領域への支援にも強みを持ち、これまで累計400名以上の転職支援に携わる。
その後、プロダクト開発部門にて新規サービス企画に携わり、HR関連のプロダクト開発に尽力。キャリアに前向きに取り組む個人の方の長期的なキャリア支援に従事したいという考えからアンテロープキャリアコンサルティングに参画。

【担当領域/実績】
コンサルティング業界担当。コンサルティングファーム全般(戦略・総合・シンクタンク・IT・ブティックなど)を担当。
これまでの経験を活かし、第二新卒や事業会社(CxO、経営企画、M&A、ファイナンス、ITなど)へのポストコンサルの方々の事業会社の支援にも強みを持つ。
自身の転職の経験から、人生において納得感のある意思決定のサポートを心掛けている。