PEファンドで求められる人材

2015-03-25 執筆者:加藤 浩

このところ連日のように「○○ファンドによる買収」という記事が新聞紙面を賑わせていますが、PEファンドは転職先としても依然、非常に根強い人気があります。では、どのような人材が求められているのか、そしてどのような人材が実際に活躍されているのかについて、最新のトレンドを交えてお伝えします。

PEファンドの募集要項で典型的なのは「投資銀行出身者(投資・M&Aアドバイザリー経験者)」と「戦略コンサルティングファーム出身者」の2パターンです。特に求人の中心でもある若手のアソシエイト層の場合は、必ずと言ってよいほど出てくるワードです。特にこの数年の流れとしては、より前者(投資銀行出身者)を求める傾向が強くなっています。

一方、各ファンドの採用責任者の方々に「なぜ投資銀行や戦略コンサル出身者が良いのか?」という質問をすると「コーポレートファイナンスの基本を理解している」「ビジネスの基本を理解している」「新しいことを素早く習得できる」などの返答が多く、そもそも即戦力として期待しているわけではないことが浮き彫りになってきます。中でも最も重要なのは、実は「新しいことを素早く習得できる」というポテンシャルの部分です。

どのファンドも基本的には、ソーシングから始まる買収プロセス、投資後のバリューアップ、そしてEXITと、全てのプロセスを若手のうちから経験します。同業のファンド出身者でない限り、これらの業務を即戦力としてこなせる人材はいないわけです。更に言うと、投資案件ごとに対象となる業界も違い、常に新しいことにキャッチアップしていく必要があります。時間的に厳しい制約がある中で進めるファンド業務では「吸収力の速さ」が最大のキーになってきま
す。ハイポテンシャル人材の獲得という観点から、結果として内定者に投資銀行や戦略コンサル出身者が多いのは事実ですが、それ以外のバックグラウンドでもPEファンドへ参画した方は数多くいらっしゃいます。

PEファンドへの入社は非常に門戸が狭く、たとえ投資銀行出身者であっても、場合によっては競争倍率が数十倍に上ることもあります。最後の決め手は当然ながら「人物面」です。ともに働くメンバーとの相性はもちろん、ベタですがファンドという仕事への熱意がもっとも合否を左右します。上記のように新しいことを貪欲に吸収していくこと、泥臭い場面でも愚直に遂行していくことができるかどうかは、最後はその人の仕事への熱意で決まってくるからです。ま
た、ファンドの仕事は様々なステークホルダーを巻き込んでいかなくてはなりませんし、投資先の社長はヘタをすると自分の父親くらいの年齢だったりします。そういった場面でも信頼を得られるかどうかといった「人間性」も、当たり前のことながら非常に重視される項目です。

まとめると、ファイナンスやビジネスの基礎がしっかりした学習能力の高い人材、かつ様々な人達から信頼を得られる人間性を兼ね備えた人材。ファンドの仕事が“総合格闘技”と言われる所以ですね。採用側のわかりやすさから「投資銀行系人材」等のワードは今も出てきますが、ハードルの高さは変わらないとしても、今後はもっとターゲットが広がってくると思います。

加藤 浩 / Hiroshi Kato
【経歴】
上智大学法学部卒。大手メディア企業にてアジアを中心とした海外営業に10年間従事。その後、コンサルティング会社で人事領域をフロントラインで広くカバーする中、数々の優秀な人材と接触。プロフェッショナルのキャリア構築をこの手で支援したいとの強い思いから、2007年にアンテロープへ参画。

【担当領域/実績】
専門はPE投資ファンド、M&Aアドバイザリー、戦略系・総合系・再生系コンサルティングファーム。PEファンド等、マネージングディレクタークラスと独自のネットワークがない限り応募をすることすら難しい業界にも、豊富なパイプラインを持つ。情報提供はもちろん、コンサルファームのケース面接対策はじめ、キャンディデートを文字通りハンズオンで支援することにより、これまで経営トップから若手人材まで数百名の方々の転職を成功に導いてきた。