コロナ禍における最新の転職市場状況 ~ PEファンド編

2020-08-14 執筆者:加藤 浩

クロスボーダーのM&A案件を多く手掛ける外資投資銀行ほどではないですが、PEファンド業界も新型コロナウイルスによる影響を大きく受けています。今回は、PEファンド業界での転職市場状況が実際のところどうなのかをお伝えします。

結論から言いますと、春頃まで20社以上は募集がありましたが、募集社数は3割程度減りました。現在募集しているところも、以前に比べると採用のハードルを上げています。

PEの募集開始でよくあるパターンは、新しいファンドを立ち上げる(例:現在運用しているのが2号ファンドなら新たに3号ファンドを立ち上げる)ので、人材を追加募集するというものです。ファンドサイズは通常1号よりも2号、2号よりも3号と大きくしていくことが多いので、その分得られる管理報酬も増え、社員を増やせるようになるというパターンです。

しかし、コロナの影響でそのファンドレイズのスケジュールがずれ込んだり、既存の投資先の業績が悪化し(例:外食チェーン)、まずはその改善に集中したりする中で、採用計画自体が先延ばしにされたりしています。

一方、4月から6月頃まで採用凍結していたPEで、この7月8月以降になってから募集再開し始めたところもいくつか出てきました。これは新しいファンドレイズへ向けての募集ではなく、元々予算としては持っていて、ある程度アフターコロナの見通しが見えてきた中で採用を再開したというパターンです。このパターン、実は結構あります。

では、今後どうなっていくのか。経済マーケットと転職マーケットにはタイムラグがあるのでもう少し時間がかかると思いますが、採用は間違いなく増えていきます。

リーマンショック前後など過去の事例を見るとわかるのですが、企業のバリュエーションが高い時期は当然ファンドにとってなかなか投資がしにくい時期です。今後は、再生案件に限らずファンドが投資しやすくなる案件が増えていくので、そこを見据えて着々と準備をしているファンドも多いです。ファンドの社会的意義もさらに増してくるということですが。

一点、PEへの転職を考える際に最も重要なポイントを。それは、上述のような大きなトレンドを捉えることも大事なのですが、何よりも動く「タイミング」です。コロナ禍にあるこの時期でも各社別に細かく見ていくと、例えば今はこのコロナ禍でとりあえずは既存投資先の経営改善に力を注ぎたいので、出来ればコンサル出身者が欲しい、といったようにそれぞれの状況に応じたかなり細かい採用ニーズがあります。自分の力が生かせる先はどこなのか、タイミングを見計らってアプライしていくのがオファー獲得のカギとなります。

加藤 浩 / Hiroshi Kato
【経歴】
上智大学法学部卒。大手メディア企業にてアジアを中心とした海外営業に10年間従事。その後、コンサルティング会社で人事領域をフロントラインで広くカバーする中、数々の優秀な人材と接触。プロフェッショナルのキャリア構築をこの手で支援したいとの強い思いから、2007年にアンテロープへ参画。

【担当領域/実績】
専門はPE投資ファンド、M&Aアドバイザリー、戦略系・総合系・再生系コンサルティングファーム。PEファンド等、マネージングディレクタークラスと独自のネットワークがない限り応募をすることすら難しい業界にも、豊富なパイプラインを持つ。情報提供はもちろん、コンサルファームのケース面接対策はじめ、キャンディデートを文字通りハンズオンで支援することにより、これまで経営トップから若手人材まで数百名の方々の転職を成功に導いてきた。