VCで求められる人材(PEとの違い)

2021-04-30 執筆者:加藤 浩

ベンチャーキャピタル(VC)を志望する方が最近特に増えてきていますが、求められる人材要件への理解が人によってかなり異なるので、ぜひここで一度まとめておければと思います。特にPEファンドと一緒に、もしくはその延長で考える方も多いので、PEとの違いを示しながらお伝えします。

PEの方は人材要件が分かりやすく、ざっくり言うとメンバーの約7割が投資銀行出身者(M&A経験者、FAS含む)で、残りの約3割が戦略コンサル出身者や商社での投資経験者などです。逆に言うと、それ以外のバックグラウンドで未経験から入っていくことはかなりハードルが高いです。

一方、VCの場合は企業によってかなりバラバラです。大きく分けると4つ。1つ目はPEのように投資銀行/戦略コンサル出身者(ただ、意外と少ない)。2つ目は技術系バックグラウンド人材(ヘルスケアの特定分野に精通している、IoTに詳しい等)。3つ目は金融機関での上場支援経験者。4つ目は起業経験やネット/IT業界での経験者。

よく「VCを目指すのに財務モデリングスキルは必要なのか?」という質問を受けるのですが、これはほぼ必要ないです。PEと違って、投資先企業が当然小さいので、複雑な財務モデルを組むこと自体が(PEに比べると)求められないのです。求められるのは一言でいえば「対象企業のビジネスの将来性を見極める力(経営者を見極める力も含む)」です。ゆえに、技術系VCであれば当然技術を見極める力が求められますし、ネット/IT系VCであればその分野に精通している方が有利になるわけです。経営者の人間力を見極めるような、定性的な力も求められます。

冒頭に述べたように、PEの延長でVCを捉える(単純に投資サイズが小さくなると考えている)方もいらっしゃるのですが、そもそもPEとVCではリスクの取り方がまったく異なります。PEは極論、100件投資するとしたら100戦100勝することを目指します。着実にIRR15~20%という成長が見込める会社をいかに見つけるかがポイントです。これに対してVCは最終的にうまくEXITできる投資先が一部であっても、IRR30~60%(投資ステージによって当然異なる)というハイリターンを求めます。リスクの取り方が違えば、当然業務内容も変わってきますし、求められるスキル自体が異なってきます。

加えて、VCの方がPEよりも組織がフラットです。PEであればMDやディレクターの方が案件を持ってきて、それをVPやアソシエイトが執行することが多いですが、VCは基本的にアソシエイトであっても案件ソーシングをしなくてはなりません。従って、ジュニアでも起業家イベントに参加したり、最初から自分でネットワークを広げられるフットワークの良さが求められます。

こういった仕事のイメージ、求められる要件を把握しつつ、ご自身の志向性にあった業界を見つけていっていただきたいと思いますし、そのサポートはいくらでも弊社でいたします。ぜひご相談ください。

加藤 浩 / Hiroshi Kato
【経歴】
上智大学法学部卒。大手メディア企業にてアジアを中心とした海外営業に10年間従事。その後、コンサルティング会社で人事領域をフロントラインで広くカバーする中、数々の優秀な人材と接触。プロフェッショナルのキャリア構築をこの手で支援したいとの強い思いから、2007年にアンテロープへ参画。

【担当領域/実績】
専門はPE投資ファンド、M&Aアドバイザリー、戦略系・総合系・再生系コンサルティングファーム。PEファンド等、マネージングディレクタークラスと独自のネットワークがない限り応募をすることすら難しい業界にも、豊富なパイプラインを持つ。情報提供はもちろん、コンサルファームのケース面接対策はじめ、キャンディデートを文字通りハンズオンで支援することにより、これまで経営トップから若手人材まで数百名の方々の転職を成功に導いてきた。