PEファンドの志望動機

2024-10-30 執筆者:加藤 浩

PEファンドの面接でも必ず聞かれる志望動機。PEはコンサルタントや投資銀行以上に中長期でのコミットメントが求められるため、志望動機の中身がより重視されます。

なぜ、より強いコミットメントが求められるのか。

ひとつのファンドを取ってみても運用は5~10年とかなり長いスパンで行われます。最低でもこの運用期間中はコミットしてもらう必要がありますし、人が多く出入りするようなファンドは資金の出し手である機関投資家等から見てネガティブに映るためです。

PEファンドを受ける前に登録者の皆様に志望動機を整理いただくのですが、8割くらいの方がアドバイザリー/コンサルティングの限界、投資先の経営に関与したい、ということに留まってしまいます。
「なぜファンドの立場で投資先の経営に関与したいのか?」と聞くと、株主の立場なら人を動かしやすいから、取締役で入れるから、などの回答が返ってきます。ファンドの面接官からしたら「そんな甘い世界じゃないよ」の一言で終わってしまいます。

「投資先のバリューアップを通じて日本経済を良くしたい」みたいな志望動機もよく聞きます。
これ自体は間違いでもないですし志も高くて良いのですが、前提として「PEファンドのクライアントは誰か?」ということがスッポリと抜けている方が多いです。PEファンドのクライアントは投資先企業ではなくファンドに資金を出している投資家です。投資家にいかに多くのリターンを返すかがファンドの最大の任務です。
例えば、今日10億円で買収した企業を明日20億円で売却できるとしたらどうするか? 絶対に売りますよね。機関投資家により多くのリターンを返すことで経済を活性化していく、というストーリーであれば筋は通ります。もっとも、そんな簡単に高値で売却などできないので、必死になってバリューアップするわけです。

なぜPEファンドか、が整理されたら次に個社別に「なぜA社か」をまとめるわけですが、ここは投資サイズや投資対象(業界というより、例えば再生案件まで手掛けるか等)、投資先のバリューアップのスタンスなどを軸に考えるのがお勧めです。

各社の志望順位づけをする際に"Tier"みたいなものを気にする方がいますが、投資銀行やコンサルティングファームのような明確な順位づけみたいなものはないですし、ラージキャップだからやっていることがすごい、という世界でもありません。
しいて言えば投資実績・リターンなどを判断軸の一つにするのはありですが、新興のファンドでもそのほとんどが別ファンドで実績を出してきた優秀なメンバーが立ち上げているものなので(そうでなければファンドレイズがそもそもできない)、実際には差がありません。

よく、志望動機のサンプルが欲しいというご要望をいただくのですが、志望動機は「何を言えば正解か」という答え探しを始めるとだいたい間違った方向へいきます。
当たり前ですが自分の志望動機は自分自身の中からしか答えは出てこないですし、他人の志望動機を真似したところで言葉にリアリティや深さがなくなるので薄く聞こえてしまいます。
もちろん、自分の考えを整理するための「壁打ち」はエージェントが介在する価値の一つでもあるので、お気軽にご相談ください。

加藤 浩 / Hiroshi Kato
【経歴】
上智大学法学部卒。大手メディア企業にてアジアを中心とした海外営業に10年間従事。その後、コンサルティング会社で人事領域をフロントラインで広くカバーする中、数々の優秀な人材と接触。プロフェッショナルのキャリア構築をこの手で支援したいとの強い思いから、2007年にアンテロープへ参画。

【担当領域/実績】
専門はPE投資ファンド、M&Aアドバイザリー、戦略系・総合系・再生系コンサルティングファーム。PEファンド等、マネージングディレクタークラスと独自のネットワークがない限り応募をすることすら難しい業界にも、豊富なパイプラインを持つ。情報提供はもちろん、コンサルファームのケース面接対策はじめ、キャンディデートを文字通りハンズオンで支援することにより、これまで経営トップから若手人材まで数百名の方々の転職を成功に導いてきた。