転職活動 キメに入る時の決断

2014-11-26 執筆者:佐藤 史子

いよいよ、今年も残すところ1カ月ですね。年内に転職活動を完了させるべく、ラストスパートをかけられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

コンサルティング業界は全体的に、業績好調の波が続いていて、人材不足が各社にとって大きな課題になっています。採用意欲は引き続き旺盛で、私たちがご支援する方々も、複数の会社からオファーを獲得されて、どこがご自身のネクストキャリアにふさわしいか、嬉しい悩みを抱える方も少なくありません。こういうご相談に乗れるのは、私たちキャリアカウンセラーにとっても、嬉しく、励みになる瞬間です。

ご自身にとって最善の転職先を選ぶ時、判断基準は当然ながら人によってかなり違いが出ます。自分の成長、仕事のやりがい、人間関係のよさ、年収や社会的な立場、ワークライフバランスなど、転職によって獲得したいもの、モチベーションの源泉になるものは千差万別で当たり前。私たちは、候補者の方々が長期的に納得のいく選択をしていただけるよう、出来るだけ多くの適切な情報をお伝えしたり、価値観を整理するお手伝いをするのですが、最後はご自分にとっての判断軸が何になるか、決断を委ねることになる訳です。

個人が自らのキャリアを選択する時に、一番大切な価値観や欲求を「キャリア・アンカー」と言います。アメリカの組織心理学者 エドガー・シャインが提唱した概念です。「キャリア」×「アンカー(=錨)」を掛け合わせ、キャリア選択の際の心の錨を見極める、という考え方です。ご参考までに、キャリアアンカーは以下8つに分類されます。

・管理能力 - 組織の中で責任ある役割を担うこと。
・技術的・機能的能力 - 自分の専門性や技術が高まること。
・安全性 - 安定的に1つの組織に属すること。
・創造性 - クリエイティブに新しいことを生み出すこと。
・自律と独立 - 自分で独立すること。
・奉仕・社会献身 - 社会を良くしたり他人に奉仕したりすること。
・純粋な挑戦 - 解決困難な問題に挑戦すること。
・ワーク・ライフバランス - 個人的な欲求と、家族と、仕事とのバランス調整をすること。

ご自身だったら、どこに当てはまりそうですか? 人は自分のキャリアアンカーを見極め、キャリアを選択するのがよいと言われていますが、実際に上記の中から(もしくは自分にとって大切にしたいいくつかのパラメーターの中から)、心の錨になるものを見つけていこうとすると、迷いも生じて結構難しい作業であると思います。

こういう場面でよく、私自身もかつて転職をした時にお世話になったビジネススクールの先生の言葉を思い出します。あれこれ考えていた私に、彼は「おそらくどんな環境に転職をしても、相当な困難にぶつかることがあると思う。夜も眠れないぐらいのプレッシャーに押しつぶされそうになった時に、いったい自分が何に希望を見いだすか。具体的にイメージしてみるように」とアドバイスしてくれたのです。そのうえで、その希望になるものが転職先にあると信じられるなら、迷うことはないと背中を押してくれました。今にして思うと、彼は私が自分のキャリアアンカーを見つけるためのヒントを与えてくれていたのだと思います。

転職活動のクロージングの場面での決断は、誰にとっても難しいものだと思います。所属企業を通じた社会的な見られ方や、家族の事情など、気になるポイントもたくさん出て来ます。人生を決める大切な瞬間で、皆さんがそれぞれの心の錨を見つけるための力になることが出来るのは、この仕事の醍醐味の一つだと思っています。

佐藤 史子 / Fumiko Sato
【経歴】
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒。新卒で大手新聞社に入社し、取材記者として勤務。その後大手総合人材サービス会社を経て2008年より現職。人材業界でのキャリアは通算15年以上にわたる。

【担当領域/実績】
コンサルティング業界担当。毎年年間200名以上の候補者の転職やキャリア形成をサポート。外資系戦略コンサルティングファーム、総合系ファーム、会計系財務アドバイザリーファームを中心に業界でのネットワークを広く持ち、現役コンサルタントの方々との日々のコンタクトを通じて業界の生の情報に触れ、コンサルティング業界の最新動向やキャリア形成に関する知見を磨く。これらをソースにした的確な転職アドバイスに強み。大手ファームへの転職支援はもちろん、ポストコンサルの方々のファンドや事業会社のコアポジションへの転職支援実績も多数。