コンサルティングファームの卒業適齢期

2021-10-01 執筆者:佐藤 史子

「コンサルティングファームを卒業する最適なタイミングについて教えてください」

「どのくらい経験を積んだら一人前のコンサルタントと見なされるのでしょうか」

これらは、戦略ファーム志望の方からとてもよく聞かれる質問です。多かれ少なかれファームを卒業した後のキャリアを意識しながら転職活動に取り組まれている皆さんにとっては、ご自身にとって一番有利な「卒業」のタイミングを掴みたいのは当然ですし、入社前から中長期的な展望を持ってコンサルタントとしてのキャリアをスタートさせるのは有益なことと思います。

最近はポストコンサルタントのキャリアもこれまで以上に多様化していますし、当然その方のライフステージや人生/仕事に求める価値、やり遂げたいことによって次の転職の適齢期は変わってくるのですが、そうした個別の事情を敢えて取り除き、戦略コンサルタントとしての経験値を最大化できるタイミングはどこかと聞かれたら、やはりマネージャーを経験した後、だと私は思います。

マネージャーになると、プロジェクトの現場の責任者を務めます。解のない経営課題に対して自分の仮説でプロジェクトを設計し、クライアントと時には対峙しながら信頼関係を構築し、若手のスタッフも上手く使いながら、クライアントが納得するような結果にプロジェクトを導いていく訳です。この過程で、経営人材として課題解決をする際に必要な力を自然と身に付けているということですね。

実際、現役のコンサルタントの方々から「戦略コンサルタントとして一人前と見なされるのは、マネージャーになってから。プロジェクトの一部ではなく全体の設計をできるるようになって、やっと仕事の面白さが実感できた」とのお話をよく伺います。以前、とあるトップファームに在籍されているマネージャークラスの方は「マネージャーになってやっとヒトになれた。下のメンバーは、2軍、球拾い扱い」と冗談まじりに仰っておりました。

様々な求人を見ていても、事業会社で一つのサービスや事業を責任を持って運営し、複雑なステークホルダー同士の関係を調整し、リーダーシップを発揮できなければ務まらないようなコアになるポジションでは、マネージャー以上の経験者を求めています。PEファームで投資後に投資先企業のバリューアップを担うような役割もしかりです。多くの場合求められるのは、投資後の改革のプランを自ら設計し、経営者を動かして実行できるレベルの人材で、必然的にマネージャー以上の経験者が採用されていきます。ファームを目指す多くの方が期待する、ポストコンサルとして費やしてきた時間に対するリターンの大きい転職を実現するための一つの目安になるのが、プロジェクトの現場で責任を持って運営した経験の有無なのだと思います。

もちろん、経営人材になるばかりがポストコンサルのキャリアではないですし、スタッフレベルのうちにスーパーハイポテンシャルな若手として転職をする道もまったく否定するものではありません。最近はスタートアップやベンチャーキャピタルなど、平均年齢が若い業界で、若手のコンサル出身者がコアになるポジションで活躍されるケースも増えてきています。

いずれにしても、コンサルティング業界への切符を手にした瞬間に、必然的にその先のキャリアを考えることになる訳です。ご自身の卒業後のイメージや仕事や人生で何を求めるか、定期的にアップデートしておくことは非常に有益ですし、そのために多くのポストコンサルの方のキャリアをご支援してきたエージェントとしてお力になりたいと思っています。

佐藤 史子 / Fumiko Sato
【経歴】
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒。新卒で大手新聞社に入社し、取材記者として勤務。その後大手総合人材サービス会社を経て2008年より現職。人材業界でのキャリアは通算15年以上にわたる。

【担当領域/実績】
コンサルティング業界担当。毎年年間200名以上の候補者の転職やキャリア形成をサポート。外資系戦略コンサルティングファーム、総合系ファーム、会計系財務アドバイザリーファームを中心に業界でのネットワークを広く持ち、現役コンサルタントの方々との日々のコンタクトを通じて業界の生の情報に触れ、コンサルティング業界の最新動向やキャリア形成に関する知見を磨く。これらをソースにした的確な転職アドバイスに強み。大手ファームへの転職支援はもちろん、ポストコンサルの方々のファンドや事業会社のコアポジションへの転職支援実績も多数。