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第4回:一筋縄ではいかない事業再生、それは経営そのもの

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ビジネスリカバリーサービス ディレクター 齋藤 良司
PROFILE

1999年に大学を卒業後、都市銀行に入行。法人営業担当として実績を積み、2004年に実行支援型コンサルティングファームに入社。数々のプロジェクトに関わった後、2007年にPwCアドバイザリーの事業再生部門にジョイン、現在に至る。

目次
  1. -再生案件ではゴールが毎回変わる
  2. -M&A、ビッグデータ分析、グローバルが3つのトレンド
  3. -事業再生の根本は「困っている人を助けること」
M&A、ビッグデータ分析、グローバルが3つのトレンド
そういう仕事に取り組むにあたって、ご自身で大事にしていることはありますか。
齋藤
クライアントとともにぎりぎりまで一緒に悩む、ということでしょうか。通常の経営コンサルタントであればスパッと「これがあるべき姿です」「これが最適解です」と言い切ることが求められますが、私はむしろ時間切れとなる直前まで一緒に問題に向き合い悩み続けます。事業再生は、企業経営の中でも特に困難が伴うものだと思っています。経営者は教科書に書いてあるような分かり切ったことは重々承知の上で、それでもどうするか悩んでいる訳です。そんなクライアントに対し、言うべきことは言いつつも、私たちは経営者が厳しい経営判断をする後押しをするのみという、謙虚な姿勢を持って寄り添いたいと思っています。クライアントもやらなければいけないことはよく分かっていて、それでも出来ない、どうすればいいかわからないから私たちに支援を求めてきてくれているんですよね。例えば自分たちの社員をリストラする一方で私たちコンサルタントに多大なフィーを支払っている訳で、こちらにそういう姿勢がなければ信頼を得ることなどできないのではないかと思っています。
10年にわたって再生に携わってこられたからこそ、語れるエッセンスですね。それでは、ここ最近の案件のトレンドについて教えていただけますでしょうか。
齋藤
大きく3つあります。ひとつはM&Aが絡む案件、次にビッグデータ分析を改善施策につなげる案件、最後はクロスボーダー案件です。
昨今はどんな企業でも通常のコストカットや成長戦略立案はご自身でやられていて、それでもうまくいかないからどうしたらいいか、というご相談が非常に多いので、やはり自社単独ではなく他社と一緒になる、事業を切り出して他社とJV(ジョイントベンチャー)を組む、といったアライアンス施策を絡めないと業績改善が難しいというケースが多くなっています。そのため、私たちも事業再生を進める一方で、M&AのFA(ファイナンシャル・アドバイザリー)的な役割や、その後のPMIサポートも行うということが増えています。
M&Aのフローの一部ではなく、PMIまで全般をサポートしていくわけですね。
齋藤
私たちはそれまでの再生過程の中で、経緯や課題についてすでに十分理解しており、またクライアントとの信頼関係も醸成されているので、ある一部のディールだけ切り出し予備知識のない証券会社が新たに参画してくるよりは、ディールがスムーズに進むということがあります。もちろん、ある程度大きな規模の話になると、当社内のM&Aアドバイザリーやトランザクションの専任部門と協働したり外部の証券会社が担当したりしますが、そうでなければ私たちが自分たちだけでM&Aやグループ再編等をサポートすることがしばしばあります。
続いて、ビッグデータ関連の案件についてお聞かせください。
齋藤
特に小売や外食、アパレルといった昨今は総じて業況が厳しい業界で、そうした案件が増えています。これらの業界は、業界経験者やその道のプロの方が少人数でやるようなコンサルティングファームも多く、私たちのような総合系ファームは正直あまり得意な事業領域ではないと思います。ですが最近は、保有している膨大なPOSデータなどを消化しきれていないので、それらをしっかりと分析して改善施策につなげたい、というお客様のニーズが高まってきて、私たちにお声掛けいただくことが増えてきました。私たちはBIツールを使って店舗や製品ごとの採算などを非常に細かいメッシュで分析し、新たな施策を考えるお手伝いをしています。BRSのフォレンジック部門にはデータサイエンティストが何人か在籍しておりますので、彼らとジョイントして作業を進めることが多いです。
3つ目は海外案件ということですが。
齋藤
事業再生は比較的ドメスティックなビジネスですが、件数ベースで大体6~7割くらいは「海外」がイシューであるプロジェクトが占めています。日系企業の海外事業や子会社をどうやって改善するか、場合によってはどう撤退・縮小するかという案件は本当に多いですね。正しくは、こうしたニーズが足許で急に増えているというよりも、今までもあったが手つかずだったのではないかと認識しています。国内事業は勝手知ったるところで定期的な景気の後押しもあり自分たちだけで何とかやってこれたが、海外はずっと赤字を垂れ流していた。ただ国内事業も余裕がない中で、いよいよ海外をテコ入れせざるを得なくなってきた、というケースが多いと思います。あとは海外企業を買収するクロスボーダーM&Aも活発な中で、買収先あるいは海外企業とのJVを立ち上げたがうまくいっていない、というのもよくある話ですね。
可能でしたら、具体的なエピソードをひとつお話しいただけますか。
齋藤
先ほども少しお話したメーカーの案件では、海外市場からの撤退支援も携わったので印象に残っています。当初スコープは海外事業の事業デューデリジェンスをして事業性を判断したのみでしたが、そこからステークホルダーの意見を集約する、並行して撤退スキームを検討して、最終的に撤退実務支援まで行う、といったところです。一般的に、企業が海外に出るのは簡単なのですが、海外から退くのは本当に大変です。ほとんどの場合、進出したその国や経済特区から様々な補助金や税制優遇を受けているのですが、その裏では例えば10年間は撤退出来ない、毎年いくら域内投資をし続けないといけないとか、従業員は現地でこれだけ雇用し維持しなければならないといった非常に厳しい縛りがいくつもあって、これをキャンセルすると莫大な違約金が発生します。無理に進めると訴訟リスク等も発生するため、往々にして企業はとある国の事業が赤字だからと言って容易に撤退などできないのです。このクライアントも同様だったので、PwCの海外オフィスから会計、税務、法務のプロに集まってもらい、どうしたらキャッシュを一番減らさずに短期間で撤退できるかというスキームを検討しました。海外スタッフに現地で販売代理店や関係会社との交渉までもサポートしてもらい、何とかクローズ出来たという案件でした。

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2016年3月に行われたPwC Japanの組織改編によって誕生した、ディールアドバイザリーのプロフェッショナル集団。M&A戦略立案、エグゼキューション支援、事業再生、フォレンジック、インフラ構築などの幅広いサービスを、総合力を背景とした最適なチーム構成により提供している。

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