戦略系コンサルティングファームの仕事
企業が直面する経営上の課題を解決するための戦略策定やアドバイスを行うことを主要業務としているコンサルティングファームを、戦略系コンサルティングファームと呼びます。
こうしたファームが手掛けるのは、M&A戦略、グループ経営戦略、中長期の成長戦略など会社全体の経営課題を解決するための戦略策定支援をはじめ、新市場参入戦略、新規事業戦略、新製品開発戦略、人事戦略、マーケティング戦略、IT戦略などといった一部の事業や機能別の課題を扱うプロジェクトまで様々です。その他にも、投資ファンドや企業が投資をする際に行うビジネスデューデリジェンスなどを請け負うケースもあります。
戦略策定に必要な現状分析を行うために利用する思考の枠組み/ツールを「フレームワーク」と呼びますが、これらには戦略系コンサルティングファームを発祥としているものが数多くあります。代表的なものとして、7S(マッキンゼー)、PPM分析(BCG)などがあります。戦略コンサルタントは、これらの他にもSWOT分析や3C、5forces、そのファームが独自に開発したフレームワークなど、様々なものを状況に応じて使い分けながら、各種戦略策定を進めていくことになります。
クライアントにはあらゆる業界の企業、官公庁等公共機関が名を連ねますが、ある程度規模の大きい会社/組織であるケースが多くなります。この理由の一つとして、戦略コンサルタントの報酬の高さがあります。当然ファームごと、プロジェクトごとに異なりますが、1カ月あたり数百万円~数千万円という報酬になることも多いため、必然的にほとんどが資金力のあるクライアントからの依頼になるのです。
これまでの業界の変遷を見てみると、まず1886年にアーサー・D・リトル(ADL)が世界最初の戦略系コンサルティングファームとして立ち上がり、1914年にブーズ・アンド・カンパニー(現Strategy&)、1926年にマッキンゼー・アンド・カンパニーとA.T. カーニー、1963年にボストン コンサルティング グループ(BCG)、1973年にベイン・アンド・カンパニーがそれぞれ米国で設立されました。また、ヨーロッパでは1967年にローランドベルガーがドイツで設立されています。日本には1960年代以降、各ファームが進出しており、1966年にBCG、1971年にマッキンゼー、その翌年にA.T. カーニーが東京オフィスを立ち上げています。その後、1978年にADL、1981年にベイン、1983年にブーズ、1991年にはローランドベルガーも日本市場に参入しました。また、日本発の戦略コンサルファームとして、BCG東京オフィスにいたメンバーが1986年にコーポレイトディレクションを、2000年にはドリームインキュベータを立ち上げました。
日本においてはどのファームもおよそ100~500人の陣容で活動をしており、近年は積極的に組織規模を拡大しています。かつては、2~5人程度の少人数でプロジェクトに取り組むことが多いため、あまり多くの人員を必要とせず、むしろ選りすぐりの精鋭のみを集めようと考えるファームが大多数でしたが、デジタルトランスフォーメーションの重要性が高まるにつれてITエンジニアやデータサイエンティストといった専門的知見を持つ人材を求める傾向が高まっており、在籍するコンサルタントのバックグラウンドが非常に多様になってきています。また、プロジェクトの期間は3~6カ月前後で行われることが多くなります。中には2週間~1カ月程度の短いプロジェクトもあり、ビジネスデューデリジェンスなどは特に期間が短くなる傾向があります。
一方、戦略コンサルタントが扱うプロジェクトの範囲にも変化が見られます。以前は最終的なアウトプットとしてレポートを作成してプレゼンし、クライアント企業の取締役会で承認された段階でプロジェクトは終了、というケースがほとんどでしたが、現在はその戦略をどう実行するべきか、という部分まで踏み込んだ実行支援を行うケースが増えてきました。素晴らしい戦略があっても自社のみではどう実行してよいか分からず、そのままお蔵入りになってしまうということがないよう、実際に成果を上げるまで支援を求めるクライアントが多くなってきているのです。前述のフレームワークなど、従来のコンサルティングの知見が広く知られるようになり次第にコモディティ化していく中、こういった流れは今後も強くなっていくのではないかと考えられます。