ブレない物差しを持つ

2012-07-04 執筆者:佐藤 史子

先日、私の友人が某外資系コンサルティングファームから転職しました。この人はキャリアラダーを非常にアグレッシブに駆け上がってきた人です。海外MBAを卒業して、外資系メーカーに勤務した後、更なる成長のステージをコンサルティングファームに求めました。ここでも数々の実績を重ねて、異例のスピードでマネージャーに昇進。大型の戦略案件を次々にこなして、着実にファームでの実績を築いた後、今度は外資系の大手メーカーに、最年少ダイレクターとして招かれていきました。

おそらくはコンサルティングファームを目指す多くの方が思い描く、キャリアの成功事例だと思います。今回の転職活動もあっという間に完了させていて、面接を受けたのもほぼ内定した1社のみ。企業側も採用に苦慮していた超難関のポジションだったにも関わらずトントン拍子にプロセスが進んで、活動を始めてからサインまで1カ月もかかっていない様子です。

もちろん彼の転職活動をここまでスムーズに成功させた要因が、優れた実績や尊敬される人柄にあったことは間違いありませんが、能力の高さと同じぐらいプラスに働いたのが、彼が「迷いのない判断軸」を持っていたことだと私は思っています。転職に当たって、当初は彼も色々な希望を持っていたようですが、いざ転職活動に入ると自分にとってこだわるべきところとそうでないところの選別が実に明確で一貫していました。転職先に求めるものが明確だったゆえに、最初から選択肢を絞って効率よく走りきることが出来た訳です。また、彼の覚悟や決断力が早い段階で先方に伝わり、スムーズによい関係を構築出来たのだと思います。

現在、コンサルティング業界は特に若手の方を中心に意欲的な選考を行っており、転職活動をされている方にとっては、機会の多い環境になってきたと言えます。幸い複数のオファーを獲得されて、どこを選択すべきか、最後まで悩まれる方も多々いらっしゃいます。

前述の彼のケースは極端であるとしても「転職先に何を求めるのか」がはっきりしていることは納得の行く転職をするために不可欠だと思います。慣れた環境から外へ出る訳ですから、どこへ転職をしても予想外のことは起こります。転職先で相当なプレッシャーに耐えて、乗り越えなければならないこともあるでしょう。そんな時、いったいご自分が何に希望を見いだして乗り切るか、今一度しっかりと考えていただきたいと思います。活動が長期化すればするほど、判断の軸がブレてくることもあります。選択肢が多いほど、近視眼的になったり、目先のことに魅かれて決めてしまいたくもなることも当然あります。しかし、そもそもなぜ転職活動をしようと思ったのか、本音の部分で求めるものと転職先にあるものが一致しなければ、これから始まる長いキャリアライフを充実したものにすることは困難です。

そしてやはりこの自分なりの判断軸が早い段階で持てている方ほど、スムーズに転職先が決まっていると言えます。最初からご自分にとって適切な選択肢を絞ることが出来るため、無用な活動に時間を割くことがないのです。そして私たちキャリアコンサルタントは、皆さんが意思決定するにあたってご自分なりの物差しをお持ちいただくために、ご希望や価値観やビジョンを伺い、判断に必要な情報を提供すべく知恵を絞ります。お会いする候補者の方の活動の負荷を減らし、いかに最小限の時間で納得のいく転職先に巡り合っていただくか。自分のキャリアコンサルタントとしての力量が試される、通信簿の一つだと思っています。

佐藤 史子 / Fumiko Sato
【経歴】
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒。新卒で大手新聞社に入社し、取材記者として勤務。その後大手総合人材サービス会社を経て2008年より現職。人材業界でのキャリアは通算15年以上にわたる。

【担当領域/実績】
コンサルティング業界担当。毎年年間200名以上の候補者の転職やキャリア形成をサポート。外資系戦略コンサルティングファーム、総合系ファーム、会計系財務アドバイザリーファームを中心に業界でのネットワークを広く持ち、現役コンサルタントの方々との日々のコンタクトを通じて業界の生の情報に触れ、コンサルティング業界の最新動向やキャリア形成に関する知見を磨く。これらをソースにした的確な転職アドバイスに強み。大手ファームへの転職支援はもちろん、ポストコンサルの方々のファンドや事業会社のコアポジションへの転職支援実績も多数。