2020年の振り返りと上半期の不動産金融領域の人材動向

2021-02-26 執筆者:渡邉 一也

2020年は日経平均株価や東証REIT指数の動向よりも、コロナ感染者数速報の方が気になる方が多かったのではないでしょうか。私ども転職エージェントと呼ばれる業界においても、新型コロナウイルスの影響によって様々な動きが見られました。その中でも私が注力して担当している不動産金融領域ではどのような動きが見られたかについて、簡単に触れさせていただきたいと思います。

転職相談に来られる方のほとんどが、採用枠の縮小や新規参入企業の減少を心配され、転職の難易度について質問されることが多くありましたが、結果的には2019年から2020年にかけて採用は活発に行われました。

他のアセットタイプ(株式や債券など)の採用に縮小傾向が見られたのに対して、あまり大きな減少は見られず、この動きは2021年に入っても大きくは変わっていないというのが正直な実感です。これは2008年のリーマンショックのような世界的規模の金融危機と比較して、今回のコロナショックが各運用会社のバランスシートに及ぼす影響がさほどでもなく、依然として不動産投資マーケットには国内外から資金が潤沢に入り込んでいるという背景があるからだと思われます。

某外資系運用会社の投資運用部長にお話を伺っても、新型コロナ禍にあっても競争入札における入札の数は減っておらず、むしろ海外の運用会社の新規参入なども進む中で、積極的に投資実行を進めている運用会社もあるため、AUMの拡大に伴って優秀な人材のニーズはますます強まる傾向にあるそうです。

その流れに呼応するように、中堅から狙いを下げてアソシエイトやアナリストといった若手の方にも採用のチャンスが出てきております。さすがに不動産または金融どちらかの経験値は必要になりますが、ポテンシャル採用での転職成功事例も目立ちました。

実際に2020年に不動産金融領域へのポテンシャル転職を成功させた方の一例として、信託銀行の仲介部門やノンコースローンのレンダー、コンサルファームでのPMI担当、大手設計会社、不動産鑑定会社(鑑定士資格なし)、メガバンクでの監査担当、航空機リース会社のファイナンス担当、証券会社(管理部門)、PM会社の派遣スタッフ、ホテル・レストランの企画開発担当といったバックグラウンドの方が、ご自身の強みを発揮できる場として不動産金融領域への転職を果たしております。

必ずしも現職において不動産の運用に携わっていなくとも、やり方によっては十分に可能性があると思います。これまで転職について考える時間がなかった方も、リモートワークの普及によって自由が利くようになった時間を有効活用して検討をしてみてはいかがでしょうか。

今後、転職希望者の増加によって採用ハードルが高くなる可能性も踏まえ、企業から求められる人材になるためにしっかりと準備を行い、ご自身の長期的な市場価値を高めるためにどのようなマインドセットやスキルを持つべきか、常に念頭に置いてキャリアを考えていただきたいと思います。

私どもアンテロープでは短期的(2~3カ月以内)な転職の活動だけでなく、中長期的(半年~1年以上先)なキャリアの形成をお考えの方も歓迎しております。まずはご自身のキャリアの整理と、目指す方向性の部分をすり合わせするところからお付き合いをさせていただきます。こういう時期だからこそ、ぜひ一度ご相談に来られることをお薦めしております。

渡邉 一也 / Kazuya Watanabe
【経歴】
成蹊大学法学部卒。地域金融機関にて法人や個人顧客を担当。与信業務・受信業務を通じて10年にわたり地域の発展に寄与。その後、大手邦銀にて10年間、住宅ローンコンサルタントとして個人顧客ならびに業者向けセールスを行う。20年以上に渡り顧客に金融商品を提供しながら信頼関係の構築に注力してきた経験を、人財というもっとも重要なリソースをクライアントに提供することに注ぐべくアンテロープに参画。

【担当領域/実績】
銀行の金融市場部門、資産運用会社(アセットマネジメント)、不動産金融領域を中心に担当。金融業界でのキャリアをベースとしたネットワークで、幅広い年齢層の転職をサポートしている。
NIKKEI HR AGENT AWARDS 2019金融部門 受賞