VCの投資検討・ビジネスDDについて

2024-04-11 執筆者:太田 幸彦

アンテロープでベンチャーキャピタルやその投資先の経営人材のキャリパスを支援している太田です。

私がこの領域にフォーカスしている理由は、米国中心に様々なイノベーションが起きている中、日本企業が衰退の一途を辿っている現状に課題を感じているからです。そしてVC業界の担っている「日本の閉塞感を打開し、日本から新たな産業を作り出す」というビジョンに伴走し、人材支援を通して貢献していきたいと考えています。

さて、このコラムではVCの業務をバリューチェーンごとに分けてシリーズ化していまして、第2弾となる今回のテーマは「VCの投資検討・ビジネスDD」となります。

前回のおさらいとなりますが、VCのバリューチェーンを整理すると以下のようになります。

1)ファンド募集
2)ファンド組成
3)ソーシング
4)投資検討(ビジネスDD)←今回のテーマ
5)投資実行
6)経営支援・育成
7)EXIT(IPO/M&A)
8)投資家への分配

それでは、VCのビジネスDDについて見てみましょう。広義にDue Diligenceは「M&Aや組織再編を行う際に使われ、投資を行うにあたって、対象となる企業や売手企業の価値やリスクなどを調査すること」を指します。通常、投資においてDDはビジネス・財務・法務・税務・人事・IT等に分けられます。

私は人材支援の業務上、キャピタリストの方々が作成した投資家向けのプレゼン資料をよく目にします。その冒頭5~6ページくらいまでに必ず記載されているのが、このビジネスDDにあたるページです。多くの場合、このページには
・対象スタートアップのサービス内容
・主戦場となるマーケット(市場)
・マーケットの規模(約XXX億円、XX兆円など)
・競合他社やシェア
・今後の成長モデル
が記載されています。

VCが投資家等にプレゼンしている時点では既に初期段階の投資が実行されているケースがほとんどですが、遡るとキャピタリストの方々は投資検討時点で以下のようなストーリーに基づいて、ご自身の「投資のよりどころ」を見出していらっしゃいます。

・経営メンバー・チームはどうか?
・顕在化したマーケットあるか?
・市場の大きさは?
・マーケットフィットは?
・技術や特許は?
・競合は? ポジショニングは?
・ビジネスモデルは? 継続的に利益を産むか?
・財務状況は? Valuationは?
・EXITまでの筋道は?

さらに、これらの項目をもう少し深堀りして、
・経営メンバーを動かしている原動力・原体験は何か?
・何を解決しようとしているのか?
・それを成し遂げるだけのメンバーがいるか?
・もし、いないのであればキャピタリストとして人材面の支援ができるか?
・自分も同じチームに加わりたいと思えるか?
・マーケットにはその課題を解決したいと思っている人はいるのか?
・参入のタイミングは?
・製品が完成すれば売れるのか?(わかりやすいのは創薬やディープテックなど)
・もしくはゲームチェンジャーとして何を置き換えていくのか?
・事業モデルは収益を産める構造になっているのか?
・マネタイズはどうしていくのか?
・販売計画は妥当か? 人員・設備計画は?
・EXITまでの資金調達は?
・必要な資金調達の回数は?
・エクイティ以外の資金調達は可能か?
と考察を進めていき、最終的に数字にまで落とし込んでいきます。

株価算定(Valuation)については別の機会に触れていきますが、そこには上記の「事業モデル・事業計画」から「利益」「PER・類似企業の選定」「マーケットの相場観・方向性などのディスカウント」などの要素が大きく関わってきます。そして、VCの仕事は経営支援・バリューアップ、IPO・M&A時の株価算定、EXITへと向かっていきます。

ここまで「VCの投資検討とビジネスDD」について書かせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。少しでもVC・投資先の経営人材を目指される皆様、日本の閉塞感を打開し、新たな日本の産業を創り出していかれる皆様の参考になれば幸いです。

お忙しい中、目を通していただきありがとうございました。

太田 幸彦 / Yukihiko Ohta
【経歴】
慶應義塾大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。市場部門にて、外国為替カスタマーディーラーとして大手事業会社や総合商社、金融法人を担当。その後、外資系金融機関、エグゼクティブサーチファームと「金融×人材」の軸でマネージメントまで幅広く業務を経験。個人の中長期的でチャレンジングなキャリア形成を支援するため、アンテロープキャリアコンサルティングに転向。

【担当領域/実績】
国内外の証券会社(プライマリー・セカンダリー)、AM、銀行、FAS、PEファンド・VCとその投資先のCxOなどを担当。金融機関・キャリアコンサルタントとしての経験を活かしたキャリア支援やアドバイスに強みを持つ。「ポジションが必要とされている背景」「中長期的な視点で良い機会かどうか」という視点を大切にしたサポートを心掛けている。