調査レポート「2014年の金融/コンサルティング業界 転職市場動向まとめと今後の展望」を公開

2014.12.22

金融業界およびコンサルティング業界に特化した転職支援サービスを手掛けるアンテロープキャリアコンサルティング株式会社(東京都千代田区、代表取締役:小倉基弘)では、2014年のプロフェッショナル人材の採用動向の総括、および2015年の転職マーケットの展望について、各業種の担当コンサルタントによるレポートを発表しました。

◆金融業界は各業種とも緩やかながら採用増加傾向が見られた。2015年も若手を中心とした採用が堅調に推移するものと思われる。
◆コンサル業界は好調な案件受注を背景に、各社とも人材不足が顕著に。総合系ファームを中心に旺盛な採用意欲が続くと予測。


● 投資銀行

2014年の投資銀行業界の求人動向は、2013年と比較して好調でした。募集開始時期と募集人材の2点から説明させていただきたいと思います。
まず募集開始時期についてですが、昨年は2ndクォーターから募集を開始した会社が多かったのに対し、今年は年初から活発に採用活動が行われており募集開始が2、3カ月早まりました。このことは、特に外資系において年初から採用のヘッドカウントが確保されていたということを意味し、様子見から始まった昨年よりも採用意欲が高かったと判断できます。
募集人材については、昨年はアナリスト2年目あたりの、ジュニアの中でも一番低いクラスでの募集ばかりが目立っていましたが、今年は同じジュニアでも投資銀行業務経験を持つアソシエイト層のニーズや、VP以上のニーズが増えました。縮小していた組織を再構築するためにシニアから若手までを増員している会社もあり、久しぶりに業界全体で採用が活発になりました。
2015年は今年と同様か、それ以上に採用活動を実施する方向で推移すると思われます。もちろん、世界経済や政治の不安定要素もありますので一時的に冷や水がかけられることもあるかもしれませんが、M&Aアドバイザリーの需要は増加しており、ここ数年活発であったクロスボーダー案件に加えて、国内案件も増加している状況から、各社とも引き続き採用に力を入れていくと予想されます。

(担当:山本恵亮)


● PE(プライベート・エクイティ)ファンド

今年のPEファンド業界の求人動向は昨年に比べて上向きでした。CLSAキャピタルパートナーズ、インテグラル等の民間ファンドが新たなファンドを立ち上げたことに加え、海外需要開拓支援機構(クールジャパンファンド)のような官民ファンドの発足もありました。
PEファンド業界ではファンドレイズのタイミングに人材ニーズも出てくるため、実際、活発に採用活動が行われました。PEファンドへ資金が流れるトレンドはおそらく来年も変わらず、実際、来年ファンドレイズを予定しているファームの話が既にいくつか入ってきています。ターゲットとなる人材スペックにも少しずつ変化があり、これまで投資銀行系人材のみを採用してきたところがコンサル系人材に関心を持ったり、その逆の例もあったりします。
また、今年立ち上げられたファンドが来年も引き続き積極的に投資を行っていくので、投資先マネジメント人材のニーズも高まってくると予想され、この場合にはコンサル系人材のみならず、事業会社系人材もターゲットになってきます。

(担当:加藤浩)


● 不動産金融

今年の不動産金融業界の求人動向は昨年に比すると若干ですが改善してきており、この傾向は2015年も続くと思われます。
2013年前半からの金融緩和、株価上昇が不動産市況にもプラスの影響を与え、かつリーマンショック以降の不況時に各社採用を手控えていたために若手人材(20代~30代前半)が少なくなっており、私募ファンド、J-REITともジュニア中心に採用活動が少しずつ活発化してきています。
ただし、リーマン前のジョブマーケットとは様相はかなり異なります。特に独立系の私募ファンドの多くが2009年前後に破たんに追い込まれ、外資系のオポチュニスティック系ファンドが大幅縮小した現状では、採用の中心は日系の系列ファンドに移っています。そのため、当時のような完全な売り手市場とはなっていません。一部、中国系ファンド「復星グループ」がイデラキャピタルマネジメントを買収した後に天王洲シティグループセンターを買収するような動きや、シンガポール系ソブリンファンド「GIC」によるパシフィックセンチュリープレイスの買収、また英系「M&G REAL ESTATE」による複数物件の買収などがあり、外資系による人材獲得の期待もありましたが、現段階では極少数に限られています。
2000年前半のように野心的な若手プロフェッショナルがリスクテイクして自らファンド事業を起こしたり、外資系ファンドのさらなる参入などがない限り、大きく採用意欲が高まるような状況ではないかもしれません。ですが、実際にはその方のご経歴次第で可能性は十分ありますので、この業界への転職にご興味がある方は、まずは専門性を持ったエージェントに一度ご相談されるとよいのではないでしょうか。

(担当:小倉基弘)


● セカンダリー

金融業界の他の分野で採用が活発化する中、セカンダリー市場の求人はマーケットのボラティリティ低迷の長期化の影響で低調な求人数にとどまりました。しかし、年央以降の外国為替の円安傾向を受けて、数年来のデリバティブプロダクトが消滅し新たな予約の必要性が出てきたため、一部の金融機関ではデリバティブセールスやストラクチャラーの求人が活発化しています。
来年前半もこの流れが継続する可能性はありますが、あくまでも欠員の補充が目的であり、国際金融規制改革の動きのなか求人が本格化するかは予断を許しません。

● アセットマネジメント

2012年以降の業界全体としての資産運用額拡大を受けて、2014年は総じて求人数が拡大しました。運用フロント部門と営業部門の需要はもとより、日系ではミドル・バック部門でも経験者を中心に積極的な募集が行われました。一方、外資の一部ではコンプライアンスを除くミドル・バック部門のアウトソーシングによる人員削減もあり、企業や業務内容によって温度差もありました。
2015年もアセットマネジメント業界の採用意欲は堅調に推移することが予想されます。しかし、各社とも運用部門の若返りを図っており、求人は若年層経験者を中心に行われることが予想されます。また、運用商品の商品性を高める取り組みがなされ、販売促進手法にも目が向けられていることから、商品企画や販売促進的なポジションでは、経験値の高い人材の求人需要が高まることも予想されます。

(担当:鈴木勝則)


● コンサルティングファーム

2014年度のコンサルティング業界は、好調なプロジェクトの受注状況に後押しされて、各社が優秀な人材を獲得すべく採用に力を入れた年となりました。特に採用が活発だったのが、アクセンチュアやデロイトトーマツコンサルティングに代表される総合系ファームと呼ばれる各社。クライアントの旺盛な海外展開への意欲を背景に、戦略、オペレーション、ITとほぼすべての領域で人材不足となり、若手のハイポテンシャル人材から、一定の専門領域の経験者まで多くの方々がご入社されました。
戦略系ファームも、同じ背景から採用意欲は旺盛で、拡大路線を取ったファームもありましたが、やはり一定以上の採用基準を満たしている方々に対する厳選採用であったことは間違いないと思います。
また、コンサルティング会社の社内外でも様々な再編が行われ、例えばデジタルマーケティングや農業支援といった、これからの社会デザインを変えていくような新しいサービスラインが立ち上がったり、特定の分野に特化した新しい会社が立ち上がったりと、サービスラインが時代のニーズをより反映した複雑なものになり、そうした分野に強みを持つ方々の獲得に各社が奔走してきた印象があります。
来年以降も当分この流れは続くと予想され、従来ファームで採用ターゲットとなっていたような方々はもちろんのこと、世の中の流れの先端分野やニッチな領域に強みを持つ方々にとっても、コンサルティング業界がキャリアの選択肢の一つとしてより身近になってくるように思います。

(担当:佐藤史子、福永達也)


なお、本レポートのPDFファイルは、以下のリンクよりご参照いただけます。

調査レポート「2014年の金融/コンサルティング業界 転職市場動向まとめと今後の展望」