金融機関から事業会社への転職の実態とは
金融機関から転職を考えた場合、かつては同じ金融業界への横滑りか、金融機関を顧客に持つコンサルティングファームやFASといったプロフェッショナルファームが一般的であると考えられてきました。しかし、経済が大きな変革を迎えている現在では、金融出身者のキャリアの可能性はこれまでになく広がっています。
ここでは、金融機関から事業会社への転職を検討しているユーザーに対して、改めて心に留めておきたいポイントを、実際にそうした転職をなされた方の事例を通じてご紹介します。
金融機関から事業会社への転職のケーススタディ
弊社を通じて事業会社への転職をはたした金融出身者の事例を、いくつかご紹介したいと思います。
●日系PEファンドから大手メーカーのM&A担当へ
PEファンドで投資プロフェッショナルを経験された方が、日本を代表する消費財メーカーのM&A担当に転職されたケースです。この方はファンド時代、特にコンシューマー向けビジネスの領域を担当してこられたため、積み重ねてきた知見を転職先でも十分に生かすことが出来るということでキャリアチェンジを決断されました。
●メガバンクから再生エネルギー会社のファイナンス担当へ
この方は新卒でメガバンクに入行、支店勤務を経て法人営業を経験した後に、新興の再生エネルギー会社にファイナンス担当者として転職されました。銀行時代に不動産ファンドや大手デベロッパーと仕事をしたことから、インフラ開発をファイナンス面からサポートしたいと考えるようになり、うってつけのポジションへの転職を成功させたという、ご本人の満足度も高い事例でした。ストラクチャードファイナンスを組む際に必要な銀行との交渉においても、これまでのご経験を生かすことが出来ています。
●日系証券会社からメガベンチャーの経営管理担当へ
証券会社でM&Aアドバイザリーとして働くうち、第三者的な立場ではなく自ら責任をもって意思決定する機会に触れたいとの思いを抱くようになり、上場も果たした成長中のベンチャーに経営管理担当として転職されたケースです。結果的に、この方は異業種からの入社にもかかわらず、ごく短期間のうちに1つのチームを任されるほど会社からも評価される、中核人材として活躍されることとなりました。
事業会社への転職する時に気を付けるべきこと
事業会社への転職を成功させた方のケースを紹介しましたが、前職が金融機関ゆえに気を付けておくべきポイントがあることも忘れるべきではありません。
「給与の大幅ダウン」
同年代の給与水準を比べれば、金融機関の待遇はあらゆる業界の中でもトップクラスです。外資系IBDであれば入社後数年のうちに1000万円を超える年収になりますし、30代ともなれば事業会社の給与とは(例えその会社が上場していたとしても)倍近い差が生じることもあります。また、給与そのもの以外の各種手当や企業年金といった付加的な収入についても、金融機関ほど手厚くない会社が多いのが実情です。
単身者であればまだしも、すでに家庭があり扶養家族もいるような方の場合、転職によって年収を大きく下げることには様々な抵抗があるはずです。世間で「嫁ブロック」と呼ばれるように、自分自身としてはぜひ入社したい会社が見つかっても配偶者の賛同を得ることが出来ずに内定を辞退するというケースも珍しくはありません。下がった年収を凌駕するような働き甲斐、将来有用なスキルの獲得、ワークライフバランスの改善などが見込めるかどうかを、早い段階で見極めることが大切になります。
「求められる年齢層の幅が狭い」
金融機関に勤める第二新卒から30代前半までの方は、しっかりしたビジネスマナー、基本的な財務会計の知識、目標達成への強い意識などを有した、優秀なポテンシャル人材として様々なキャリアパスが望めます。一方で40歳を超えた金融マンが異業種に転職するのは、非常に難しいのが現実です。メディアなどにはベンチャー企業のCFOに転身した方が登場することも多いですが、彼らは資金調達のフェーズでVCや機関投資家と丁々発止のやり取りが出来る一部の投資銀行部門出身者がほとんどであり、門戸の広いキャリアパスとは言えません。
「出世ルートに乗れるかどうか」
日本の事業会社には、変わりつつあるとはいえまだまだ生え抜き社員を優遇する傾向が強く残っています。やりがいのある仕事に全力で取り組んで結果も出しているにも関わらず、なかなかプロモーションしないという状況では、モチベーションを維持するのが難しくなります。先に入社した中途採用人材が、その後何年でどのようなポジションに昇格したのか(あるいはしなかったのか)、できる限りリサーチする必要があります。また、入社時に通常の給与テーブルから離れた高給を保証するため、契約社員での採用を提示されることもあります。その場合は、後の契約更新や正社員への転換の有無なども確認しておくべきでしょう。
金融機関からの転職は多様化していく
テクノロジーが様々な業界の既存構造をディスラプトしている近年は、金融機関で培われた専門知識やスキルを有する人材を欲しているまったく新しい採用企業も次々と誕生してきています。
金融出身者を受け入れる企業が増えているということは、当然、金融出身者のキャリアパスもこれまでに見たことがなかったような斬新なものが生まれうるということになります。金融業界での経験をステップに、自らを経営への手触り感のあるポジションに置きたいと考える方は、ぜひご相談にいらしてください。
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監修:アンテロープキャリアコンサルティング この記事は、アンテロープキャリアコンサルティング株式会社が監修しています。ハイクラス人材の転職に役立つ情報を発信しています。 |