コンサルティングファーム卒業後にベンチャー企業へ
コンサルティングファームで一定期間働いた後のキャリアパスとして、ベンチャー企業への転職を選ぶ方は少なくありません。高度な専門知識を持ち経営にも明るいコンサルタントならば、世界的な大手企業に移籍することも十分可能に思われますが、あえてベンチャーを選択する理由とは何なのでしょうか。
コンサルタントからベンチャー企業への転職を検討しているユーザーに、メリットやリスクなど改めて押さえておきたいポイントについてご紹介します。
ベンチャー企業にジョインするメリット
コンサルティングファームからベンチャー企業にジョインするメリットとは何なのでしょうか。考えられる主な理由についてまとめてみました。
●メリットその1「アーリーステージの事業運営に当事者として関われる」
コンサルタントからベンチャー企業を目指す理由のひとつとして、これまで世の中になかったような目新しい事業の運営に当事者として関われることが挙げられます。コンサルタントのままでも企業の経営陣と話し合い、事業に影響力を行使していくことは可能です。しかしコンサルタントはあくまで外部の人間、最終的な決定権はクライアントにあるため「ベストな提案を出しても、先方の社内事情があり実現できなかった」「運用レベルに落としこむうちに、ズレが出てしまって成果がでなかった」など、歯がゆい経験をしたというのはよく聞く話です。自分で考え、自分で決定し、PDCAを高速で回す。それによって新たなサービスや価値を社会に提供できるとすれば、その仕事に強いやりがいを感じられるであろうことは想像に難くありません。
●メリットその2「早期にマネジメントポジションを目指せる」
安定性などで大手企業に劣るベンチャー企業では優秀な人材の確保が難しく、特に創業者を支え事業上の舵取りを担うマネジメントクラスの採用では苦しむ傾向があります。そのため、高度な専門知識と経営知識、そして体力やリーダーシップを併せ持つコンサルタントの入社は歓迎されることが多く、実際にベンチャーに転職後、数年のうちに役員として活躍しているファーム出身者は珍しくありません。将来的に経営者を目指すための“修行”としてコンサルタントとして働いている人は少なくありませんが、より実践的に経営スキルを磨きたい場合は、ベンチャー企業への転身はひとつの手段となります。
●メリットその3「コンサルタントとしてのキャリア形成に役立つ」
経営戦略コンサルティングの現場では、実際の「経営経験」は大きな武器となります。経営者視点を身につけるために、いったんファームを離れて起業する方もいるようですが、言うまでもなく起業には大きなリスクを伴います。そこでベンチャー企業へ転職し、経営に近いところでノウハウを吸収してから再度コンサルティング業界に戻る、というキャリアパスがクローズアップされます。コンサル+事業会社での一定の経験は再就職の際も高く評価され、コンサルのみならずPEファンドへのジョインなども視野に入る可能性が出てきます。
ベンチャーへの転職が抱えるリスク
ベンチャー企業への転職にはさまざまなチャンスがありますが、同時にリスクも存在します。続いては、そのリスクについて考えてみましょう。
●リスクその1「倒産の可能性がある」
帝国データバンクの調査によれば、1980~2009年に創設された企業のうち、10年後には約3割、20年後には約5割の企業が事業から撤退しているということです。大手企業や老舗企業にはビジネスを行っていくために十分な資金・人材・技術・製品などがあり、多少市場が不安定になったとしてもすぐに倒産するようなことはほぼありません(近年は一概にそうとも言えませんが)。一方、誕生して間もないベンチャー企業においてはそのような資源やノウハウが乏しいため、企業の生存率が低くなります。自分の頑張りではどうしようもない外部環境の変化で思い描いたキャリアが崩れる可能性も見据え、転職先の将来性の判断は慎重に行う必要があるでしょう。
●リスクその2「人間関係が仕事に直結する」
ファーム卒業後にベンチャーに入社したもののうまくいかないケースでよく挙げられる理由のひとつのが、人間関係、特に創業者(チーム)との折り合いがつかない、というものです。独立して事業を起こすくらいですから、たいていの創業者は強い個性を持っています。それを魅力的と感じていれば問題はありませんが、ひとつボタンを掛け違ってしまうと、もともと少人数の組織なので逃げ場がなくなってしまいます。事業内容や待遇などももちろん重要ですが、ベンチャーへの転職においては何よりも「誰と働くことになるのか」を深く考えるべきです。
●リスクその3「給与が下がる可能性が高い」
コンサルタントからベンチャーに転職する際は、ほとんどの場合で給与が低くなると考えておいた方がいいでしょう。そもそも高収入とされているコンサルタントから発展途上のベンチャー企業へ行くのですから、収入以上の価値を見込んでの決断だとは思いますが、それでもある程度の覚悟は必要です。ただし、ストックオプション制度があるベンチャーで、将来的に上場、あるいは事業売却などが行われた場合には、多額の報酬を手にする可能性もあります。
最後に
コンサルティングファーム出身者を迎え入れるベンチャー企業側からしてみると、経営戦略の最上流からITシステム導入や制度改革、オペレーション改善まで、コンサル経験者に能力を発揮してほしいシーンは数えきれないくらいあるはずです。あなたの采配ひとつで、その企業の命運が変わるといっても過言ではありません。当然責任は重くなりますが、コンサル時代に培ってきた経験やノウハウを一人称でビジネスに活用できる点は、ベンチャーならではの魅力といえるでしょう。
監修:アンテロープキャリアコンサルティング この記事は、アンテロープキャリアコンサルティング株式会社が監修しています。ハイクラス人材の転職に役立つ情報を発信しています。 |