成長著しいフィンテック(FinTech)業界の基礎知識と求める人材
「金融業界で働く人は、金融系企業に転職する」。これが従来のキャリアパスのメインストリームでした。そのほかの選択肢といえば、業種を問わずコーポレートファイナンスに携わるという程度だったかもしれません。近年新しく誕生した「フィンテック(FinTech)」は、そんな金融業界の転職に一石を投じる存在として注目を集めています。成長著しいフィンテック業界とはどのようなものなのか、そしてどのような人材を求めているのか。基礎知識を含めて解説していきます。
「フィンテック(FinTech)」とは
「フィンテック(FinTech)」とは「Finance(金融)」と「Technology(テクノロジー)」をかけ合わせた造語で、デジタルデバイス、ネットワーク、ビッグデータ、AI(人工知能)、ブロックチェーンなど、最新のIT技術を活用した金融サービスの総称です。スマートフォンのアプリを使った「決済」「送金」サービスや、インターネット上でお金を借りたい人と貸したい人を結びつける「ソーシャルレンディング」、ビットコインのような「仮想通貨」、AIを活用した資産運用サービスを行う「ロボアドバイザー」などがその代表例として挙げられるでしょう。
フィンテックの発祥はアメリカで、IT・スタートアップ企業の聖地であるシリコンバレーは、フィンテックの中心地ともなっています。日本ではスマートフォンが普及したあとの、2014年ごろから急速にクローズアップされ始めました。
「フィンテック(FinTech)」企業と金融業界の相違点
一口に金融業界といっても、預金や為替、融資などを主業務とする銀行業、株式の売買や募集を行う証券業などと、さらに細分化することができます。ただし、いずれにも共通する点が1つ。これらの業種は基本的に、法律と金融庁の認可のもとで事業を行ういわゆる許認可事業なのです。
一方、フィンテック業界がカバーする範囲には、許認可が必要な事業もさることながら、物品の個人間売買や融資の支援、個人財務管理(PFM:Personal Financial Management)といった金融庁の認可を必要としないビジネスが数多く存在します。ITやデータを駆使して、金融業界自体とさらにはその利用者に対して革新的なサービスを発信し続けているのが、現在のフィンテック業界。数多くのスタートアップ企業が勃興しており、チャレンジのしがいがある業界といえます。
主な「フィンテック(FinTech)」企業のサービス内容
それでは現在、国内の「フィンテック(FinTech)」業界にはどのような企業が存在し、どのようなサービスを展開しているのかを見ていきましょう。
- (1)融資サービス
- テクノロジーを活用してお金を借りたい人と貸したい人を結びつける融資サービスには、「ソーシャルレンディング」と「クラウドファンディング」という2つの仕組みがあります。ソーシャルレンディングを展開する代表的な企業として挙げられるのは、「maneo」を展開するmaneoマーケット株式会社や、「クラウドクレジット」のクラウドクレジット株式会社。クラウドファンディングサービスに目を移すと、アスリートを支援する「ALLEZ! japan(アレ!ジャパン)」を提供する株式会社サイバービジョンコンサルティングや、研究者の支援を目的とした「academist」のアカデミスト株式会社などが有名です。また、エクイティ・デット両面を含めたワンストップのファイナンスプラットフォームの提供を目指しているエメラダ株式会社のような企業もあります。
- (2)決済サービス
- いわゆるオンライン決済サービスです。オークションサイトeBayの決済をサービス化した「PayPal(ペイパル)」、ヤフー株式会社が運営する「Yahoo!ウォレット」、株式会社SPIKEペイメントが運営する「SPIKE」などが挙げられます。
- (3)送金サービス
- Apple社の「Apple Pay」、LINE株式会社の「LINE Pay」、AnyPay株式会社の「paymo」や株式会社Kyashの「Kyash」などが送金サービスにあたります。これらの企業は送金相手の口座番号を知らなくても個人間で送金ができるアプリを提供しています。
- (4)投資サービス
- フィンテックにおける投資サービスのわかりやすい例がロボットアドバイザー。AI(人工知能)を活用し、株式や投資信託などの資産運用に関するアドバイスを行うサービスです。株式会社大和証券の「ダイワファンドラップオンライン」や、マネックス・セゾン・バンガード投資顧問株式会社の「MSV LIFE」などが該当します。また証券会社以外でも、株式会社みずほ銀行や住信SBIネット銀行株式会社などがロボットアドバイザーを用いた資産運用支援を行っています。一方スタートアップでも、テーマ型投資とロボアドバイザーの組み合わせによる資産運用サービスを現在開発中のFOLIO株式会社などが活発な動きを見せています。
- (5)資産管理サービス
- 資産管理サービスで典型的なのはPFM(個人財務管理)と呼ばれるもの。言葉にすると難しいのですが、提供されるサービスは、お金の管理を手助けする進化した家計簿アプリというイメージがぴったりときます。マネーツリー株式会社の「Moneytree」や株式会社マネーフォワードの「Money Forward」といったサービスがその一例です。
- (6)業務支援サービス
- 売上や経費の把握、会計帳簿の作成、決算や確定申告などを行うクラウド型会計ソフトが該当します。企業が提供するサービスとしては、株式会社マネーフォワードの「MFクラウド会計」、freee株式会社の「freee」などがあります。
- (7)仮想通貨サービス
- フィンテックを語るうえで外せないのが、ブロックチェーン技術を使用した、世界共通で利用可能な仮想通貨。ビットコインやイーサリアム、ライトコインなどがこれにあたります。株式会社bitFlyerといった会社が仮想通貨の購入や販売、取引に関するビジネスを展開。スマートコントラクトジャパン株式会社は国内外のイーサリアムブロックチェーンコミュニティの組成、発展を目指しています。また、大手金融では三菱東京UFJ銀行が「MUFGコイン」を、株式会社みずほ銀行が「みずほマネー」の運用に向けて実証実験中です。
「フィンテック(FinTech)」業界で求められる人材・スキル
ビジネスモデルも提供するサービスも、多岐にわたる「フィンテック(FinTech)」業界。しかも、最先端のITリテラシーが求められます。金融畑でのみキャリアを積んできた人にとっては、ハードルが高いと感じられるかもしれません。しかし、諦めるのは早計です。新興かつ広範囲にわたるマーケットだからこそ、金融業界の深い知識に対するニーズも存在するのです。
例えば、金融機関向けのシステム開発や金融機関・大企業などとの協業が必要となる大規模なプロジェクトでは、入出金や為替、融資や投資など商品知識、取引の流れといった業務知識が不可欠。今後、フィンテック関連の企業は金融の中枢に進出していきます。そのときに役に立つのが、金融の現場で培った経験やスキルなのです。業務オペレーションに精通している人材も歓迎されるでしょう。また、金融業界においてはコンプライアンスに対する姿勢が、一般企業以上に大きな意味を有しています。金融業界でキャリアを積んできた人材ならではの“法令を順守し利益を最大化させる”という意識の高さも、スタートアップが多いフィンテック企業では重宝されるはずです。商品企画・開発、営業、ディレクションといった業務で活躍の場は広いかもしれません。
ちなみに、テック系エンジニアがフィンテック業界へ転職するのはさほど難しいことではないでしょう。AI(人工知能)やブロックチェーン、セキュリティ等のフィンテックの中核技術に対して深い知見があれば、多くの企業が大歓迎のはず。フィンテック市場は急速に拡大しており、有能な人材はすぐにでも採用したいというのが企業の姿勢です。コンシューマー向けのサービスや小規模法人向けのサービスを展開する会社では、スマートフォンアプリのUI/UX設計のスキルなども評価されます。
まとめ
「フィンテック(FinTech)」企業の隆盛は、既存の金融システムに対してのアンチテーゼと捉えることも出来ます。非効率な金融システムをテクノロジーによってより分かりやすく、消費者の目線に近付けることが、これら企業の最終目標のはずです。であれば、複雑な金融の仕組みと最先端のテクノロジーを、誰でも扱えるツールに落とし込める能力を持った人材こそが、こうした新しい企業群には必要であると考えられます。高いスキルがある一方で、既存の金融システムに疑問を感じているような“とがった”人材こそ、今の大企業ではなくスタートアップのフィンテック企業にチャレンジするべきではないでしょうか。新興業界で未体験の業務にまい進することは、自らのキャリア形成に厚みと深みを持たせてくれるでしょう。今後予測されている市場感を考えれば、年収アップの可能性も少なからずあるといえます。成長業界に身を置き、自己成長を実現したいと考えるのであれば、フィンテック業界への転職を視野にいれてみてはいかがでしょうか。
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監修:アンテロープキャリアコンサルティング この記事は、アンテロープキャリアコンサルティング株式会社が監修しています。 コンサル業界・金融業界への転職に役立つ情報を発信しています。 |
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