コンサルティングファームに入社した後、キャリアをそのファームで完結させる方は実は多くはありません。ほとんどのコンサルタントはファームでの経験を踏まえて新たなフィールドへとチャレンジしていきます。ここではそんな「ポストコンサル」のキャリアパスについて、近年の傾向などをご説明いたします。
コンサルティングファームから他業界への転職
ポストコンサルタント、すなわち「コンサルティングファームを卒業した方」の転職先は経済環境の変遷とともに多様化しています。従来主流であった独立起業や他ファームへの就職に加え、事業会社や投資ファンドなど、活躍の機会は年々増えてきました。特に最近はビジネスが複雑化し、早い速度で環境変化や市場の動きを捉える必要が生じる中で、問題の構造化や論点整理などに優れ、大勢の関係者を取りまとめてプロジェクトを進める経験を有するコンサル出身者を社内で雇用したい、と考える事業会社のニーズが広がって来ています。コンサルティング業界のプレゼンスが上がり、コンサルタントと一緒に働いた経験からその力を実感している企業が増えたことも背景にあるかもしれません。
事業会社での機会としては、例えば「経営企画」「事業推進」のように、全社あるいは事業の方向性のプランニングやその実行の要になるポジションや、各部門内の企画的な役割が大きな割合を占めます。またファームでしっかりした実績を積んだ方ならば、こうした部門の管理職候補として転職をされるチャンスがあります。
具体的にどんな事業会社かという点では、外資系企業や業界全体の成長率が高いインターネット系企業はファーム出身者の採用に積極的です。これらの会社は外部から積極的に即戦力人材を受け入れ、実力に応じて高いポジションを与える土壌があること、また高い給与を支払える体力があることが背景にあると言えます。また最近のトレンドとしては日系の一部大手企業でも、構造改革やグローバル化を進める中で、コンサルティング経験者を積極的に採用する動きがみられます。決して処遇は高くはないものの、本社の立場で主導権を持ちビジネスの新しい展開をドライブできる仕事の面白さが、コンサル経験者にとって魅力になっているようです。また商社は給与水準が高く、投資や子会社の経営管理などコンサル出身者にとって魅力的なポジションが多く根強い人気がありますが、年間の中途採用数自体が決して多くはないため、非常に狭き門と言えます。
2005~2006年頃のPEファンドの活動が盛り上がりを見せた時期は、投資ファンドも特に戦略系ファーム出身者の方の転職先の一つになりました。株主として決定権を持った立場で、投資後のポートフォリオ管理や経営の改善において力を発揮出来ること、投資が成功すれば高い報酬が見込めることなどが魅力になり、リーマンショックでPE全体が打撃を受ける前までは、ブームと言ってよいくらい人気の転職先の一つでした。リーマン後しばらくは厳しい採用状況が続いていましたが、足元ではアベノミクスによる景気上昇期待の高まりと並行して、PEの採用ニーズも徐々に戻ってきています。
最後に、一言でコンサルから他業界へ転職といっても、その転身先ではコンサルタント時代に培ってきた強みや得意領域を活かして仕事をすることになります。特に、一定の年齢になると、単なる優秀なジェネラリストでは評価されず、ある分野の即戦力としての働きを期待されるようになります。すなわち、ポストコンサルのスムーズな転身には、コンサルティング業界の中でご自身の軸足になる分野を作り、意識的にキャリア形成をしていくことが必須であると言えます。