コンサルタントの基本情報
何らかの課題を抱えている企業や機関から依頼を受け、その解決に向けた支援活動を行うことをコンサルティングといい、それを生業にしている人をコンサルタント、コンサルタントが集まって出来た事業法人をコンサルティングファームと呼びます。発祥は19世紀末のアメリカとされ、その後もコンサル業界は質、量ともにアメリカがリードしてきました。ユーロモニター社の調査によれば、2012年のアメリカのビジネスコンサルティング業界の市場規模は2006年から17%増加し、1100億ドル(1ドル100円計算で11兆円)を超えたと見られています。一方、同じ年の日本におけるビジネスコンサルティングの市場規模は約2700億円とされ(IDC Japan調べ)、彼我の差は歴然となっています。日本企業はまだまだコンサルティングサービスを使いこなせていないと言える半面、コンサル業界から見れば拡大余地が大きく残されているとも考えられます。
コンサルタントの働き方には一般事業会社と異なる特徴がいくつかあります。そのひとつに、固定的な組織体系を持たずプロジェクト制で仕事をすることが挙げられます。プロジェクトが始まると、そのテーマや難易度に合わせて最適なコンサルタントが集められ、一定期間チームを組成して課題解決にあたります。プロジェクト内には役職に沿った命令系統が存在しますが、プロジェクトが終了するとチームは解散し、上司部下の関係もリセットされます。人事評価もプロジェクトごとに行われ、いくつのプロジェクトに参画したか(稼働率)と、そのプロジェクトへの貢献度(パフォーマンス)をもとに総合的な評価を受けることになります。総合評価が継続して高いレベルにあれば上位タイトルに昇進することになりますが、Up or Out(昇進するか、さもなくば去れ)という言葉があるように、評価に対しては総じて事業会社よりもシビアな見方をするのがコンサルティングファームだと言えます。
プロジェクトがスタートするには、そもそもクライアントから案件を受注しなければなりません。当然コンサルタントも営業活動を行うわけですが、ここで特徴的なのが、営業を担当するのが現場社員ではなく役員クラスの人間であるということです。コンサルティングは企業の経営を左右する重要な意思決定に関わる仕事ですので、営業する相手もマネジメント層になります。また、目に見えて触れることの出来る商品を売るのではなく、そのファームが蓄積してきた知恵や経験を売るビジネスなので、営業する担当者自身の信頼度や人間力が受注できるかどうかに直結します。そのため、若手のころは営業活動にはタッチせず、職位が上がれば上がるほど営業に対する責任を持つようになるというスタイルになります。ここも「新人はまずは営業から」と考えがちな事業会社とは大きく異なる点です。
コンサルティング業界は、上位5社の売上を足し合わせても全体の5%にしかならない、非常に細分化、断片化された業界です。また、各ファームの業務範囲拡大にともない、年々サービス領域が重複してきていることもあって、「○○系」といった伝統的なカテゴライズの意味は薄れてきています。とはいえ、そのファームの出自や得意分野をざっくりと捉える際にはこうした分類は今も有効と思われますので、以下カテゴリーごとにコンサルティングファームの概観をご紹介していきます。