プライベートエクイティ人材とベンチャーキャピタル人材、どう違う?
投資家からお金を集め、企業体に投資してリターンを狙うという点では、同じファンドという分類でくくられるプライベートエクイティ(PE)とベンチャーキャピタル(VC)。ですが、それぞれの投資対象、スタンス、働く人材のバックグラウンドやキャラクターは大きく異なります。時折「投資ビジネスに興味があるので、PEでもVCでも良いから案件を紹介してくれませんか」というリクエストを受けるケースがありますが、それぞれの採用基準がまるで違うことを考えると、こういう発言自体が業界理解の浅さを晒してしまうことになります。
そういった失敗をしないよう、以下にPEとVCで働く人材の違いを説明していきたいと思います。
投資対象、投資スタンスの違い
PEが投資対象とするのは、成長フェーズを過ぎて安定期以降のステージに入っており、確実なキャッシュフローが見込まれる企業です。そのため、投資先はメーカーや流通小売、外食等の伝統的産業が多くなっています。ここに51%以上のマジョリティー投資を行い、通常は1社(1ファンド)単独で経営権の獲得を目指します。
これに対してVCの投資対象は、シード段階のスタートアップや、シリーズA~Cのフェーズにいる若い企業になります。対象業界も最近でいえばAI(人工知能)、ロボティクス、フィンテック、SaaS、バイオ、宇宙航空など、今後急成長が期待できる業界にフォーカスされています。また、投資スタンスとしてはマジョリティーを取ることはなく、通常は複数のVCでシンジケートを構成します(その内もっとも投資額が大きく、投資先との交渉などの窓口になるVCがリードインベスターと呼ばれます)。おのずと投資先が多くなるため、経営自体は創業者及び現経営陣に任せていく形を取ることが多くなります。
人材の経歴、スキル、キャラクターの違い
PEの投資担当者の経歴をざっくりまとめると、M&A業務経験者(投資銀行/日系大手証券出身者)もしくは同業PE出身者が7割、戦略系コンサルティングファーム出身者が2~3割、残りがM&A弁護士などとなります。M&A業務経験者は、投資前に必要な精緻なファイナンシャルモデリングのスキルを有していること、戦略コンサル出身者は投資後のバリューアップスキルを有しているとみなされることから、PEの採用基準に合致することになります。
一方、キャピタリストにはモデリングやバリュエーションのスキルは必須ではありません。VCの投資対象となる若い企業には事業計画書はあっても財務諸表はまだないというケースが多く、見るべきはその会社の目指すビジネスモデル、提供予定のサービスもしくはプロダクトの将来性、そして創業経営者の資質になります(レイターステージでの投資はこの点、違いがありますので後程触れたいと思います)。そのため、バックグラウンドとして好まれるのは、AIやフィンテックといった投資対象業界の知見を豊富に持っている方、自身に起業経験がある(理想的にはExit経験もある)方、すでにスタートアップでの就業経験がある方、同業VC出身者、といった人材になります。
こういったバックグラウンドの違いも影響してか、双方にはカルチャー面でも相違があり、それが服装やキャラクターに表れています。例えばPEではスーツを着ている方がほとんどですが、VCではジーンズにTシャツといったラフな姿が典型的なスタイルです。わかりやすく言えば、PEは固い(重い)イメージ、VCは柔らかい(軽い)イメージ。これは服装だけでなくオフィスの内装や雰囲気についても同様です。
また、PEは他のPEがコンペティターになるため(私的なものは別として)PE間の交流はほとんどありませんが、VCはシンジケートを構成して一緒に投資する場合が多いためキャピタリスト同士の繋がりが強く、スタートアップを交えた交流会が盛んに行われています。
共通する部分(PEのグロース投資/VCのレイターステージ)
ただし、PEの中でもグロース投資というカテゴリーの場合、VCによるレイターステージの投資と対象企業が被る場合があります。例えばPEの代表格であるKKRが近年スタートアップへの投資を加速させており、米国のライドシェアサービス「Lyft」や中国のモバイル向けショートムービープラットフォーム・TikTokを運営する「ByteDance」など、世界の名だたるスタートアップに投資をしています。さらには日本のスタートアップへの初めての投資として「フロムスクラッチ」のシリーズDでリードインベスターを務めたことも話題になっています。この領域(シリーズC、シリーズD)については今後、PEも積極的に投資を実行してくる可能性が高そうです。
最後に
以上、同じファンドでありながら大きな違いがあるPEとVCについて解説いたしました。ファンドビジネスを本気で目指す皆さんは、漠然としたイメージではなく、こうした実態を十分リサーチしたうえで、ご自身の目指すプロフェッショナルの姿を見極めていただければと思います。
PE、VCへの転職
PE、VCへの転職をお考えなら、アンテロープにお任せください。
あなた専任の実績豊富な当社のエージェントが転職活動を強力にサポートいたします。
監修:アンテロープキャリアコンサルティング この記事は、アンテロープキャリアコンサルティング株式会社が監修しています。 コンサル業界・金融業界への転職に役立つ情報を発信しています。 |
関連記事
【PE、VCの求人情報はこちらから!】
以下の求人情報一覧ページもあわせてご覧ください。