ベンチャー企業(Venture)に資本(Capital)を提供するのが、ベンチャーキャピタル(VC)です。ここではVCの基本的な業務や国内での歴史、求められる人物像、最近の動向などについて解説します。
ベンチャーキャピタルの基本情報
Google、Amazon、facebook、メルカリ、ラクスル…これらは誰もがよく知る企業ですが、ある共通点があります。それは、起業して間もない時期にベンチャーキャピタル(VC)より出資を受け、加速度的に事業を成長させたという点です。VCとは、未上場のベンチャー企業に出資して株式を取得、その後そのベンチャーがIPOしたり、M&Aで株式を売却したりすることでキャピタルゲインを得る投資会社(投資ファンド)です。また、VCに所属し投資担当として投資案件のソーシングからデューデリジェンス(DD)、投資実行、投資先の経営支援、Exitまでの一連の業務を行う職業をベンチャーキャピタリストと呼びます。
VCの最終目的は、将来有望なスタートアップに投資しファイナンシャルリターンを得ることです。コンサルティングファームと同じく、キャピタリストも企業のバリューアップ支援を行いますが、異なる点としては自らもリスクを負って出資をしているため、より結果に対する責任の度合いは深いものになります。
1972年に創設された京都エンタープライズディベロップメントが日本初のVCと言われ、国内におけるベンチャーキャピタルの歴史はまだ50年にも満たないことになります。1970年代に、ジャフコ、三菱UFJキャピタルなどのVCが設立されましたが、マザーズ市場の開設前であったこともあり、IPOによるExitのハードルが高く、業界にとっても試行錯誤の時代が続きます。1980年代に入ると、日本経済全体の高成長に伴い株式市場が発達しました。東京証券取引所による上場基準の緩和もあり、ベンチャーキャピタルの活動はいよいよ活性化されていきます。この時期には、みずほキャピタル、大和企業投資といった銀行/証券系VCが多く設立されました。
その後、バブル崩壊を経て1990年代後半から東証マザーズ、ジャスダックが設立され、IPOによるExitが身近になります。また、インターネット関連スタートアップを指す「ドットコム企業」が数多く創業、アメリカにおけるインターネット・バブルの影響もあり1999年から2000年にわたりIT関連の株価が急激に上昇します。それと同時に、独立系VCや事業会社が投資を行うCorporate Venture Capital(CVC)が続々と設立されます。グロービス(注:2006年グロービス・キャピタル・パートナーズに分社)はGlobis Incubate Fundとして1996年に第1号のファンドを組成、2019年には第6号となるファンドを総額375億円の予定で設立しています。また、グローバル・ブレインは1998年に創業し、自社のファンド組成と同時に大企業におけるCVC運営も引き受けています。
インターネット企業が興隆する中で、2000年に創業した伊藤忠商事の子会社の伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、2005年創業のGMO Venture Partner、2006年創業のサイバーエージェント・キャピタルといった会社のように、親会社との事業シナジーよりは純粋なファイナンシャルリターンを求め、グループのアセットを利用しながら協業支援するという、VCとCVCのハイブリット型も出てきました。
2008年のリーマン・ショックにより、出資者としてVCの活動を支えていた事業会社からの資金が滞り、VCにとってファンド組成が著しく困難な時代が訪れます。この時期にはCVCが部署ごとなくなる、といったケースも散見されました。しかしもっとも厳しい時期を乗り越え、2011年にはグリーからグリーベンチャーズ、2012年にはYahooからYJキャピタル、2015年にはオプトホールディングスの経営企画室から分社化したオプトベンチャーズがそれぞれ創業、現在まで順調にトラックレコードを積み重ねています。
近年においては、10年以上の投資経験を積んだキャピタリストが独立する動きが加速化しています。2015年BENOSから分社化する形でBEENEXTが、2017年サイバーエージェント・キャピタルより独立しジェネシア・ベンチャーズが、2019年アイ・マーキュリー(mixiのCVC)から独立する形でW Venturesが、新ファンドを組成しています。同時に、アメリカを中心とした外資系VCの日本進出も顕著になっています。著名な外資系VCでは、DCMが2008年に東京オフィスを設立、2011年にはDNX Ventures(旧:Draper Nexus Ventures)、2012年にはEight Roads Ventures、2016年には500startups(現Coral Capital)が東京オフィスを設けており、日本のスタートアップへの投資を加速させています。また、アメリカでは3本の指に入るアクセラレーター兼VC事業大手のPlug and Play社も2017年に東京オフィスを開設、2019年7月には京都に新オフィスを開設させ、日本におけるアクセラレータービジネスとベンチャー投資事業に力を入れています。
日本におけるスタートアップへの投資額は、2018年に過去最高の3800億円を記録しました。この金額は必ずしもVC、CVCからだけでなく、事業会社からの投資も含めた金額になります。一方、アメリカの同年におけるスタートアップへの投資金額は13兆円であり、単純計算で日本の34倍のお金がスタートアップに流れています。VCビジネスが成熟しつつあるアメリカでは、年金や大学基金などを扱う機関投資家からの資金を得てファンドレイズをしておりますが、日本ではこの流れはこれまであまり見られませんでした。ただ、日本でも2018年のメルカリの上場を機に、機関投資家がVCにも注目をし始め、LPとして出資するケースが増えてきています。
日本のVCが機関投資家からの信用を高めていく努力を続けることができれば、年間投資額が1兆円を超えることも可能ではないかと、ある著名なキャピタリストは語っています。スタートアップにお金が流れれば、新しいビジネスモデルやマーケットの構築、有能な人材の流入、短期間でのビジネスのスケールアップ等が見込め、日本のスタートアップエコシステムはさらに活性化していきます。それはひいては、グローバルにおける新産業と雇用の創出、経済の持続的成長に寄与することになっていくでしょう。
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監修:アンテロープキャリアコンサルティング この記事は、アンテロープキャリアコンサルティング株式会社が監修しています。 コンサル業界・金融業界への転職に役立つ情報を発信しています。 |