ベンチャーキャピタルの仕事とは
ベンチャーキャピタリストの業務範囲は広く、投資先のソーシング(投資対象を探す)、投資契約の交渉、バリューアップ(企業の成長支援)、エグジット(M&A売却、IPO)という一連の流れを行います。仕事への評価が投資リターンというはっきりとした数字に現れ、結果として受け取る報酬にも反映されやすいため、やりがいもより大きなものとなるでしょう。
まず、キャピタリストの仕事でもっとも重要になるネットワーキングについて、少し掘り下げていきたいと思います。
スタートアップへ投資を実行する際には、単独で投資することはほとんどなく、複数のVCで共同投資することが主流です。そのため、キャピタリスト同士のネットワークとそのリレーションがとても大切になります。投資実行時だけでなく、エグジットの際もとても重要です。例えば、自分たちがシードステージで投資していた場合、ミドル以降への投資を中心に行っているVCへ売却するケースもあります。また、最大の金額を投資するリード投資家になる場合、一緒に投資してくれるVCを探すケースもあります。
故に、キャピタリスト達はお互い情報交換の場を作り、例えば一緒に食事に行ったり、休日はゴルフに行ったりとネットワーキングとリレーション構築に尽力しています。自社よりも他VCのキャピタリストと過ごす時間の方が多いくらいです。
さらに、VC業界全体の発展のため、一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会(https://jvca.jp/)という組織も創設され、独立系のVCだけでなくCVCの加入も急増し、その中で最新の情報が交換されています。
これまではキャピタリスト同士のネットワーキングについて、述べてきましたが、続いてスタートアップとのネットワーキングについて掘り下げていきます。
今後マーケットシェアを伸ばし、短期間で大きくグロースしていける有望なスタートアップへ投資ができるか? というのがキャピタリストとしての実績を大きく左右します。そのため、今後マーケットそのものが大きくなっていくであろう業界を常にリサーチしつつ、その中で業界をリードしていくスタートアップとネットワークを持つために様々なベンチャーピッチ、イベントへ参加しています。またSNSで情報発信をすることで、自身のブランディングも意識しつつ、起業家とコミュニケーションを図っています。
さらに、直近では多くのVCでファンドレイズが続いているのに加えてCVCの設立も急増しており、立ち位置としては「スタートアップ側がVCを選ぶ」という状況になっています。ここでもっとも効率的かつ効果的な投資実行ができるのは、やはりネットワークを持っているキャピタリストになります。起業家も起業家同士のネットワークがあり、お互いに自社の課題について議論したり、情報交換を行っています。その中で「あそこのVCの▲▲さんはいいよ」という話が出て、紹介によるバイネームで案件が入ってきます。そうしたメカニズムで良いスタートアップに投資実行が可能となりますので、キャピタリストはネットワークで勝負が決まってくるところがあります。
その他の観点では、「そのVCが持っている強み」で選ばれるケースも多いです。例えば、LPに大企業が入っている場合、その大企業のクライアントへリーチできたり、営業支援を受けることでスタートアップ側が自社グロースのイメージを持つことができ、そこが決め手になるケースも多いです。
【投資契約について】
VCがスタートアップに投資する場合、種類株を発行するケースが多いです。東証に上場している企業が発行している普通株式とは違い、株式の議決権、配当受領権、優先買取権、譲渡参加権、会社清算時の財産受領権やその他の財産的権利の内容に手を加え発行されます。すでに述べた通り、VCは単独投資を行うことが少なくステークホルダーが多いため、条件の調整などは非常に繊細でタフな交渉になります。フォローオンで追加投資することも多いため、先々のことまで考慮に入れ、またVC側が一方的に有利になるような、すなわち経営陣からの信頼を失うような条件の設定にならぬよう、注意して締結まで進めています。また、直近ではスタートアップのCFOにIBD出身者が参画しているところも多く、投資契約の交渉がさらにハードになってきています。
【バリューアップ】
投資実行がなされた後は、投資先のバリューアップを図ります。よくハンズオン支援と表現されますが、やり方は様々でキャピタリストの個性も出てきます。社外取締役として深く入り込むケースもあれば、定例ミーティングに参加するのみの場合もあります。成長戦略を議論し、一緒に営業に回るケースや経営陣の悩みを聞く壁打ちをメインにする場合もあります。いずれにしてもキャピタリストの判断が重要です。「どこまで入っていくのが一番効果的か」という判断が、投資先の成長角度とスピードを決めていくといっても過言ではありません。
スタートアップ側は「自分たちは、自社のプロダクトやサービス、成長戦略について24時間考えている」という思いが前提にあるので、経営陣としては「外から口を出されたくない」という気持ちも持っていることがあります。そうしたメンタル面もケアしながら、取引先や提携先の紹介や組織拡大時の人材の紹介なども行います。
【エグジット】
投資先のスタートアップが順調に成長すると、いよいよエグジットが視野に入ってきます。エグジットとは、保有している投資先企業の株を売却しキャピタルゲインを得ることです。ファンドはLPから預かった資金で投資しているため、リターンを出さなくてはなりません。エグジットによって利益を出し、LPにリターンを返します。エグジットはIPO、M&Aによるものがほとんどで、特に日本の場合はマザーズ市場があるためIPOしやすく、割合としては、IPO:M&A=8:2くらいです。ちなみに、米国では2:8で日本とまったく逆になります。
投資先のエグジットのため、キャピタリストはIPO準備のサポートも行います。監査法人や主幹事証券の選定、東証の審査をクリアするための体制構築などです。また、M&Aでのエグジットの場合、売却株価をいくらにするのかは、ステークホルダーが多いため調整や交渉が非常にタフです。よって一定以上のファイナンススキルと交渉スキルが求められます。
【LPカバレッジ】
VCでも職位が上がり、ディレクターやパートナークラスになると、ファンドへの出資者であるLPとのリレーションも大切になります。LPになるのは銀行や保険会社などの金融機関や事業会社といった機関投資家がメインですが、エンジェル投資家と言われる個人投資家の資金も扱うことがあります。出資を検討してくれそうなLPを訪問し、自社の投資実績(トラックレコード)やファンドの目的、投資領域などをプレゼンし、資金を出してもらえるようアピールします。
VCの運営費は「ファンド総額×2%前後」が一般的な管理報酬で成立していることや、資金調達がないとそもそもファンドレイズが出来ないため、LPカバレッジの動きはとても重要です。ちなみに、エグジットに成功しキャピタルゲインが手に入った場合、LPとVCでは8:2の割合で利益を分けることが多くなっています。
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監修:アンテロープキャリアコンサルティング この記事は、アンテロープキャリアコンサルティング株式会社が監修しています。 コンサル業界・金融業界への転職に役立つ情報を発信しています。 |