コンサルティング業界の選考ルートとそれぞれの注意点について

2022-11-25 執筆者:諏訪 夏樹

昨今、採用意欲がいよいよ増しているコンサルティング業界ですが、その選考プロセスに乗るには弊社のような転職エージェントを使うことも出来れば、直接ファームへレジュメを提出することも可能です。転職サイト上でリクルーターからスカウトされたり、またはコンサルティングファームに勤務している知人・友人から誘いを受けて応募を進めるリファラル採用などもあり、入社に至るルートの多様化が進んでいます。

中には、エージェント経由で進んでいたものの、その企業に知人が勤めていると分かり知人紹介ルートにしたいとか、スカウトサイト上でリクルーターから連絡をもらいカジュアル面談をしたが本選考では面接対策をしてくれるエージェント経由にしたい、といったルート変更を考えられる方もいらっしゃるかと思います。

本記事ではそれぞれの選考ルートの概要やメリット・デメリットなどについて説明させていただきます。各ルートの良し悪しを客観的に比較した上で、皆様が望む転職を果たすためにそれぞれを使いこなしていただく一助になればと思います。

まずは採用企業に応募するルートについて、便宜上大きく下記の3種類に分類します。
1:直接応募やリファラル/社員紹介等のプロセス
2:スカウトサイト上でのプロセス
3:転職エージェントを活用したプロセス


【1:直接応募やリファラル/社員紹介等のプロセス】

これらのプロセスは、自発的な応募か社員紹介かの違いはあれど、直接特定の企業1社に応募するという点については大きく変わらないため、本記事では同じ分類とします。コンサルティングファーム向けにご自身で履歴書・職務経歴書を用意して企業の採用サイト経由で直接送る、またはその企業で働いている知人経由で人事に提出する、というところから選考がスタートするイメージです。

自発的な応募については流れに沿ってプロセスを進めていけば問題ありませんが、リファラル/社員紹介の場合は注意すべき点があります。
これまでお会いしてきた方の中には、社員紹介で選考プロセスに入った場合、直接応募やエージェント経由よりも選考が有利になるとか評価基準が多少甘くなることを期待されている方も一定数いらっしゃいました。しかし、ことコンサルティングファームにおいては、適性検査や面接プロセスを社員紹介だからと優遇する企業は基本的にありません。
ただその一方で、プロセスのファーストステップへのアプローチの確率を高められる、というメリットは現実に存在します。コンサルティングファームが積極的に採用活動を進めているといっても、それは一定の採用基準を満たした候補者の中での話になります。そのため、基準に達しているかは判断が難しいがどうしてもコンサル業界へ転職したい、というようなケースにおいては、知人友人に人事を紹介してもらって選考プロセスのスタート地点に立つ、というのは有用なリファラルルートの活用方法ではないかと考えます。
直近のトレンドとしてファーム各社がリファラル採用を加速しているのも事実で、社員紹介経由で入社が決まった場合にはその社員に報奨金が入るような制度を運用している企業が多いです。周囲にコンサルティングファーム勤務の友人がいらっしゃって自分も興味があるという場合には、とりあえずご相談されてみてはいかがでしょうか。


【2:スカウトサイト上でのプロセス】

現在、BizreachやOpenWork、ANBI等の様々なスカウトサイトが展開されており、転職活動に入られている方はもちろん、転職自体は検討段階だが登録だけはしているという方も多いのではないでしょうか。毎日大量のスカウトメールが届き、対応に困っているという方もいらっしゃると思いますが、ここではそのようなスカウトサイトやLinkedinなどのSNS上でコンサルティングファームの求人と接点を持った場合について説明します。

このケースは、2種類に大別されます。
・コンサルティングファームの採用担当から直接コンタクトがあった場合
・コンサルティング業界の求人を取り扱っている転職エージェントからコンタクトがあった場合

後者については下記の3で触れるので、ここでは前者について説明します。
スカウトサイト上でコンサルティングファームの人事からカジュアル面談やセミナーの案内等のメールが届いた際にもっとも気を付けたいのは、そういったメールに対して何らかのアクションを取ってしまえば、その後応募ルートをエージェント経由やリファラル経由に切り替えることは原則として不可能だということです。これはファームとエージェントとの間で取り交わす規定の問題であり、ご本人の希望は考慮されません。ですので、もし後から1社のエージェントでまとめて複数のファームへ応募したいと思ってもエージェント側ではお手伝いが出来ないというケースが発生しかねません。さらに、エージェントによっては自社経由でないと情報を提供しないという縛りがあることも考えられるので、何を重視するか次第で対応は変わってくることになります。
もちろん直接スカウトにもメリットはあり、エージェントでは把握出来ないようなオリジナルセミナーを案内されたり、多数ある募集ポジションのどこで選考を進めるべきか直接擦り合わせる機会がもらえるような場合もあります。スカウトメールに記載されている内容をよく確認した上で明確なメリットがあると判断した場合は、躊躇なくその流れで進めていただいていいと思います。


【3:転職エージェントを活用したプロセス】

最後に弊社のようなエージェントを活用するパターンです。最初のコンタクトは自己登録やエージェントからのスカウトなどいくつかパターンがありますが、その後はおおむね、面談→ご意向の共有や求人情報の提供→各社へ応募、という流れになります。エージェントを利用するメリットは、選考の日程調整や過去の面接情報の提供、ケース面接への対策、年収交渉のサポートなど様々ありますが、ここにも注意すべき点があります。

転職エージェントのビジネスモデルが、候補者が入社してはじめて売上が発生するというものである以上、担当エージェントとしては出来れば自分が紹介した企業へ入社してもらうのが望ましいと考えてしまうのは、営利企業としてある意味自然なことだと思います。ただ、それが行き過ぎて他のエージェント経由で進んでいる企業の選考を辞退するよう迫ったり、オファーの返答期限をあえて短く設定して厳しい決断を迫ったりするようなコミュニケーションを取るケースが散見されるのも、残念ながら事実です。

我々の業界の未熟さを示すような話で慚愧の念に堪えませんが、そのようなことを生じさせないようにするためには、網羅的に求人を紹介してもらえるエージェントをメインに据えて窓口を必要以上に増やさない、すべてのステークホルダーに自身の意向や要求を正直に伝える、といったことが大事になります。いずれにしても「自分自身の転職活動の主導権を第三者に渡さない」という姿勢が非常に重要です。


以上、それぞれの応募ルートのメリットや注意点をまとめました。それぞれの特徴をご理解いただき、皆様の転職活動が有意義なものになれば幸いです。仮にもしエージェントを活用した転職活動をお考えでしたら、全社員が「キャンディデート・ファースト」を実践している弊社までお気軽にご相談ください。

諏訪 夏樹 / Natsuki Suwa
【経歴】
早稲田大学法学部卒。新卒で日本IBMに入社し、コンサルタントとして製造業をクライアントとしたシステム導入案件を複数推進。その後人材業界にキャリアチェンジし、人材エージェントでコンサルティング業界への転職支援を中心に経験する中で、より個人の長期的なキャリア支援に従事したいという考えからアンテロープキャリアコンサルティングに参画。

【担当領域/実績】
“戦略”・”デジタル”がキーワードで、外資戦略ファームと総合ファームのデジタル部門に多数のサポート実績あり。戦略コンサル向けのケース面接対策も一定の評価を候補者様より頂いている。ポストコンサルの転職支援においても、AIやDXを軸としたスタートアップや大手事業会社への支援を強みとしている。