Π型人材になるために

2023-04-14 執筆者:土井 和照

皆さまは、Π(pi)型人材という言葉をご存知でしょうか。

Π型人材というのは、幅広い知識や視点(横線)を持ちながらも、2つの分野で深い専門的なスキル(縦線)を兼ね備えた人材のことを意味します。
ちなみに少し前にT型人材という言葉が流行りましたが、これは幅広い知識に加え1つの分野で深い専門性を持つ人材を意味し、1970年代ごろにマッキンゼーで使われていたのが始まりだとされています。

Π字型人材という言葉が生まれた背景には、イノベーションや変革を起こしていくためには幅広い知識と点(dot)としての専門性のみならず、現在または将来繋がりうる2個(以上)の点を見つけ、深めていくことが必要になる(≒スティーブ・ジョブズのConnecting The Dots)、また、ことキャリア形成においては、職務内容・役割が明確化され各々が各分野で専門性を深めつつある時代で、将来生き残っていくためには今の専門分野を飛び出した異なる分野で専門性を身に付けていく必要があるからではないか、と私は考えています。

Π型人材は、どのようなビジネスにおいても、会社においても、(プライベートにおいても)、分野を横断したクリエイティブな発想を生み出すことや複雑な課題に対応できる可能性が高い分、人材としての希少性がぐんと高まります。また、3つの分野を極めた△(トライアングル)型人材という言葉も存在します。

そもそも、誰しもが複数の物事に対して興味関心があるのではないかと思います。自分はこれで生きていく! と無理に1つに絞らずに、例えば下記のような軸でご自身の専門分野をいくつか見つけてみてはいかがでしょうか。

(1)Industry
皆さまが現在働いている業界、関わったことのある業界、または単に興味がある業界について、自ら能動的にその歴史の学習や将来ビジョンを考えて、仕事での活用を目指してみてください。業界内で様々な人物とネットワークを作りつつも、周辺業界にも手を伸ばしてみることをお勧めします。

(2)Competency/Skill
思考力、リーダーシップ、対人理解、語学力等、ご自身が自信を持てるスキルの会得を目指してみてください。例えば思考力ひとつとっても、思考の広さ/深さ/速さ/鋭さ/長さ(体力)等、様々な切り口が存在し奥が深いものですので、何か一つでも誇れる部分を見つける・鍛えることをお勧めします。キャリアにおいて役立ちそうな資格の習得など、何か目標を立てて学習するのも良いかもしれません。

(3)Hobby
専門分野というのは、仕事に限ったことではありません。スポーツ、芸術、ゲーム、読書等、何かしら1つでも良いので、得意と呼べる趣味を持つことは大切です。趣味を極めることでプライベートが充実する、仕事のリフレッシュになることはもちろんですが、もしかしたら趣味を楽しむうちに様々な人脈がうまれ、ご自身の将来のキャリアチェンジにもつながるかもしれません。


Π型人材になるためには上記の内2つの分野で専門性を持つ必要がありますが、(1)の中で2つ見つけても、(1)(2)(3)を跨いで見つけても良いのです。

当時富士フイルムHD会長であった古森重隆氏が“第二の創業”を掲げ、化粧品や医薬品に目を付け当社が多角化する礎を築いたように、あるいは幼少期に昆虫採集、学生時代にはゲームが大好きだった田尻智氏が大人になって“ポケットモンスター”を世に出したように、複数の分野を行き来したり混ぜたりしながら、現状の延長線上ではないチャンスを見つけていきましょう。

もし皆さまが異なる分野への挑戦を試みる際に、アンテロープが何かしらお役に立てれば幸いです。

土井 和照 / Kazuteru Doi
【経歴】
慶應義塾大学商学部卒。日系戦略及び外資系戦略コンサルティングファームにて、大手自動車OEM・部品メーカーや、製薬・ヘルスケア、素材・食品、通信・IT等の様々な業界クライアントに対し、全社戦略から国内外の事業戦略・計画策定、並びに実行支援を実施。PEファンドや事業会社のM&Aにおけるビジネスデューデリジェンスや買収後のPMI、事業再生案件にも複数従事。コンサルティングファームで働く中で、業界内外で活躍する人材を長期的に応援したい想いからアンテロープキャリアコンサルティングに参画。

【担当領域/実績】
コンサルティング、M&Aアドバイザリー、PEファンド、事業会社、スタートアップ等への支援を担当。特に戦略コンサルティング業界においては自身の経験を元にしたキャリア支援に強みを持つ。