戦略コンサルティングファームにおいて“グローバルに働く”とは

2023-10-31 執筆者:土井 和照

今年も残すところ2カ月ほどとなり、年末に向けて忙しくされていることと存じます。ここまでの期間、ご自身の中で仕事・プライベート含めて何か変化はありましたでしょうか。

コンサルティング業界において、2023年に起きた変化のひとつに、コロナ禍の落ち着きも相俟ってグローバル案件が大幅に増えてきていることがあります。グローバル案件比率が既にコロナ禍以前の水準を超え、将来を見越していわゆる“グローバル人材”を求めているファームも多くあります。

今回は戦略コンサルティングファームでの例をいくつかお伝えしながら、皆さまがグローバルで働くことのイメージを、憧れではなく具体的なものとするために解像度を上げていただければと思っています。一定の語学力がありグローバルに働いてみたいという思いはあるが、具体的にどうしたいのか? どうするのが現実的か? という点について、ご自身のためにも再考いただきたいと思います。

私は、戦略コンサルティングファームにおいてグローバルに働くということは、大きく下記3つの段階があると考えています。

【1( グローバル度:低)クライアントの日本拠点と協働して、海外進出に向けたプロジェクトに参画する】

主に日系事業会社において、特定の地域・国への参入や協業を目的としたグローバル案件に係る事例となります。
海外への新規参入を例にとると、新規市場参入における主な検討項目として、対象国の市場性、国民性・文化、法規制、競合プレイヤー、協業パートナーの有無等があります。実際のプロジェクトではこれらの緻密なリサーチが必要となり、現地WEBサイト等の2次情報のみならず、現地インタビュー等の1次情報を、主に現地の言語で収集する必要があります。必要であれば、ファームの海外オフィスとの連携も行い調査を依頼して、情報をリッチにしていきます。
読み書きができる基礎的な語学力が必要になりますが、インタビューや実行フェーズ等で具体的に海外現地視察等が絡む場合は、会話を含めたやや高い語学力が必要となります。ただ、現実的には海外への出張は年に1、2回あるかないか程度で、情報収集においても翻訳ツールや通訳者(社内の帰国子女等)の協力のもと、上手くこなす場合が多いです。

【2(グローバル度:中)クライアントの海外拠点や、ファームの海外オフィスと協働するプロジェクトに参画する】

クライアントが既にグローバルであるパターンで、日本への参入や協業を目的としたグローバル案件に係る事例となります(※日本を含まない場合は日本オフィスに仕事が来ないので、このような書き方になっています)。
例えば、外資系メーカーによる日本市場への新規参入の是非の検討、実際の参入方法検討や参入の際の協業相手を探すことを目的としたプロジェクトや、ファームの海外オフィスと連携しながらグローバル調査レポート(テーマ例:ESG投資状況、EVの浸透度…等)を作成するプロジェクト等があります。
このようなプロジェクトでは、実際のクライアントやオフィスが海外拠点であるため、最終成果物であるアウトプット(スライド、プレゼン等)も現地の言語で表現しなくてはならない場合が多いです。
海外拠点・オフィスとスムーズにコミュニケーションが取れる、かつアウトプットも品質を担保し、現地の言語で表現できるような高い語学力や交渉力が必要になります。

【3(グローバル度:高)ファームの海外拠点で働く】

ご自身が海外に拠点を移し、真にグローバル人材となるパターンになります。
具体的にはファーム内での海外拠点へのトランスファー制度があり、実例は決して多くはないですが、チャレンジしがいのあるチャンスだと思います。日本拠点で採用された場合、ある程度日本オフィスで経験を積み、一定の評価を受けたうえで社内応募を行う形となります。
もちろん海外で過ごすことになるのですから、語学力のみならず、その地の独特な文化・慣習に馴染む適応力も必要になってきます。


ご自身にとって、グローバルで働くというのは、上記のどの事例にイメージが近いでしょうか。グローバルで働きたいというご志向をお持ちの皆さまには、ご自身がどこを目指しているのか、きちんと志望動機を揃えてファームの選考に臨んでいただきたいと考えております。1→2→3と段階を踏んで真のグローバル人材を目指していくのも良いですし、ご自身の語学力や嗜好性を鑑みて、ほどほどのグローバル人材を目指すのも良いと思います。語学力を理由に諦めてしまう方もいるかもしれませんが、多くのファームには語学研修制度がありますので、ぜひとも活用を視野に入れてみてください。

また、トランスファー(海外駐在)に関して、地域や国をご自身で選べるケースは希少ですが、チャンスに恵まれたファームもいくつかあります。例えばアビームコンサルティングやクニエ等の日系大手のコンサルティングファームは日本がHQのため、日本オフィスから海外に駐在員を派遣する構図となっており、現地での受け入れニーズがある拠点に限りますが、他のファームよりもトランスファーできる可能性、さらには地域や国を選んでトランスファーできる可能性が高まります。このようなトランスファーの選択肢の有無や幅の広さが、ご自身のファーム選びの一つの基準になるかもしれません。

この辺りも含め、弊社のキャリアコンサルタントと一緒に議論しながら、ご自身にとって最適なグローバル人材への道を見つけてくださればと考えております。現在コンタクトいただいている方はもちろん、しばらく弊社担当者と話をされていない方でも、再度ご連絡いただければ全力でサポートいたしますのでご安心ください。

それでは、はやり病に罹らぬよう、あたたかくしてお過ごしください。

土井 和照 / Kazuteru Doi
【経歴】
慶應義塾大学商学部卒。日系戦略及び外資系戦略コンサルティングファームにて、大手自動車OEM・部品メーカーや、製薬・ヘルスケア、素材・食品、通信・IT等の様々な業界クライアントに対し、全社戦略から国内外の事業戦略・計画策定、並びに実行支援を実施。PEファンドや事業会社のM&Aにおけるビジネスデューデリジェンスや買収後のPMI、事業再生案件にも複数従事。コンサルティングファームで働く中で、業界内外で活躍する人材を長期的に応援したい想いからアンテロープキャリアコンサルティングに参画。

【担当領域/実績】
コンサルティング、M&Aアドバイザリー、PEファンド、事業会社、スタートアップ等への支援を担当。特に戦略コンサルティング業界においては自身の経験を元にしたキャリア支援に強みを持つ。