思い違いかもしれない、面接の手応え

2019-08-28 執筆者:鈴木 勝則

採用面接の後、手ごたえを感じていたにもかかわらず、企業側から見送りの連絡がくることが少なからずあります。逆に、答えに窮してしまうなどあまり手応えが感じられなかった面接だったのに、次のステップに進むこともあります。

この違いはどこからくるのでしょうか?

面接の手応えは、多くの場合、面接官の質問にうまく答えられたかどうかの印象に左右されているのではないでしょうか。ここに思い違いの原因があります。

専門性が高いポジションの採用面接において、面接官は短時間のうちに候補者のスキルや人物面を見極めなくてはなりません。そのため、答えやすい質問だけに終始することはありえないのですが、にもかかわらず何も不安材料がない面接だったとの感想を持ったのであれば、その面接は以下の2つの理由で面接官にとって消化試合となっていた可能性があります。

1点目は、候補者が期待値に達していない場合です。第一印象があまり良くなく、スキルセットも不十分と判断されると、そこからは見送りを意識した面接が行われることになります。面接官は候補者にマイナスイメージを持たれないよう当たり障りのない話題に終始し、一方の候補者はネガティブな印象のない充実した面接に感じるのです。このようなケースは、未経験者のポテンシャル採用や、キャリアチェンジにおける面接でよく見られます。

2点目は、策士策に溺れるパターンです。面接官の質問が自分の不得意分野や知識外の内容に及ぶと、その質問に答えるのではなく、自分の得意分野に無理やり論点を変えたり、別の回答でお茶を濁したりする場合に起こり得ます。採用側は面接の場を使って正確な情報を求めているのですが、被面接者が論点をずらしていると面接官は“言いたいことを言わせておこう”といった消化試合のスタンスになります。こうしたパターンは、営業職などで実績をお持ちの方などにしばしば見受けられます。うまく面接を切り抜けた充実感を持って面接を終えるのですが、面接官からの評価は真逆となるのです。

では、どうしたらこのような事態を避けられるでしょうか。

まず、面接で興味を失われないためには、自分自身がその企業とそのポジションに対する強い興味と深い理解を持つことです。求められる要件やその会社の企業風土、ビジョンを理解していれば、パーソナリティやスキルセットでのアンマッチをある程度防ぐことが可能になります。また、企業側へも質の高い質問を行うことが可能になり、一定の評価に繋がる可能性が出てきます。ポテンシャル採用ポジションなどでは、ぜひこの点を意識していただきたいと思います。

また、一人よがりな面接にならないためには、必要以上に自分を飾ることなく面接官の質問に真摯に答えることが重要です。特にイエス/ノーで答えられる質問には、きちんとイエス/ノーで回答してください。補足事項がある場合でも、論点に沿って簡潔に付け加える程度にとどめるべきです。面接官にさらに掘り下げた質問をしたいと思わせるような、懐の深さを演出していただきたいと思います。

採用面接は、1時間程度の短い時間に凝縮されたコミュニケーションの場です。面接官にしっかりと向き合い、思い違いではない面接の手応えを感じていただきたいと思います。

鈴木 勝則 / Katsunori Suzuki
【経歴】
中央大学理工学部卒。シティバンク、エヌ・エイにて外国為替カスタマーディーラーとしてトップティアの事業法人や金融法人を担当。後に同行プライベートバンキング部門に異動し、投資カウンセラーとして個人富裕層顧客にも対応。その後カナダ・ロイヤル銀行にて再び大手法人顧客への外国為替のセールスに従事。20年以上に亘り、金融業界で多様な顧客と国際金融市場との架け橋役を担ってきたが、テーマを社会で最も重要な「人」に変え、向上心を持つプロフェッショナルと人材を求める企業との架け橋となるべくアンテロープに参画。

【担当領域/実績】
資産運用会社(アセットマネジメント)、プライベートバンク、フィンテック、銀行・証券のセカンダリーを中心としたフロントおよびセールスポジション等、マーケット分野を中心に担当。金融業界での長年のキャリアをベースとした情報やネットワークで、幅広い年齢層の転職をサポートしている。