外資系ファームのグローバルモビリティ制度

2019-12-25 執筆者:佐藤 史子

コンサルティング業界では海外オフィスと連係して取り組むクロスボーダー案件が活発になって久しいですが、これに比例するように各ファームがグローバルモビリティ制度(海外派遣・駐在)に力を入れるようになってきています。ご登録者の方との面談でも、各ファームの取り組みについてご質問を受けたり、入社をした後の駐在のチャンスの大きいところを選びたい、といったご希望を伺うことも多々あります。

戦略系、総合系を中心にした外資系ファームでグローバルモビリティ制度を活用して海外駐在をする際、大まかには2つの入口があります。

ひとつは、ディマンドベースの機会をつかむこと。ある特定の地域・オフィスで、日本人スタッフのディマンドが出た場合に、これに応募するやり方です。プロジェクトの中で、日本人のコンサルタントのニーズが出たり、現地の日本企業のニーズを開拓しビジネスを広げる必要があったりした場合に、手を挙げるわけです。

もうひとつは、いわゆる「海外駐在制度」に応募して、選考に合格して派遣されるやり方です。こちらも、募集のタイミングをルーティンで決めているというよりは、欠員が出たり、新しいエリアで日本人スタッフが受け入れ可能になった時に、アドホックでポジションが空いて希望者を募ります。

いずれの場合も「研修」として行くわけではなく、現地でローカルのメンバーに交じってコンサルタントとして働きます。希望者の多い狭き門ですので、普段から海外駐在の希望を社内で継続的に発信し続けていることが、チャンスをつかむためには不可欠です。3年、4年と海外駐在の選考に応募をし続けて、数年がかりで機会を得ることも珍しくありません。

特に、ディマンドベースのチャンスをつかむためには、ポジションが空いた時に候補者として自分の名前を挙げてもうらことが必要ですので、海外で働きたいこと、そのためにどんな準備をしているのかを、普段から周囲に伝えておくことが重要であると言われています。

先日ある外資系ファームで、海外駐在を経験された方々にインタビューする機会をいただきました。皆さん異口同音に、コミュニケーションスタイルがまったく異なる環境の中でコンサルタントとして働くことの難しさと、それによって得られる経験・スキルの貴重さをお話されていました。

日本人同士ならば、阿吽の呼吸で当たり前に伝わることが伝わらず、異文化の中で自分の発言がどう受け止められ、どう伝わってしまうのかという点に敏感にならざるを得なかったこと。

ビジネス上の付き合いであっても、現地の歴史・芸術・政治について個人の意見を求められる中で、クライアントから信頼を得るために教養獲得に並々ならぬ努力をされたこと。

そのように前提を共有しない環境の中で働くこと自体が、帰国後のクライアントとのコミュニケーションやプロジェクトチームの運営に生きてきたり、コンサルタントとして新たな発想や視点を持つために有益だったことを、それぞれの経験からお話されていました。何より、現地で一緒に働いたメンバーやクライアントとの人脈は帰国後もずっと続くため、海外オフィスのキーマンを知っていることでプロジェクトがスムーズに進められたり、クライアントとの関係が深まって継続的に仕事がいただけたりと、やはり海外で働くことはコンサルタントとしての幅を広げる貴重な機会になっているようです。

個別のファームの制度や機会についてご興味があれば、ぜひお気軽にご相談ください。海外で自ら道を切り開き、コンサルタントとしての成長を目指す方々の志を応援しています。

佐藤 史子 / Fumiko Sato
【経歴】
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒。新卒で大手新聞社に入社し、取材記者として勤務。その後大手総合人材サービス会社を経て2008年より現職。人材業界でのキャリアは通算15年以上にわたる。

【担当領域/実績】
コンサルティング業界担当。毎年年間200名以上の候補者の転職やキャリア形成をサポート。外資系戦略コンサルティングファーム、総合系ファーム、会計系財務アドバイザリーファームを中心に業界でのネットワークを広く持ち、現役コンサルタントの方々との日々のコンタクトを通じて業界の生の情報に触れ、コンサルティング業界の最新動向やキャリア形成に関する知見を磨く。これらをソースにした的確な転職アドバイスに強み。大手ファームへの転職支援はもちろん、ポストコンサルの方々のファンドや事業会社のコアポジションへの転職支援実績も多数。