コンサル業界 コロナ禍の採用動向と2021年に向けて

2020-12-14 執筆者:佐藤 史子

コロナ禍の2020年は、公私とも行動基準や活動がこれまで想像もつかなかった姿に変化して、日々刻々と変化する玉石混合の情報に翻弄されることに抗らいながら、それぞれが自分らしく新しい生活の仕方を探ってこられたのではないかと思います。転職活動を行ってきた皆さんにとっても、見通しの立てづらい、激動の1年になったことでしょう。

コンサルティング業界の採用環境も、大きな波に晒されました。そこでこの1年の採用動向を振り返り、今後の見通しをお伝えしたいと思います。

全国に緊急事態宣言が発令された3月以降、ほぼすべてのコンサルティングファームがリモート勤務に切り替わり、採用面接もオンラインになりました。緊急事態宣言が解除された6月以降も、本国からの出勤規制が厳しい外資系大手ファームを中心に、全体の8割以上のコンサルティング会社がオンライン形式での採用を継続しています。最終面接を含むすべての選考プロセスがオンラインに切り替わり、リモート面接のみで内定に到る状況が続いています。

候補者の方々にとっては、採用企業のカルチャーや職場の環境がつかみにくいといったデメリットがある一方で、東京オフィスでの面接を受けにくかった海外在勤や東京以外の地域にお住いの方々も、同じ条件で選考が受けられることになり、これはこれで一定のメリットは生じていると思います。面接スケジュールが組みやすく、内定が出るまでの期間が大きく短縮をされているのも、活動のしやすさに繋がっているのではないでしょうか。すでに多くのファームが来年以降もリモートでの面接継続を決定しており、この形式は当面続いていくと思われます。

採用の動向ですが、総合系ファームを中心に、8月ごろから積極採用に転じるところが徐々に出てきました。言わずもがなですが、コンサルティングファームの採用動向は、稼働率によって変わります。緊急事態宣言中にストップしていたプロジェクトが動き出したことはもちろん、コロナによって企業活動に大きな変化が生じ、それに対応する案件を確実に受注出来たファームは再び現場の稼働率が上がり、人材の確保が必要になってきています。このため、部門や領域によって濃淡があり、同じファームでも部門によって採用ニーズが異なります。

ニーズが高いのはやはりデジタル推進領域で、急増する企業のリモートワーク・オンライン化の対応に今後も底堅い需要が見込めるため、コンサルタント、エンジニア含めて人材の確保が急務です。特に、顧客接点のデジタルへの移行が従来以上に加速される中、ECやデジタルマーケティング、アナリティクス系の求人ニーズは強く、またUXやUI関連のポジションで「デザイン」が出来るアート系の人材へのニーズも上がってきています。テレワーク対応に伴うネットワークの再構築や、リスク管理分野でニーズが高まっていることも、新たな動きと言えるでしょう。

ただし、頭数を確保するための未経験・ポテンシャル人材の採用には引き続き慎重で、どのファームもシニアコンサルタント以上の採用、望ましくはコンサルティングの経験者への採用を優先しています。コンサルタント経験がなくても、必要とされる業界や業務の知見を一定程度お持ちで、自社内での業務改善経験のある方には内定が出ています。年度内はクライアントのプロジェクト予算が確保出来ているものの、次年度以降は未知数であるという状況の中で、やはり確実に稼働させられる見込みのある人材をしっかり見極めて採用したいというのが各ファームのスタンスであるようです。

採用ニーズの変動は、来年以降も続くでしょう。従来以上に募集状況が刻々と変化する中で、正しく採用ニーズを見極めて、ご自身の経験を活かせるところに応募することが転職活動の成功に欠かせません。このような状況下でこそ、採用の前線で各社のニーズを伺っている私達に、ぜひご相談いただければと思います。

佐藤 史子 / Fumiko Sato
【経歴】
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒。新卒で大手新聞社に入社し、取材記者として勤務。その後大手総合人材サービス会社を経て2008年より現職。人材業界でのキャリアは通算15年以上にわたる。

【担当領域/実績】
コンサルティング業界担当。毎年年間200名以上の候補者の転職やキャリア形成をサポート。外資系戦略コンサルティングファーム、総合系ファーム、会計系財務アドバイザリーファームを中心に業界でのネットワークを広く持ち、現役コンサルタントの方々との日々のコンタクトを通じて業界の生の情報に触れ、コンサルティング業界の最新動向やキャリア形成に関する知見を磨く。これらをソースにした的確な転職アドバイスに強み。大手ファームへの転職支援はもちろん、ポストコンサルの方々のファンドや事業会社のコアポジションへの転職支援実績も多数。