転職活動の最後の難関 退職交渉の心得

2022-04-04 執筆者:佐藤 史子

皆さんの多くが、内定を獲得しオファーレターにサインをしたところで転職活動完了、と考えていらっしゃると思います。実はここから、転職活動の第2ラウンド、最後の難関となる退職交渉が待ち構えています。

特に、ここ1年ぐらいは慢性的な人不足から、退職交渉が非常に難航、長期化する傾向にあります。アンテロープを使って転職をされるような優秀な方、現職での評価の高い方であればあるほど、企業としてもコストをかけて採用育成しており、退職されてしまうのは大きな損失です。なんとしても引き止めたいと考えるのは当然のことと言えます。

上司が面談の時間を取ってくれない、考え直せと言われて退職を許可してもらえない、引継ぎ先を決めてくれないなどの理由で交渉が難航し、中には応募をしてから内定が出るまでの時間の倍ぐらいかけて交渉し、やっと円満退職を勝ち取られた、というようなケースもあります。退職交渉完了までが転職活動と心得て、気持ちを引き締めて会社に切り出すことをお勧めします。

以下に、円満に交渉を進めるための留意点を記載しておきます。

1)交渉のタイミング
遅くとも退職日の1カ月~1カ月半前には会社に切り出すのがよいです。法律上は、退職まで2週間の猶予があれば退職はできますが、現実的ではありません。ほとんどの会社が社内規定で退職を告げてから離職するまでに必要な期間を設けているので、ご自身の会社の規定がどうなっているか予め確認しておくのも必要です。
職場の繁忙期やプロジェクトの途中など引き継ぎが難しそうな場合は、あらかじめ転職先と話しあい、余裕をもって入社日を設定しておくのも必要です。

2)交渉の進め方
「相談」ではなく決定事項として「報告」します。「退職をしたい」ではなく「退職をします」というスタンスで切り出してください。少しでも慰留の余地があると思われると、強硬に引き止められます。退職理由を一つ一つ潰されて、理解を得られず消耗戦になり、議論をすることに疲れて、心が折れてしまうことも珍しくありません。上司もプロですから、議論になると勝てないと思っていた方がよいです。これまでの感謝を伝えてつつ、何を言われても気持ちは変わらない、という強い意思を示すことが必要です。難航しそうだと思ったら、時には引いて見せることも効果的です。考え直せと言われたら、いったん持ち帰って、相手の顔を立てることで、受け入れてもらいやすくなることもあります。

3)転職先の詳細は明かさない
どこに転職するか聞かれても、転職先を明かすのは得策ではありません。転職先に関するネガティブキャンペーンを張られて不安になり、せっかく新天地へ向かっていた気持ちが萎えてしまう、というのも珍しくないです。どこに転職するかは伏せた上で「新天地で落ち着いたら、ご挨拶のご連絡を差し上げます」と伝えておくことで、十分失礼には当たりません。

4)カウンターオファーは聞き流す
退職を告げたとたん、昇給昇格や希望の部署への異動を提示されることも多くあります。退職交渉で一番の落とし穴になるのがこのカウンターオファーですが、これに乗ってもいいことはありません。一時的に希望が叶ったように見えても、最終的に約束を反故にされたり、短期で望まない部署へ再異動させられることもあります。一度、退職の意思を告げた社員を会社が重用することは、まずありません。魅力的な打診があった際は「なぜ転職しようと思ったのか」「自分は転職することでどうなりたかったのか」「今後何がしたいのか」という原点に戻って考えて、会社からの提案がその解になるのかをしっかり見つめなおしてください。

実は退職交渉にウルトラCはなく、ご自身の意思の力がすべてという、孤独でストレスのかかる戦いでもあります。さらに、オファーを応諾した段階で転職先との関係作りはすでに始まっていて、交渉の進め方も含めてすでに入社後の印象が左右されている、という気持ちでいた方が正しいです。

私たちは数えきれないほどの様々な事例を見ていますし、皆さんの最後の戦いをバックアップすべく万全の態勢でご支援します。退職交渉完了までが転職活動と心得て、私たちをうまく使って乗り切っていただければと思います。

佐藤 史子 / Fumiko Sato
【経歴】
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒。新卒で大手新聞社に入社し、取材記者として勤務。その後大手総合人材サービス会社を経て2008年より現職。人材業界でのキャリアは通算15年以上にわたる。

【担当領域/実績】
コンサルティング業界担当。毎年年間200名以上の候補者の転職やキャリア形成をサポート。外資系戦略コンサルティングファーム、総合系ファーム、会計系財務アドバイザリーファームを中心に業界でのネットワークを広く持ち、現役コンサルタントの方々との日々のコンタクトを通じて業界の生の情報に触れ、コンサルティング業界の最新動向やキャリア形成に関する知見を磨く。これらをソースにした的確な転職アドバイスに強み。大手ファームへの転職支援はもちろん、ポストコンサルの方々のファンドや事業会社のコアポジションへの転職支援実績も多数。