コンサルティング業界の採用動向

2010-03-23 執筆者:佐藤 史子

コンサルティング業界も採用動向は最悪の時期を脱却しつつあります。各ファームも新規のクライアントからの案件の受注、というのはまだ難しさもあるものの、既存のクライアントにしっかりと食い込んでいたファームはクライアントの業績回復に伴って少しづつ案件が戻って来ているような状況です。

ある外資系大手のコンサルティングファームは、今年の上半期で採用を急加速させています。リーマンショックからいち早く回復し、稼働率も高い水準で安定。若手のポテンシャル採用から即戦力の経験者まで積極的に採用できる基盤が固まっており優秀な若手の方から他ファームのパートナークラスの方までご入社される方が出てきています。

また、大手ファームに限らず少数精鋭で活動している独立系ファームも、元気なところは採用意欲が出て来ました。先日、某経営コンサルティングファームの代表の方にお会いしました。10名強で活動しておられる組織ですが、他のファームでは見られないユニークなアプローチで顧客をしっかりとつかんでおり案件が急増しています。このようなご時世でも従来のサービスメニューに加えて、新しい領域へコンサルティングサービスを広げて行こうとされており、その方のお話の仕方、コンサルティングビジネスにかける情熱やエネルギーなど大変力強いものを感じました。

そのファームはコンサルティングを提供する側の論理や既存のソリューションに問題を当てはめるのでななく、お客さんの組織の中の人々をしっかりと見る、すなわち「この仕組みは本当にお客さんの組織にフィットするのか」「こうしたツールを使いこなせる人は一体お客さんの会社に何名ぐらいいるのか」など現場の人にしっかりと目配りをした特徴のあるコンサルテーションを得意としており、このスタンスが評価され、今はプロジェクトの引き合いが大変増えているとのことでした。

このような価値観でコンサルティングビジネスに取り組まれているためか、その方のお話しぶりからは採用した人材に対しても「長期的な視野で育成しよう」「上司、部下という垣根を越えてフェアに接しよう」という温かさ、懐の深さがうかがえ自社のコンサルティングビジネスにおけるスタンスをきちんと従業員にも適用しておられる様子が伺えました。

回復のきざしが見えて来たコンサルティング業界のジョブマーケットですが、こうした市況の回復期こそ、これまでのクライアントとの関係の良しあしや、明確なビジョンのありかなきかにより、回復基調に乗れるか否かが分かれてくるものだと感じます。ひとつでもたくさんの優良な会社の情報を収集することで、真摯に今後のキャリアを考える皆さんのお力になれたら、と願っています。

佐藤 史子 / Fumiko Sato
【経歴】
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒。新卒で大手新聞社に入社し、取材記者として勤務。その後大手総合人材サービス会社を経て2008年より現職。人材業界でのキャリアは通算15年以上にわたる。

【担当領域/実績】
コンサルティング業界担当。毎年年間200名以上の候補者の転職やキャリア形成をサポート。外資系戦略コンサルティングファーム、総合系ファーム、会計系財務アドバイザリーファームを中心に業界でのネットワークを広く持ち、現役コンサルタントの方々との日々のコンタクトを通じて業界の生の情報に触れ、コンサルティング業界の最新動向やキャリア形成に関する知見を磨く。これらをソースにした的確な転職アドバイスに強み。大手ファームへの転職支援はもちろん、ポストコンサルの方々のファンドや事業会社のコアポジションへの転職支援実績も多数。