転職市場で歓迎されるグローバル人材とは

2011-05-25 執筆者:佐藤 史子

3月の東日本大震災から早いもので2カ月半が経ちました。震災発生直後、採用企業の臨時休業などに伴って一時的には止まっていた採用環境もすっかり落ち着きを取り戻しています。

被災地で未だ不自由な思いをされている方々が一日も早く元の生活を取り戻されることを強く願うところではありますが、転職市場に関して言えば、幸い今のところは震災発生前とほぼ変わらない状況で選考が継続されております。

コンサルティング業界に関して申しますと、震災発生が各社の採用ニーズを直撃しなかったのは、各ファームのクライアントである大手企業のグローバル化が進み、コンサルティング案件の中でも、海外展開を支援するものの割合が増えていたことも理由の一つにあるようです。製造や研究開発の拠点を海外に移したり、海外の市場を取り込むために現地の企業を買収するような動きが加速しているのは連日の新聞報道の通りですし、震災を契機にバリューチェーンを海外に広げていく動きはますます盛んになり、それを支援するコンサルティングファームへのニーズもさらに高まっていくと考えられます。

各コンサルティング会社はこのような動きに対応するため人材の確保に力を入れて来ました。ファームによっては企業の新興国展開を支援する専門のチームを立ち上げて人材を積極採用したり、中国や韓国など特定のエリアで勤務経験を積んだ方をピンポイトで探したりしています。

コンサルティングのテーマも、例えば海外展開にあたっての進出先の市場や競合の調査分析、海外の会社とM&Aを行う際の統合戦略の立案や効果の分析、統合後の人事組織や報酬制度の再設計、バラバラであったシステムの統合など、戦略・業務・人事・ITなど各領域にわたっており、関連する分野でのご経験をお持ちの方へのニーズが高い状況が続いています。

では、こうしたグローバル化に対応できる人材として転職市場を勝ち残っていく際に、どのような経験や能力が評価をされるのでしょうか。

高い英語力をお持ちであったり、英語以外の第二外国語(特に中国語や韓国語などアジア圏の言語)が出来ることは当然プラスになります。コンサルティングファームでのご経験や事業会社での海外戦略やM&Aなどをご経験をされていることも、企業からの採用要件として目に付くところです。

ただ、これらの職能としてのスキルはもちろんなのですが、外国人のクライアントや自社の海外オフィスのメンバーと一緒にプロジェクトを進めていくためのコミュニケーション能力は何より大切な要素と言われます。各ファームで採用を担当されている方からも「プロジェクトの中で海外オフィスと連携する場合、お互いに英語が母国語でないメンバー同士でのコミュニケーションになる場合も多い。流暢な英語力よりも、異文化でコミュニケーションの前提が異なるメンバーの中で、臆せず論理的に自分の考えを発信できる能力を優先したい」とのお話をよく耳に致します。

英語は多少ブロークンであっても、このように多様な文化の中でご自身の考えや議論を深めていけるマインドの方であれば面接で評価されて合格に到るケースもあります。

「帰国子女ではないから」、「ビジネスレベルの英語力がないから」と、コンサルティング業界への転職を諦めていた方も、これを機会にぜひ我々のようなエージェントを通じて転職市場の状況をリサーチし、ご検討をいただければと思います。

佐藤 史子 / Fumiko Sato
【経歴】
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒。新卒で大手新聞社に入社し、取材記者として勤務。その後大手総合人材サービス会社を経て2008年より現職。人材業界でのキャリアは通算15年以上にわたる。

【担当領域/実績】
コンサルティング業界担当。毎年年間200名以上の候補者の転職やキャリア形成をサポート。外資系戦略コンサルティングファーム、総合系ファーム、会計系財務アドバイザリーファームを中心に業界でのネットワークを広く持ち、現役コンサルタントの方々との日々のコンタクトを通じて業界の生の情報に触れ、コンサルティング業界の最新動向やキャリア形成に関する知見を磨く。これらをソースにした的確な転職アドバイスに強み。大手ファームへの転職支援はもちろん、ポストコンサルの方々のファンドや事業会社のコアポジションへの転職支援実績も多数。