Vision&Hard Work

2012-12-19 執筆者:小倉 基弘

2012年12月10日、iPS細胞(成熟した細胞が初期化され多能性を持つようになる細胞:Induced Pluripotent stem cells)を生成することに成功した山中伸弥氏に対するノーベル生理学・医学賞の授賞式が行われました。山中教授は1962年生まれ、私と同い年です。比較するのもおこがましいですが、同年代の方が想像を超えるような偉業を達成されると自分もまだまだ頑張らなくてはと大いなる刺激をいただきます。

今回、この偉業を成し遂げた山中教授のキャリアの変遷を調べていると「向上心を持ったプロフェッショナルに対してキャリアデザインのサポートを行い、人々の人生を充実したものにしたい」と考えている私たちのような者にとっても興味深い発見がありました。

山中教授は、神戸大医学部を卒業後、当初は整形外科の臨床医を目指されていましたが、手術に必要以上に時間がかかったり、点滴に失敗するというネガティブな理由、リウマチのような重症患者を救う為に基礎研究をしたいというポジティブな理由から研究者にキャリアチェンジをされています。研究者になってからも初めは動脈硬化の研究、その後、癌の研究を経て万能細胞の研究へ徐々にシフトしています。その過程でも研究がうまく行かない時期に臨床医に戻ろうかとも考えられたそうです。ビジネスパーソンに置き換えれば、何度か悩みながら転職を重ね、途中、挫折も味わったうえに最終的にはキャリアを始めた時には考えてもいなかった分野で大きな成果を上げたということになります。

山中教授のキャリアから学べることは直線的なキャリア、一つの目標を一生かけて目指し続けるだけではなく、キャリアの途上で自分にとって価値ある目標が出てくれば目標設定をやり直して、新たな目標に向けて努力を続けるということ、大切なのは目標、Vision、どこに向かっているのかを常に意識して努力をすること、というメッセージではないかと思います。そのきっかけとなったのはグラッドストーン研究所の上司がVision & Hard Work、明確なビジョンを持ち、それに向かって一生懸命努力することが大切、とのアドバイスをくれたことにあるそうです。

人生は例えて言うなら短距離走ではなくマラソンのようなものです。長いキャリアをどう充実させるか、当初チャレンジしていたことがうまくいかなくても決して自信を失う必要など無く、新たな目標を設定して努力をすれば道は開ける。Vision & Hard Work 、山中伸弥氏のノーベル賞受賞から何かしらの示唆を得たような気がします。私にとっては遥か遠くの偉業ではありますが、2012年、多くの人々にポジティブな刺激と自信を与えてくれたものではないでしょうか。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。