人材業界の信頼性が低い原因

2007-10-11 執筆者:小倉 基弘

私が人材業界で独立すると決めた時に父から言われた言葉は「人身売買なんかやめろ」というものでした。

父は日本の伝統的なメーカーで一度も転職を経験することなく勤めあげた人です。そういったエスタブリッシュな業界にいる人にとっては、人材業界自体よくわからず、悪いイメージを持っていたのでしょう。

私自身は、伝統的な業界にいる人たちがそのように考えていること自体、ビジネスチャンスだと思っていましたが、98年にこの業界に入り、02年に独立して早5年が経って、確かに人材の業界が他の産業に比して信頼性が低いなと感じることが、残念ながら、現状でも多く存在しています。

基本的にはコンプライアンス意識が低いことが原因ですが、例えば

・個人情報(RESUME)が無断で、個人の意図していない企業に回覧されている。

・エグゼクティブサーチ、ヘッドハンティングと称して、相手の属性をよく精査しないままコールドコールを繰り返している。

・インターネットを見れば誰でも取得できるような表面的な求人情報のみで個人に企業を紹介している。

・個人の意思を尊重せず、内定した企業にとにかく押し込もうとする。

 
他にも問題はありますが、この業界が今後成長していくためにはこれらのことがひとつひとつ是正されていかなければなりません。

コンプライアンスの問題はあらゆる業界が成長していく過程で経験していくことかもしれません。私が20年ほど前にお世話になった証券業界も日常的に「ダマテン」という言葉が横行していましたが、現在では、当たり前かもしれませんが、厳罰の対象になっています。

この業界で働くすべての人が目先の利益のみを考えることなく、この事業が広く社会性、公共性の高いものであることを認識し、高い理想を持って前進していくことによって、人材業界が高い信頼を得られる産業になっていくのです。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。