初心忘るべからず

2007-12-31 執筆者:小倉 基弘

このレポートの一番初めに、アンテロープの起業動機を書きましたが、それ以前に、何故、自分のキャリアの延長線上に起業そのものを選択したのかについて最近考えていたのですが、その答えのひとつを先日、年末の掃除をしていた妻が見つけてくれました。それは18年前になりますが、起業する数カ月前、27歳の時(1990年6月頃)にある方に書いた手紙の下書きです。

内容はお粗末ですが、私自身の初心が書かれていました。日々仕事をしていると本当の自分の軸がなんであるかを忘れがちですが、初心を私自身に刻み込むためにも以下に記します。

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先日はお忙しい中、貴重なお時間を割いていただきまして大変有難うございました。あれ以来永い間連絡をせず、ご無礼いたしまたことをご容赦ください。

自分なりにいろいろ考えておりました。参考になる本を読んだり、人の話を聞かせてもらったりしていました。

自分がこれからの人生を組織人として生きていくべきか、独立して起業するべきかを考えていました。

私は以下の点から独立して起業することを選びたいと思います。

一度しかない人生であるのだから、自分が本当に情熱を傾けられるものに賭けてみたい。

今の生活を続けていくということは、これからの人生を守りの体制にしていくようなものだと思えるのです。最近、自分が今の仕事をやっていて毎日感ずることは「思考をしなくなった」ということです。物を考えなくなったのです。朝起きて会社に行き、職務をこなすべく働き、多少のパフォーマンスをあげ、時計を見れば夜の9時、10時頃。それから1、2時間事務処理をして帰宅。途中で食事をとり、寮に帰って風呂に入って12時、1時ごろに就寝。この間、私は自分の人生について、人生の目標について、理想の目指すべき人生について考えていないのです。

人生は短いと思います。終わりもいつ来るかわかりません。もし明日死ぬのであれば、今のままでは絶対に後悔します。もうやるだけやったのだからいつ死んでもいい、という状態に早くしたいのです。そのためにはリスクをとってでも独立したいと考えています。

ただ理解していただきたいのは、独立したい、という気持ちを持ったのは、現在の仕事から逃避したいという理由からではないのです。営業成績に関しては、自慢にはなりませんが89年9月期、90年3月期と表彰してもらい褒賞として1週間だけですがワシントン、ニューヨークへの研修に行かせてもらいましたし、他にもそれに準ずるような待遇を受けたことがあります。同年輩の中では上位のほうにいると自負しています。このまま会社にいれば、ある程度の地位にはつけるのではないかとも自惚れています。でも、もし組織人として想定される階段を上っていっても後悔すると思います。

独立するということが並大抵なことではないということは重々承知しています。

はっきり言って、どうやって独立するのか、どう事業を興すのか、どういう業界がいいのかという基本的なことさえわかりません。

なんとか助言をいただきたいと思います。

本当にお忙しいとは思いますが、後日お時間をいただけないでしょうか。よろしくご配慮の程、お願い致します。

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若気の至り、というやつですが、私自身の自己実現のための選択は「起業」というものだったのでしょう。

自分のキャリア形成に悩んで、最終的に人のキャリア形成、自己実現に影響を与える仕事ができていることは幸せだと思っています。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。