悪い時期の利点

2008-03-31 執筆者:小倉 基弘

昨年後半より話題になっているサブプライム問題によって、年初より金融機関各社、特に外資系金融機関は中途採用を抑制しており、他の日系金融機関、投資ファンド等にも同様の現象が波及しています。今後、このトレンドが悪化するのか、持ち直すのかは何とも言えませんが、金融業界とコンサルティング業界に特化してビジネスを行っている弊社にとっては、現時点では少なからず痛手を被っています。

ビジネスを長期的に行っていれば、必ず外的事象が良いときもあれば、悪いときもあり、外部状況が良ければ、ビジネスがそれに支えられながら成長していきますが、悪化しているときには、同じようなペースでビジネスを行っていれば当然、業績は悪くなるものです。

外部環境が悪い時期の利点は、その厳しい状況によってビジネスを行っている私たちが今以上に努力をしなければならないところにあると思います。つまり現状のビジネスを改善し、工夫を加えていかなければ自然と業績が落込んでしまうのです。

平時ではおろそかになっているところが、悪い時期にははっきりと浮かび上がり、その改善のために努力、工夫を積み重ねざるを得ないところがある意味、有難いところであり、その結果、その後に外部環境が良くなってきた時に以前よりも成長が加速されるという現象が起こるのだと思います。

私の少ない経験では、以前、建築関連のビジネスで独立をしていた時、建築需要が全体的に落ち込み、仕事量が減り、受注価格が下がり始めたことがありましたが、受注活動、施工管理、コスト管理を地道に改善し続けていると、業務が徐々にですが効率的になり、加えてコンペティター数社の業績が悪化し、最終的には倒産し、その後に景気が回復した時は競争相手も減り、しかも自社の業務も効率化されており景気悪化前に比しても一段と成長が実感された時がありました。

もちろん常日頃から業務改善は継続していかなければならないのですが、景気が良い時期にはついそれがおろそかになりがちです。

現状の外部環境がさらに悪くなれば、私たちはさらに努力を重ねざるを得ず、その結果、業務について深く考え、どのようにすれば少しでも良い結果が出るかについて工夫をしていき、その結果、何かが得られるものと思われます。このことが長期的にビジネスを行ううえで重要な成長要因になることは間違いないのではないでしょうか。

不謹慎かもしれませんが、上記のような理由から、今の外部環境がさらに厳しくなり、私たちが今まで以上の努力をせざるを得ない状況になることも歓迎すべきだと感じています。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。