長期的な成長

2008-10-31 執筆者:小倉 基弘

アンテロープを微力ながら日々、経営していて願うことは、この企業を長期的、持続的に成長させていきたいということです。

成長スピードはゆっくりでも50年後、100年後の人々に「スローだけど確実に成長している企業だ」と評価してもらいたいのです。

つまり、新進のベンチャー企業のように、毎年倍々ゲームで伸びているような急激な成長は望んでおらず、結果的に10年、20年の単位で振り返れば毎年数%ずつの成長をしているほうが良いと考えています。

特に会社設立後数年間、というより25年間程度(四半世紀)は、この長期にわたる成長のための土台作りの期間であるかもしれないと考えています。この四半世紀で

・成長の基礎となる優秀な人材を採用する。

・組織の真の強みを理解する。

・その強みを軸としてビジョンを構築する。

・そのビジョンを少しずつでも確実に推進していく。

ことが必要なのかもしれません。

この時期が正しく過ごせれば、その後の長期的な発展は現実のものとなる可能性が高いと思います。

理想としている組織があります。

キャピタル・インターナショナル社は1931年に設立され、77年後の2008年、世界に19拠点を設けて約9000名の社員を擁しています。アセットマネジメントの業界の中でもクオリティの高いサービスを提供しており、その結果、高いパフォーマンスをあげ、企業規模も拡大してきました。業界の内外から真に尊敬されている企業ではないでしょうか。

結果だけを見れば、設立当初から急成長をしてきた組織であると考えられるかもしれません。しかし、この組織は長期的な投資スタンスが顧客のためになるとの信念、組織内ではチームプレーが尊重されるという信念を愚直に推し進めてきており、この当たり前のポリシーが設立当初に「斬新な考え」として人々を引きつけてきた事実はなく、また、採用も厳密に行っていたため、成長スピードは非常にゆっくりとしたものでした。

1931年に8名で創業し、4年後の35年まで8名で変化なく、10年後に17名、20年後に28名、しかもそれから5年後、つまり設立25年後も2名増えただけで30名という組織でした(キャピタル:日本経済新聞社より)。この時代のキャピタルを観ていた人の中に、設立後25年も経っているのに30名程度の社員しかいないこの企業が、その後約50年で9000名の企業になると誰が想像できたでしょうか。

しかし、キャピタルはこの当初の四半世紀をかけて、結果的にその後の成長の礎を築いたのです。

・時間をかけて優秀なアナリストを採用し、

・時間をかけて長期投資のスタンスとチームプレーを社内に浸透させ、

・時間をかけて文化を築き、そのポリシー合う人だけを組織に残して、

強固な土台を造ったのだと思います。

これほど素晴らしい組織を理想とするのは恐縮しますが、私たちも初期の25年程度(設立が2002年ですので2027年位)まで、既に私は64歳になっていることになりますが、じっくりと自分たちの信じることを推し進めていき、強固な土台を築いていきたいと考えています。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。